9話 世界の言葉
なるほどね、でも……なんでそんな言葉を選んだのか。
そんな言葉を使ったら、医学を広めるのに不都合過ぎる。
「なんで、そんなことをしたのかな……広まりっこないじゃん」
「完成してから、気付いたみたいです。第23世界にいることが多かったみたいで、言葉を間違ったまま創ってしまったみたいです。はじめて見せて貰った時は、これはすごいって思ったんですけどね」
「ダレンさん……意味が分かんないんですけど、悪魔って俺のいた世界の文字を使うんですか?」
「神同士とか神と悪魔とか、神と異世界人とかは文字の垣根が取り払われるんですよ。神様がそういうシステムを創ったみたいです。話をする時にめんどくさいからって」
「それは便利。ダレンさんが神なのに神様っていうの変だけど」
「神族が神様って言ったら、創造神のことです。人が言ったら、その場によって違うでしょうがね」
「それにしても、ダレンさんも気づかなかったんですか? 見せて貰った時に文字が違うことに」
「神と悪魔だと通じてしまうから、よくわからないんですよ。下界の者が入口の基盤操作の所まで行って、はじめて気づいたんです。疲れちゃったから、その内、直すつもりって言ってましたけど」
「ダレンさんの知り合いなんですね、病院の卵を創った悪魔……」
「ええ、その人とはちょっとした知り合いでして」
「ふ~ん……。悪魔と知り合いって、色々ありそうですね」
「悪魔って、もともと神族ですから。そう違いはないんですよ。創造神が嫌いだったり、ポイント収集の効率性への考え方だったり……姿形は違えど、中身はなんとなく違うだけです」
「なんとなく? 蝙蝠の翼と鳥の羽じゃ全然違うけど……」
「あれは、趣味ですよ。悪魔の人はそういう趣味の人が多いだけです。神族だって、骸骨が趣味だったり、人間を陥れるのが趣味だったり……。あんまり目立つと、神様協会から神族剥奪だったり、悪魔協会から誘いが来たり……」
「よくわからないけれど、神と悪魔は似ていると……、それでいいです」
ダレンさんがタブレットに目線を戻す。
「えっと、トイレとシャワーと厨房はいりますか? って聞いてますよ」
「え? そりゃいるでしょう。トイレは必須です。腎不全でおしっこは出ないけれど、大は出ます」
自信満々に答える。
「それじゃあ、イエスで。あっ、サービスで無料でつけてくれるらしいです」
おお、なんか大サービス。
悪魔さんって、天才。気が回る人だ。
肝心な所がダメだったけど。
「トイレとシャワーを付けてくれたのはいいですけど、コストはどうなってるんですか?」
「電気、水道はタダだそうです。その他、物品を頼んだり、設備を付けるのにエネルギーが必要なんです」
異世界だし、神とか悪魔とかだから、水や電気は簡単に作れそうな気がするな。
それにしても、なるほど。
エネルギーを得るためにはモンスター退治。
設備を増やすためにはモンスター退治。
治療するためにモンスター退治。
この世界で普通に暮らすのにも、モンスター退治か。
神も悪魔も苦しむのを見るのが好きなのか。
創造神なんて、モンスターその物をつくったんだから悪魔よりも、よっぽど悪魔っぽいな。
面白半分で人を苦しめるのだから。
確かに、神様のことを嫌いな神や悪魔もいるかも。
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