1話 寝る前に気になること
ゴブリンと色々勘違いな会話が終わったあと、目をつぶるけれどすぐには眠れなかった。
色々考えてしまう。
それにしても、異世界に来てようやく、1日が終わった。
特に自分自身は何もしていないのだけど、とても疲れた。
腎不全のせいで、とても体調が悪い。
異世界に来てインシュリンの心配も、薬の心配もしていたけれど、そっちはなんとかなりそうだ。
人工透析ができるようになるのか、そこが問題で……その問題が生きていけるのかという事につながっている。
全ては〈病院の卵〉の成長次第。
そして、その成長はモンスターの討伐次第。
自分はスライムの一匹でさえも倒せないから、ゴブリン次第。
異世界に来て異世界生活を楽しむどころか、命の維持に対してでさえも何もできないことがもどかしい。
いつの間にか、頼りになるゴブリンになった彼女は何時、自分を捨てて出て行ってしまうか、心配でしょうがない。
自分の命は彼女次第なのだ。
ひょんなことから、彼女が女ゴブリンであることがわかったけれど、ゴブリンに性別があったことに驚いた。
彼女には悪いことをした。
好感度0なのに、一緒にいてくれることが救いだ。
幸運なことに、彼女自身は自分の力に気づいていないので、出ていくことはないだろう。
それは、不遇なゴブリンの稀少種ゴブリーヌだからだ。
ゴブリンの決まりで、過去に他種族に利用されてゴブリンに大打撃を与えた存在であるゴブリーヌは7歳までに処刑されることになっている。
ゴブリンに見つかれば、直ちに処刑かもしれないし、他種族に見つかっても良い待遇が受けられるとは限らない。
ゴブリーヌにとって、自分達と出会えたこと自体を幸運に感じているはずなのだ。
明日は狩りに行かないといけない。
透析ができる環境を造り上げられるところまで、ポイントが稼げるだろうか。
……とはいっても、結界のお陰でスライムしか出現しないのだけど。
ダレンさんは、朝までに仕事終わるのだろうか。
女神から全てを任されて、危険を冒してまで自分についてきた感謝すべき存在。
変わった人だけれど、今の自分にとって居なくてはならない人物……神だけど。
神とゴブリンと病院の卵……これらが、きっと自分の人生を変えてくれるはず。
そう信じて、寝るとしよう。
枕元の腕時計で時間を見てみる。バックライト機能があるようで、横のボタンを押すと時計が光る。
今は23時10分か。
先程と同じように、ゴブリンはこちらに背中を向けたまま居る。
もう、寝ただろうか。
ゴブリンの寝息が聞こえる。
うん、寝たみたいだ。
自分も寝ないと、明日に響くな。
さて、寝よう。
でも、その前に気になることがある。
腕時計を手に取る。
布団の中に潜る。
腕時計のバックライト機能を最大にする。
ゴブリンのパジャマの裾をめくってみた。
目の前に現れたのは、黒い広めの生地に覆われたオシリだった。
プリントされたドクロンがやや横に伸びている。
なんだ……ティーバッグって嘘じゃないか。
どうして……、そんな嘘をつくんだろう。
黒は合っているけれど、生地の量が全然違う。
いくらゴブリンの成人が10歳でも、こんな小さい子がそんな破壊力の高い下着を使っているはずがないと思っていた。
でも、これで心置きなく眠れる。
安心して意識を手放した。
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