14話 病院の卵ってなんだっけ
「ところで、ダレンの相談したいことって何?」
「えっと、実は世界管理者の試用期間中に異世界転移者が来たんです」
「まあ、珍しい。久しぶりなんじゃないかな」
「そこら辺は興味がないので知りませんが、ワタクシがその転移者のサポート代理になりました」
「代理? なんで?」
「ドロシーがそれが適当という判断をしたからです」
「ダレンじゃあ、使いだから大したことできないでしょうに……。転移者も可哀想ね。能力なしで放り出されるだけみたいな感じ?」
「いや、それより酷い。なんせ病気で銅の剣も持てないのですから」
「それで、ダレンはどうしたの? トドメを刺して来たの?」
「治療を手伝うことになりました」
「意味が分からないわね。ダレンは報告の仕方が下手くそ……」
「ごめんなさい」
「……うん、大丈夫よ。続けて続けて」
「ドロシーは本物のドロシーじゃなくて、運命の輪からつくりだされたドロシーでした」
「……中学校のクラスメイトだった子でしょ? ダレンの初恋の……」
「初恋じゃないって、言ったのに。……そう、その話を前にしていたドロシーです」
「どこ行ったの? そのドロシー。様はもうつけないの?」
「もう、使いではないので……。願いの輪に、神様を辞めて下界に転生したいという願い事をしたそうです。第26世界の下界に転生しました」
「ああね、願いの輪ね。たまに出てくるやつね。ワタシも出くわしたい」
「もう、今回使われたのでしばらく出てこないと思いますけど」
「願いの輪って、願いを叶えるといつもどこいくのかな」
「よく聞いてこなかったですね。本人が願いの輪と話をしてるのかな、と思う場面もあったので、案外願いの輪がつくったドロシーの中にあるのかも」
「何で転生先を第26世界にしたのかな。というか、本人は転生しちゃってるから、願いの輪しか知らない事なのに、ダレンは何で知ってるの?」
「なんとなく第26世界かなと思って、言ったら否定されなかったんで、多分そうだと思いました」
「そっか。なるほどね、わかった。本物のドロシーは転生したからもう居なくて、ダレンが関わってきたドロシーは、何故かわからないけど願いの輪が創ったものなのね」
「えっと、家族を悲しませないために創ったみたいですよ。あと、自分より良い神になって貰うために」
「ある意味、自殺したってことね。何に生まれたって、考えて、感じて、悩んで、何かを追い求めることは苦しいと思うけど」
「まあ、生物が生きるということは、食べて寝て死んでいくことですから。その繰り返しの中で追い求めることは、神の多すぎる時間に溺れることよりも、ワタクシは苦しいと思います」
「ダレン……話逸れ過ぎてない?」
「そうですか?」
「どうして、ダレンが転移者のサポートをやっているの?」
「それは、世界管理者に頼まれたから……」
「だって、使いはもう終わったんでしょ?」
「それには、色々ありまして……簡単に言うと、神様協会の第26世界担当の係長から頼まれたからです」
「ドロシーから頼まれたからじゃないの?」
「それは、世界管理者のドロシーから頼まれたら、使いは断れないじゃないですか。その経緯を、その係長さんに報告したら、継続して転移者についているように頼まれました。世界管理者試用期間を受けるための神様ポイント3%offと引き換えに」
「ふ~ん、結局……転移者のサポートを最後までやるのね」
「ええ」
「それで……ワタシに相談にのって欲しいことって何?」
「実は、ドロシーが転移者を助けるためのモノとしてバアルさんが創った〈病院の卵〉をドロシーが送ってきまして。これから、育てるところなんです」
「へえ~」
「それで、ワタクシも転移者も医学の知識がありません」
「〈病院の卵〉ってなんだっけ?」
え? 忘れてる……?
「バアルさんが創った、神の教義への嫌がらせのためのモノですよ」
「ああ、そんなのもあったね。あの時は新しいエロゲ……じゃなかった……紳士のための研究対象が発売されてしまい、集中力が半々くらいになってたかも……」
「……」
そういうところが、バアルさんのダメなところですよね……。
「いや、えっと、冗談……。そう、冗談よ。嫌だな。あれ、結局どうしたんだっけな」
「入力言語が間違っていて、神や悪魔や転移者には理解できるけど、そこに住んでいる知的生命体には扱えるものが居なかったんです」
「そ、そうだっけ?」
「だから、あっちこっちにバラ撒いたけれど、誰にもメッセージが届かなかった。一応神様協会からの注意喚起があって、天界のゴミ捨て場に集められて、あともうちょっとで廃棄処分されますよ」
「うん、そうだ……思い出した。あれには、第23世界の医療技術をそのまま、使えるような機能を取り入れた気がする」
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