7話 病院の卵は何か知っていますか
小林さんと話をしていると、真四角な箱が送られてきました。
見覚えのある形。
バアルさんに、いつか見せてもらった〈病院の卵〉です。
ドロシー様はこの存在をよく知っていたものです。
そして、この箱に病気を治す力があることを、よくわかったものだと思いました。
ゴミ捨て場に置いてあるといっても、普通は何なのか分かりません。
そして、ワタクシの記憶が確かならば、廃棄処分の日はあと数年で訪れるハズです。
これを見て神様ポイントも全くかからず、病気の治療ができるものだと考えたのであれば、流石です。
けれど、普通に考えれば助けるつもりなどないのではないか、という結論に至ります。
それは、〈病院の卵〉の用途を知っているものはいないという前提にあります。
〈病院の卵〉はただの創造神への嫌がらせで創られたものです。
そして、失敗作。
そんな失敗作の事を知っている存在は、私とバアルさんとその時に処理に携わった神様だけです。
そして、病院の卵の用途は私とバアルさんと熾天使くらいしか知りません。
それ以外の者には、ただ……悪しきモノという名目で回収させました。
もしバアルさんの〈病院の卵〉バラマキ作戦が成功していたら、神々への信仰心が揺らいだかもしれません。
それはどうしてかというと、〈病院の卵〉は医学を広めるためのものだからです。
医学は神からすると、タブーでしかないことで成り立っている学問です。
人々の信仰を剥ぐものです。
どの世界の宗教も、輸血をしてはならないとか、異物を体に入れてはいけないとか、そういった教えは、神への信仰心を薄れさせないためなのです。
神様ポイントは知的生命体の信仰心からたくさんとれるそうです。
これがなくなることは神様協会や創造神にも良い事ではありません。
その嫌がらせ作戦は、言語を間違ったために役立たずになりましたが、動いてしまったら神々にとって都合が悪かったのです。
もっとも、スライムを吸収させなくてはいけないという条件も分かりにくいので、言語が間違っていなくても、そこまで広まるか怪しいものですけど。
どうして言語を間違ってしまったのかは、ワタクシだけは知っています。
第23世界の文化研究をしすぎてしまい、パソコンゲーム〈萌える猥褻猫娘学園〉をやりながら発明作業をしていたことが原因です。
文化研究をしながら、発明をしてなければ成功してたのにな、とは思います。
利用者が増えない時点で、神にとっても悪魔にとってもゴミでしかないのです。
そんな、ゴミ扱いの失敗作。
ドロシー様が知っているでしょうか。
知らないと思います。
ドロシー様はこのモノが何か知らずに、ここに送ったに違いないのです。
しかし、病院を建てるという発言を考えると、知っていたとしか思えません。
この矛盾……。
意味が分からない。
鑑定で名前だけは見えるのでしょうか。
仮に、何もかも知っていたとしましょう。
小林さんの銅の剣を持てない程の弱さでスライムは倒せないし。
病院の卵の起動は普通に無理。
やはり小林さんを見捨てていたのでしょうか。
謎が謎を呼ぶ……。
これは、ドロシー様に直接聞こう。
色々、考えている内にゴブリンが送られてきました。
送られてきたのは、ゴブリンの稀少種のゴブリーヌ。
小林さんはゴブリーヌを餌付けで手懐け、スライム退治に成功しました。
ワタクシは……小林さんを冒険者にすることができるでしょうか。
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