17話 光がバスキュラーアクセスカテーテルを包み込む
「ふう、いいお湯だった。シャワーってすごいね。いい匂いがする。なんだか綺麗になったみたい」
「あ……ああ、早かったね」
シャンプーの匂いがする。
腎臓が悪くなって、鼻が悪くなるというけれど、元々鼻が良かったので、それほど不自由はない。
多分、普通くらいになったんじゃないだろうか。
「お兄ちゃんも入れば」
「入りたい。入りたいんだけど……首の管がな……」
どうしようか……。
「お湯がかからないようにすれば、入れると思うんだけど」
管が刺さっている部分からの感染が心配になった。
「カテーテル全体が覆えればいいんですか」
そこにダレンさんが口を挟んでくる。
「フィルムとテープだけじゃ無理だな……。ビニール袋とラップとかあれば」
管の部分を覆って……お湯が掛からないようにすれば大丈夫なのかもしれない。
「小林さん、良かったら魔法でコーティングして差し上げましょうか?」
ダレンさんが驚きの一言を放つ。
「ダレンさん……そんなことができるんですか?」
俺は魔法の素晴らしさを感じた。
「まあ、神ですから」
「じゃあ、お願いします!」
ダレンさんにお願いしない手はない。
「はい……」
ダレンさんが手を掲げると、光がバスキュラーアクセスカテーテルを包み込む。
「なんか管が光ってる。ちゃんと、刺入部も包んでありますね。わかってらっしゃる」
俺が求めていることをキチンと満たしたこの魔法。
ダレンさんはデキる男らしい。
「じゃあ、先にシャワー浴びてきます」
俺は憂いがなくなったので、さっそく綺麗にすることにする。
魔法バッグの中から、下着を出しパジャマを持って……、いざシャワー室へ。
患者衣はもう着ないかな。
でも、一応ランドリーボックスに入れておこう。
考えてみれば、まだ、患者だ。
人工透析するようになったら、患者衣を着てた方が汚れないかもね。
患者衣なんて、ほぼ着てないのと一緒だから、脱ぐのなんて一瞬だ。
更衣室の鏡にやせ細った自分の姿が写る。
「やっぱ、痩せてるな。もうちょっと、ここの胸の辺とか、腕の所とか……なんとかならないかな」
みっともないな、と正直思う。
脂肪も、ここまでくるとあったほうがいい。
透析ができるようになったら、タンパク質をたくさんとって、動いて、モンスターを倒して……カッコイイ感じになりたい。
「……レンさんは、知っていますよね?」
なんか、外で話が聞こえる。
「……てて、私が……だってこと」
ゴブリンとダレンさんが話をしてるのか。
気になるけど、盗み聞きはよくない。
俺はさっさとシャワー浴びることにした。
読んだら、ブックマークと評価をお願いします。