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モヤシ

「チュンチュン。」



聞きなれたうるさいスズメの声が聞こえる。



布団をどかして「朝飯でも作ろうか。」そう思い体を起こした。



やけに体が重い。



昨日はバイトだったし疲れてるんだなきっと。



自分に言い聞かせて大きくあくびをした。



土曜日の朝はとても良い朝だ。



大学もなく、一番自由に過ごせる時間。



課題も、ユウにモーニングコールされることもない。



漫画を見たり、ゲームをしたり、映画を見たり。



好きなことを存分に楽しめる。



休日ってそんなやつだ。



ただ、今日は違った。



「まだ、、、寝させ、、て。」



聞きなれないかわいらしい声が聞こえる。



俺は一人暮らしだ。女の人の声なんて聞こえるわけがない。



隣を見てみるとそこには君がすやすやと眠っていた。



なんでこうなったのか、俺はすぐに思い出した。



君はウィスキーのストレートを飲んだ後につぶれてしまい、終電もなかったので近くに住んでいる俺の部屋まで連れてきたのだ。



「お酒が弱いのにストレートなんて飲むから...」



そう一言つぶやいた時、



「だって飲んでみたかったんだもん。ウィスキーも初めてでとりあえず試しで飲んでみたらこうなったの。」



隣の君がすねながら答えた。



「起きてたんですか。」



自然と敬語になる。



そりゃそうだ、さっきまで見知らぬ人と寝ていたのに冷静でいられるはずがない。



「あの、俺なにかやらしいことしてませんよね?」



不安になって聞いてみる。



返事は来ないまま沈黙が続く。



「まぁ、酔いつぶれてたから覚えてるかわからないか。警察にでも、煮るなり焼くなり好きにしてください。」心の底からそう思った。



ありがとう親父、おふくろ。



いままで育ててくれてありがとう。



これからは牢屋にぶち込まれて悲しい人生になるんだな...



そう確信していたが、体を起こし眠そうな目を開いて君は言った。



「私が悪いんです。酔いつぶれちゃってここに来るまでのことは覚えてないけど、着いてからあなたが私のためにしてくれたことはちゃんと覚えているわ。水も飲ませてくれたし、シャワーも貸してくれて、一緒に隣で寝てくれた。私はいつも一人だったから、こうやって誰かと一緒に過ごすのは久しぶりで、嬉しかった。迷惑かけてごめんなさい、だけどありがとう。」



意外な言葉に俺は「えっ」っと声にならない声を上げた後に



「どういたしまして。」



と恥ずかしがりながら言った。



君は面白がって笑っているが、その笑顔がまたかわいいから直視できない。



なにはともあれ、俺の無実が証明されたのだ。



胸を張って生きていこう。



気持ちが軽くなった俺は、



「朝ごはんでも食べる?」



と、からかい半分で君に聞く。



「いいよ、泊まらせてもらっちゃったし私が作る。」



君は自信満々に答えて、冷蔵庫に歩いていく。



手料理が食べられるのかと浮かれてた俺はある重大なことに気づく。



「冷蔵庫開けてもいい?」



「あ、まって!」



俺の言葉を聞くより先に冷蔵庫の扉が開いた。



ガチャ。



そこにはスーパーのタイムセールで買いだめしておいたモヤシが一面に広がっているのであった。

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