12話 好感度0
「その、管の掃除って明日のいつやるの?」
「そうだね、決めたほうが忘れなくていいよね。じゃあ、朝やる?」
「わかった」
「物品だけ、後で用意しておくよ」
「あと、トイレの使い方を教えておくね」
「え?」
「ゴブリンはトイレ行かないの?」
「行くけど……」
「ちょっと、トイレに行こうか」
こういうのは実際に見せたほうがいい。
ゴブリンだから、形のあるトイレでは無かったかも。
穴掘って埋めるとか?
「オシッコは男だったら、立ってやるから、この容器の中にすればいいよ。女の人は座ってするけどね。大の方は、男も女も座ってやるんだよ」
こういうのは、基本的なことからやったほうがいい。
異文化だと思わぬところが違うかも知れないから。
「終わったら、この紙で拭いてレバーで水を流して出てくればいい。この横のボタンは、お湯や水が出て、直接洗ってくれる」
試しに水を流して見せてあげる。
あと、ウオシュレットも動かしてみせる。周りが濡れたけど、拭いておく。
「え? なにこれ?」
「お兄ちゃんの世界で、お兄ちゃんが住んでいたところは、大体これだったよ」
「す、すごい……」
ゴブリンは驚いている。
「お兄ちゃん……。ただのキモくて弱っちい人だと思っていたけど、すごい所の人だったんだね」
「お兄ちゃんのことをそんな風に思ってたなんて、わかってたけど改めて言われるとショック……」
こ、心が痛い。
「あ……、ごめんなさい。だ、大丈夫、えっと……私にとって大切な人だと思ってるから」
「ほんと?」
「え……あ。ほ、ホント。本当だよ、お兄ちゃん」
そ、そうか、嫌われてないなら、良かった。
ダレンさんは、後ろで変な顔で見てるけど。
大丈夫、大丈夫ですって、ダレンさん。変なことしてませんから。
トイレのドアだって、フルオープンだし……。
逆に、俺のほうが殺されますから。
「良かった。嫌われてたら、どうしようかと思った」
「嫌いなわけないよ。もし、外に出たらとてもじゃないけど、生きていけないだろうし、他のゴブリンに敵わないんだから……」
「そ、そうか……それ、好きとか嫌いとかじゃなくて、しょうがなく居るみたいに聞こえるんだけど」
なるほどね、自分のステータスが分からないから、自分が強いとは思ってないんだ。
「お兄ちゃんのこと好き?」
「え……。嫌いじゃないよ」
「……そう」
好感度は0と。
……悲しい。
力とか気付かないものかな。
まあ、スライムとしか、戦ってないからか。
以前にスライムと戦ったことがあったとしても、使ったのは刃物ではないと思う。
その時は一人ではないだろうし……。
頭が良くなったり、身長が伸びたりしたのには気付いてないのか?
「ねえ、身長が伸びたな……とか、頭が良くなったなとか、思わないの?」
「え? そういえば、大きくなったかも……。でも、頭は悪いと思うよ。みんなからも悪い、悪いって言われてたから」
「そう……」
知能はだいぶ高いと思うのに、刷り込みって恐ろしいな。
今なら、他のゴブリンと戦っても勝てるだろうし、言葉が通じるということを、おかしいと思わないんだろうか。
これは……ステータスのことを内緒にしておくしかない。
あと、ゴブリンと戦っても、強さに気付いちゃうかも知れない。
気付いたら、出て行っちゃうかも。
うん、ゴブリンくらいは倒せるようにしておかなくちゃな。自分自身が。
これは、スライム以外にも倒すべき相手ができた。
ところで、トイレットペーパーはどうやって補充すればいいんだろう。
「ダレンさん、トイレットペーパーはどうすればいいの? ポイント消費?」
「自動補充です、無料です」
「おお~、補充めんどくさいと思ってました。きっと、紙も悪魔なら簡単に作れるんでしょうね」
異世界だから、何でもアリだ。
医学に関しては元の世界から持ってくるだけなんだけど。
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