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王都へ遠足にいきましょう6

王都騎士団 詰所



石造りの3階建、訓練場はあるが宿舎はない、比較的簡素な作りである。

訓練場を挟んで、向かい側にも同じような建物がある。

しかし、そちらは騎士団詰所よりも大きい。

王都兵士団体 詰所である。


兵士団が平時は治安維持活動を担う都合、純粋戦力である騎士よりも、兵士の方が需要が高い為だ。

併設されているのは、訓練場を共用し共に訓練を行っているからである。



ドーン!!!!



突如、兵士団 詰所の正門で爆発が起きた。


「ぐあー! なんや!!」


門番に立っていた衛兵が叫びを上げる。


「くっそ、カチコミや!! 兵隊集めい!!」


・・・兵士だけに。


正門を囲むように灰色のローブを着た魔導師と思われる賊が6人。

順次、交代で攻撃魔法を放っている。


燃え盛る正門を突破して、盾を構えた兵士3名が詰所から飛び出して来た。


「「うぅらぁあああーー!!」」

「なにさらしとんじゃワレー?!!」

「どこの組のもんじゃー!!」


ガラが悪い。


魔導師が放つ小火球を、事も無げに、大きめのラウンドシールドで横殴りするように打ち払うと、飛び交う魔法に臆しもせず歩いて近付いてくる。


「反応が早い! 退却するぞ!!」


形勢が悪いと見るや、襲撃者達は魔法で牽制を加えながら、散り散りに路地に逃げ出す。


犯人を見据えた兵士が、片手に持ったワインボトルを回転も加えず、一直線に投てきしてよこす。


「どっ、せいっ!!」


正確な狙いは、走り去ろうとする賊のこめかみ近くを、風切り音を残して飛んでいく。


「ひっ!」


怯えて、足がもつれている。


「待たんかいワレー!!」

「鉄砲玉が、生きて帰さねーぞ!!」


猛然と走り出す兵士達。

もう、色々な圧が、すごい。

後から後から、詰所からガラの悪い兵士達が駆け出していく。


・・・なぜみんな、上半身裸にサラシ巻いているのだろう。



そんな抗争勃発の直後、ウェンディとレイモンが詰所に到着したのだった。

騒ぎに気付いた途端、ウェンディは、レイモンを置いて全力で駆けて来たのだが・・・。


「はぁ、はぁ、間に合わなかったか。」


息を切らしたウェンディが膝に手をつっかえて、息を整えている。

正門に放たれた火球魔法も火事は起こしておらず、所々で燻った後が残るだけである。




近隣の住人が何事かと集まって来ていた。


「おら!見せもんじゃねーぞ!」


凄んで野次馬を散らそうとするのだが。


「大丈夫かい?」

「あんた、火傷してるじゃないかい!」

「誰か、回復法術使える人いないかいー?!」


わらわらと、集まってきた近隣住人が、賊の初撃を食らった門番を介護し出す。

だいたい、お年寄りである。


「あぁ、大丈夫だからお前らは家に引っ込んでろ! 巻き込まれるぞ!」


門番は、第二の襲撃を警戒し、住人を避難させようとしていた。


「なに言ってんだい! 若いのが!」

「あたしゃ、あんたのオムツ替えた事があるんだよ?!」

「いいから、そこに座んなさい!」


逆に怒られてるよ。


「勘弁してくれよ、ばあちゃん!」


ガラの悪い兵士はなす術なく正門前に置かれた木製ベンチに座らされている。

このベンチは、ご近所のジイちゃんバアちゃんに、お天気いい日の日向ぼっこ兼、憩いの場として使われているのだった。


「ほら、川向かいのトメさんが来たよ。」

「トメさんは若い頃 王宮で大臣のギックリ腰だって治してたんだから、間違いないわ。」



ウェンディがその様子を見ていると、


「あー、あんた走ってきたのかい? 偉いね~! 息切らして、ほら、喉乾いたろ? こっち来てお茶飲みな!」


・・・巻き込まれた。



息も切らさないくらいで後から駆けつけたレイモンが、お茶を飲むウェンディに声をかける。


「・・・何やってんの、姉ちゃん?」

「お茶だよ。」


取り敢えず、

賊の方が心配になるくらいの兵力が追撃に回っている為、心配は無い。


「今度、あんなのが来たときは、マサさん呼ぶんだよ。」

「あー、マサさんなら間違いないわ。」


マサさんは、元 南区兵士長で、王都腕相撲大会チャンピオンである。

間違いないわ。


お茶会には、よく見ると、3バカ被害者の会の方々も参加している。


「うぉおら、飲め飲め!」

「いいねー! 男の勲章! わっはは!」


お前らが飲んでるの、明らかにお茶じゃないだろ。


トメさんも治療を終えた兵士の背中をバシバシ叩いている。


「・・・おいら、もう帰っていいかな?」


鼻くそをほじりながら、律儀にレイモンが待っていた。


「あんた、ヨシさんところのウェンディちゃんだろ? でっかくなったね~!」

「はい、お陰さまで・・・あ、そろそろ私・・・」

「いいから、これ食べな!」


ウェンディは、ジジババに大人気な為、依然身動き不能である。


上半身裸で酔っぱらうガラの悪い兵士や3バカ被害者。

ジイちゃんバアちゃんが持ちよった食材が何故か振る舞われる宴会が開かれている。


・・・これ、カチコミ直後なんだけどなぁ。



そんなバカ騒ぎに、

エルを肩車したアビックが合流するのだった。


「・・・薬でもやってんのか、コイツら。」



ヤバいものは入っていないはずである。


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