13話 アナタ好みの男になりましょう
バアルさんにも話したいことがあるなんて、愛の告白でしょうか。
ちょっと、ドキドキ。
「なんですか?」
「ワタシに隠していることがあるでしょ?」
「何のことです?」
「その髪の毛を生やさせないようにするのと、ヒゲを生やさせるために、なにか飲んでない?」
「毎日、剃ってるんです」
「ヒゲなんて、急に生えるわけ無いでしょ? 元々、生えない体質なのに」
「何か、あったんですか?」
「それがね……」
バアルさんはひと呼吸おくと、ルシファーさんが今日来たことを話出しました。
「今日、ルシファーが昼間に遊びに来て裏の山に生えているマンドラゴラのことを話してたの」
「マンドラゴラ?」
なんか、変わった植物で引っこ抜くときに大きな声が出るみたい」
「気味が悪いですね」
「最近気づいたみたいなんだけど、裏山はマンドラゴラの群生地みたいで、ハゲでヒゲがワッサワッサ生えてる人達の集団が定期的にきて採っていくらしいの」
「……」
「その人達ってはハゲとヒゲを激しく愛する会っていうんだってさ」
「それがワタクシとどういう関係があるんですか?」
「その会に入っていると、安くその薬が買えるんですってね」
「……」
「その薬を飲むと、次第に髪の毛が生えなくなってヒゲがワッサワッサ生えてくるんだって」
「……」
「ワタシに相談もなしで、ハゲとヒゲにするなんて。そんなにグレなくても……ダレン……。ワタシにはお母さん役とお父さん役の両方は無理だったかな」
「ハゲとヒゲって、グレるとするようなものなのですか?」
「そうよ。色々なアニメや七福神に出てくる神様はみんなグレて、ハゲとヒゲにしてるのよ」
「知らなかった。福禄寿も布袋様も、あの尊敬するスタイルの神様がグレていたなんて」
「ウソだけどね」
「……」
「あの薬って、ハゲとヒゲを追い求めるのにはいい薬よね。……覚醒剤だけど」
「え……?」
「嘘よ」
「……」
「だけど、身体にあの薬は悪いから、止めて欲しいな」
「身体に悪いんですか?」
「副作用があるの。それも3個も」
「副作用?」
「一つ目はロリコンになる」
「ロリコン?」
「小さい子が可愛くって仕方がなくなる」
「大したことないじゃないですか」
「そうかしら、長く服用し続ければ重くなるらしいよ。今は気付かないくらいだけど……。ハゲとヒゲの会で小さい子にイタズラして捕まった人いない?」
「うっ……それは……」
ゴブリンが可愛く感じたのは、薬の副作用だったのでしょうか。
「まあ、いいけどね。人の趣向は色々だから。ダレンがおまわりさんに連れて行かれたら、ワタシ悲しいな~」
「二つ目は何ですか?」
「女性と話していると、口説いていると勘違いしやすくなる」
「大したことないじゃないですか」
「自意識過剰になるなんて、気持ち悪いと思うけどな」
「……う~ん」
「三つ目……」
「……ゴクリ」
「三つ目が一番重いのよ」
「早く言ってください」
「百年服用し続けると、最愛の人の近くに寄れなくなる」
「……やめます」
「これを機会にハゲとヒゲも止めない?」
「ヒゲは生えなくなるだろうけど、頭は剃り続けていれば……」
「ワタシは髪があったほうがいいと思うんだけどな。個人的にはそっちのほうが好き」
「……ハゲはカッコイイけど、やめてみようかな」
「ホント? 良かった。自分の息子がハゲでヒゲがカッコイイと思っているなんて、嫌だなと思ってたの」
「……ムスコ……」
「ちなみに、その薬の影響を早く治すには海藻サラダを食べた方がいいよ」
「海藻?」
「フコイダンというネバネバ成分とか毛母細胞に効くらしいよ」
「それ、人間が食べる普通の食事ですけど」
「あとはその内、毒が抜けてくるから、そしたら心配いらないよ」
「毒?」
「マンドラゴラって、色々な薬を作るのに使われるでしょ? 効果があるってことは、それだけ毒にも薬にもなるってことだよ。綺麗にハゲられて、綺麗にヒゲを生やすなんて、身体に毒になりそうな感じするでしょ?」
「ええ、まあ……いわれてみれば」
「今のダレンよりは高校を卒業する前の方が、いい感じだったなあ」
「わかりました、バアルさん好みの男になります」
「男?」
「ええ。隣にいられるような感じに」
「よくわからないけど、恥ずかしい子にはならないでよ」
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