2話 ナオキクエスト1
眠りについたはずなのに、目の前に文字が見える。
……なんだろう。
音楽が流れてくる。
1980年代に流行ったファミリーコンピュータのような音楽だ。
画面にデカデカとタイトルのような文字が出る。
[NAOKI QUEST]
なんかのゲームかな。
カーソルが出て、ピッピッと音が聞こえる。
[⇒冒険書をはじめる]
[⇒冒険の書をつくる]
[名前を決めてください]
[⇒ナオキ]
[勇者ナオキでいいですか?]
[⇒はい]
気が付くと、俺はどこかの王宮にいた。
身体も画面も、全部ドット。
それでも、昭和のものというより平成初期のそこそこの画質のドットだ。
上から見下ろし型だ。
自分の後ろ姿が見える。
前には、王様らしき人物。
よく見ると、自分の働いていた透析施設の病院の院長に似ている。
似ているというか、本人だ。
ヒキガエルのようなその容姿は、忘れるはずがない。
[おお、勇者ナオキよ。よくぞまいった。私はこの国の王ハミルチだ。そなたには、この世界を脅かす魔王を倒してもらいたい]
一方的に話は進んでいく。
[そなたは看護師の資格の他に臨床工学技士の資格を持っているのだな。その若さで大したものだ]
資格がこんなところで生きるのか、取っておくものだな。
[こちらとしても、有難い。臨床工学技士の賃金は看護師より安くて済むからな。フハハハ]
現実でも、臨床工学技士の給料は看護師より3~5万ほど低いが、ここでも適応されるようだ。
[それでは、旅の資金と銅の剣を授けよう。行くが良い勇者よ]
えっと、20万ゴールドか。
銅の剣ね。とりあえず装備。
城を出る自分。
モンスターと早速、戦うようだ。
街の外に出る。
[ステータス ナオキ レベル1 HP:100 ATK:30 DEF:30 AGI:30 ]
普通だ。
病気ではないらしい。
フィールドを歩く。
[スライムが現れた。たたかう/逃げる]
[ナオキの攻撃。会心の一撃。スライムを倒した]
[スライム×100が現れた。たたかう/逃げる]
[ナオキはカウンターショック270Jの呪文を唱えた]
[スライムたちを倒した]
[スライム×666666が現れた。たたかう/逃げる]
おお、画面を埋め尽くすスライムの面々。
[ナオキは高気圧酸素療法発火事故の呪文を唱えた]
[スライムたちを倒した]
[ナオキはレベルがあがった]
[ナオキはレベルがあがった]
[ナオキはレベルがあがった]
[ナオキはレベルがあがった]
[ナオキはレベルがあがった]
[ナオキはレベルがあがった]
[ナオキはレベルがあがった]……。
[ステータス ナオキ レベル999 HP:10000 ATK:3000 DEF:3000 AGI:3000 ]
随分楽な戦闘じゃないか。
スライムしか出ないし、全体攻撃であっという間。
これなら、魔王も簡単だ。
また、戦闘のようだ。
[ベルゼバブブの手下×66が現れた]
どこかで聞いた名前、どこだったかな。
なんだか、ハエっぽい。
[ナオキの攻撃。ハイパーサーミアを繰り出した]
ハイパーサーミアというのはガンの治療法だ。
エフェクト上、たぶん熱系の攻撃のようだ。
[ベルゼバブブの手下は不死特性があるため攻撃を受けつけない]
[ベルゼバブブの手下は不死特性があるため攻撃を受けつけない]
[ベルゼバブブの手下は不死特性があるため攻撃を受けつけない]
[ベルゼバブブの手下は不死特性があるため攻撃を受けつけない]……。
不死特性?
死なないのか。どうやって倒すのだろう。
[ナオキはノートパソコンを取り出した。起動しエロゲーを立ち上げた]
なんで、そんなものを持っているのだろうか。
色々おかしいことだらけだ。
[ベルゼバブブの手下はノートパソコンに気を取られている]
[ベルゼバブブの手下はノートパソコンに気を取られている]
[ベルゼバブブの手下はノートパソコンに気を取られている]……。
[ナオキの攻撃。殺虫剤を吹きかけた]
ああ、これコバエか。
[ベルゼバブブの手下は麻痺した]
[ベルゼバブブの手下は麻痺した]
[ベルゼバブブの手下は麻痺した]
[ベルゼバブブの手下は麻痺した]……。
[ナオキの攻撃。美肌用粗塩を投げつけた]
なんだか、身に覚えがあるぞ。
[ベルゼバブブの手下は浄化された]
[ベルゼバブブの手下は浄化された]
[ベルゼバブブの手下は浄化された]……。
[ナオキは魅惑の夏エネルギーを手に入れた]
[ナオキは夏を受け付けない]
[夏エネルギーはナオキの中で吸収されずに留まった]
[ナオキは死んでしまった]
画面が暗転する。
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