1話 今日はどのような御要件ですか?
ワタクシの名前はダレン。
ついこの前、神様の使いの依頼が来ました。
上級神を目指すワタクシにとって、割のいい仕事なので願ってもないことです。
依頼といっても、きちんと届くようにホログラム伝達でした。
ワタクシだけに聞こえるようになっているそうです。
依頼を受ける場合のみ、その先の話を聞けるようになっています。
勿論、受けることにしました。
それでも、〈本当によろしいですか〉が何度も何度も……。
9回も出てきたので、これは壊れたかなって思いました。
しかし、他言できない情報が含まれているということがその後、伝えられました。
正式な契約は、第26世界担当の受付まできて欲しいそうです。
ヘケトという人からで、神様の使いというのがどういったものなのかという説明でした。
神様の使いという仕事は、世界管理の試用期間中の神様の補佐的な仕事だそうです。
でも、これは試用期間の間だけなので、短期の仕事とも言えると思います。
補佐的といっても、その神様がどんな神様か、というのを神様協会に報告する役目があります。
この事は地道に1000年くらいかけて神様ポイントを貯めた場合には、3~10回くらいは仕事が回ってくるので、大抵の神様は知らない事はないそうです。
ですが、短い期間でポイントを貯めた神様や、誰かの後ろ盾があって試用期間を受ける神様は知らなくて、中には試用期間中にボロを出してしまう神様もいたりします。
このことは、後ろ盾の神様や他の神様が伝えることは禁止されています。
誰もが知っているけど、言ってはいけないこと。
それが、神様の使いは試用期間の監督者であるということです。
神様の使いは、あまり私的なことを含まず、ありのままを伝えるように……というふうにはなっています。
多くの後ろ盾がある場合の試用期間は、知人や信頼のおいている人。
身内の者を指定することがほとんどです。
後ろ盾がいない人は、神様協会の職員が無作為に選んだりしています。
使いなので、下級神が選ばれることが多いですが……極稀に試用期間に臨む神が強過ぎる場合には多少、上級の神が選ばれることもあります。
まあ、言ってみれば試用期間自体が試験だったりします。
下級神から試用期間に必要な神様ポイントは下級神からしてみれば膨大です。
千年前後かかるのが普通ですが、上級神になってみると百年掛からない位の年収で払えたりするので、収入の格差は大きかったりします。
今日は試用期間の神様の使いの仕事を受けに、神様協会の業務手続き事務所に来ました。
そうそう、ここです。
このバカでっかい建物がその事務所です。
どこまでも高く、どこまでも広いこの建物。
多分、神様は暇人だらけなので、暇人の誰かが作ったに違いありません。
この神様協会という団体は世界管理者の神様の神様たる枠組みを大まかに決めています。
数ある異世界の秩序をなんとなく、守ろうとしています。
なんとなくなので、関与したり関与しなかったり、部署が機能しているところもあれば機能してないところもあったり……組織が大きすぎてワタクシにはよくわかりません。
入口も出口もたくさんあって、窓口もたくさんあります。
間違えてしまうとなかなかたどり着くことができません。
初めて来た時は道がわからなくなり、職員の人に聞いてやっとたどり着きました。
入ったら、まず人に聞くこと……それが、大事です。
「こんにちは、仕事の受領の手続きをしたいのですが……」
長い髪に、山のようにたくさんの花を飾り付けた女性に話し掛けました。
たぶん、受付の人だと思います。
机も何もなくて、名札もなにもつけていません。
雰囲気でピシッと立っていて、礼儀正しそうな人に声を掛けました。
「では、データ照合をしますので、こちらに体の一部を触れてください」
当たり。
今まで、何回も間違えたことがあります。
なんで、こんなに受付の人が解りにくいのでしょうか。
お年寄りの神様の考えることは、良くわかりません。
透明なパネルが差し出されて、右手で触れました。
「照合が完了しました。世界はどこの世界ですか?」
「第26世界です」
「担当部署は979万6666番です。66番のエレベータで96階までお進みください」
「ありがとうございます」
エレベーターに乗って、10階まで上がります。
この建物は一体何階まであるのでしょうか。
100階まではボタンがありますが、それ以上の階はキーボードで打ち込むようになっています。
パソコンの画面なので、何桁まで打ち込めるかわかりません。
2秒ほどで到着しました。
どういう速さか分かりませんが、きっと、下級神の自分では分からない神の技術が使われているのだろうと思います。
物理法則を無視した速さです。
慣性の法則は適応されていないと思います。
エレベータのドアが開くと、受付がありました。
今日はわかりやすいようです。
しかも、空いています。
番号札を持って、5分ほど待ちました。
「今日はどのような御要件ですか?」
受付の神は鬼神の女性のようです。
頭から2本角が生えています。
「そちらからお送り頂いた……業務依頼の受領手続きに来ました」
「少々お待ちください。担当者の所へご案内します」
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