6話 首の管のポンピング
「じゃあ、首の所のくだの処置を頼むよ」
「うん、分かった」
洗面所のある部屋に置いてあるダンボールの中から物品を取り出してこないと。
洗面所に向かう。
ドクロンブランドも一緒に置いてあるので、洗面台のある部屋はダンボールが沢山置いてある。
生活スペースを圧迫してしまうので、無駄に広い洗面所に置くのが一番、理に適っている。
洗面台が3台あって、3人で鏡に向かっても背中側にスペースが8畳くらいある。
ベッドと机がある部屋が6畳なのに、洗面所が8畳。
明らかに、バランスがおかしい。
ダレンさんが、朝忙しい時には女性だと時間がかかる、とかなんとか言っていたけれど……。
ダレンさんはゴブリンが男じゃないことを知っていたな。
でも、ダレンさんのそういう言動は、俺に自分で気付いた方が良いという事を遠まわしに伝えようとしていたのかもしれない。
決して、面白がって言わなかったわけじゃないと思う。
そうそう、処置する道具を持ってこないと。
固定用のテープを1つ。
8つ折り滅菌ガーゼは3パック持っていこう。
10ccシリンジは2本。
スワブスティックポピドンヨードは2個。
生理食塩水20mlは1個で足りるね。
あと、ヘパリン5000単位を1個。
三方活栓のキャップを2つ持って……転がると面倒だから3つ持っていこう。
22G注射針も2本持って行って……。
プラスチックグローブはSかなMかな。
どっちも持っていこう。
「じゃあ、お願い。ベッドに寝るけど、ベッドを汚さないようにね」
「大丈夫。私を誰だと思ってるの?」
「ゴブリン……?」
「私はきっと、特別なゴブリンよ」
「まあ、否定はしない」
「一晩で、こんなに胸が」
まあ、小学1年生位の体格の時と比べれば、そうかもしれないけど。
でも、特別なゴブリンだと思う根拠が胸というのは、なんとも。
「そっか……。じゃあ、頼むよ……。まずは、手袋して」
「どっち?」
「SとMどっちでもいいよ」
ゴブリンの手のサイズ、どうだろ?
「じゃあ、S……はきついな。Mみたい」
「そうか、Mか」
思ったより大きかった。
「なんか、攻めとか守りの話みたい」
「……ストップ。カトリーヌの知識は碌な知識がないな」
「え? ああ……なるほど。なんでこんなことを」
「カトリーヌはそういう話が好きなんでしょうに」
多分、カトリーヌというゴブリンはかなり変わっている人なんだろう。
変なギフト送ってこなくていいのに。
まあ、人間の生活の感覚がある分、日常生活を送る上では便利か。
「じゃあ、まずは生理食塩水20ccをシリンジ10ccを2本で吸って、22G注射針をつけておいて」
「あいよ」
「ヘパリン1瓶5㎖を……10ccシリンジだと大きいんだけど、それしかないから、それに1.5㎖ずつ吸って残りは捨てちゃって」
「はいよ」
「次は管の周りのテープとガーゼを外して」
管は普段、ガーゼで包んでテープで巻いて、ブラブラしないように折って肌に固定しておくから。
「うん、全部はがしたよ。管が刺さっている所のフィルムは剥がさなくていいんでしょ?」
「それは大丈夫。透析をやる日に貼り替えて」
「分かった」
「まあ、透析の時は消毒してからガーゼで拭いた後に貼ってくれればいいから」
「了解」
「片方のキャップを取って、ポピドンヨードで消毒してシリンジをつけて、中の血液と生理食塩水を吸い出すんだよ」
「キャップを取って……」
手技が退屈なので、ちょっと省略……。
キャップをとって、10ccのシリンジで、血液と生理食塩水とヘパリンの混じった液体を管から吸い取る。
この時に、スムーズに引けるかどうかも見る。
管の根元にはクランプがついているので、吸う時には開けてシリンジを外す時にはクランプを閉じる。
このシリンジから吸い出したものは血栓等を含んでいるのでガーゼの上に出すと、赤色だったり白色だったりするものがある。
吸い出し終わったら、生理食塩水10ccを管の中に流し込んで、ヘパリンを最後に入れてキャップする。
これをもう1本の管にも行う。
そしたら、ガーゼで包んでテープで止めて、肌にテープで固定する。
「ふう、できたね。やり方がわかったから、次は一人でできるよ」
「そう? ありがと。これやらないと、管が詰まって透析ができなくなるんだよ」
「つまり、誰かやらないと、お兄ちゃんは生きていけないんだね」
「そうとも言える」
ダレンさんでもいいけど。
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