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簀巻き

魔王勇者セージは、

簀巻きにされ、首だけを地面から出して埋められていた。


いや、死んでないよ? セーフだよ?


お祭りの夜は賑やかに過ぎ、アビックは大暴れするのだった。


「魔王にまで堕ちた者に救いなど無し。

大人しく、人、勇者に討たれる覚悟を決めよ!!

取り敢えず、埋まっとけ!」


てなことで、セージは広場の隅に首だけ出して埋められていた。


「うわぁっ! ビックリした!」

「?!!!! あ、どーも~、お世話になってます~」

「あー、大変ですねー 頑張って下さい~」

「ギャハハハハ!!!」

「ゆっくりだ! ゆっくり~!!」


村人のリアクションが、ただただ痛い。


最初は、セージも悪態をついていたのだが、アビックは如何せん、強い。

セージが喚いたり、実力行使する初動を正確に潰された。

50回程試行したところで、セージは悟ったのだった。

アビックの反応は機械的であり、因果が明確。

つまり、行儀良く、じっとしていないと、瞬間ハリセンで叩かれる事は確定なのである。


しかも、このような凶行も、村人は放置である。

昨夜は酔って行動の見境が無くなっていたようで、既知の村人さえも諦めている様子であった


(どうなっているのかこの村の倫理観は?!)

と思うだけで、セージは叫ぶことは出来ない。


やがて夜がふけて、祭りは終わり、朝が来て、セージの目の前でスズメが地面をついばんでいるのだった。


(一体、どういう状況なのだ・・・。

この後、どうなってしまうのだ?!!)


どうもこうも、

首だけ出して埋められている状況である。


そう思っていても、悪態はつけない。

ちなみに、試しに真夜中に一人悪態をついてみようとしたその初動ですら、ハリセンが反応した。


村の人口は少ない。

広場であっても人通りは少なく、ひとしきりセージに驚いた後は、会釈をして通りすぎる人だけになってきた。


(それもこれも、

転移の瞬間に攻撃され、転移先がズレたせいだ!)


酒瓶ですね。分かります。

そして、何もないまま1日が過ぎる。


因みに、排便など生理現象はどうしたものかというと、なんとビックリ! 魔王勇者の便利な力で消滅させられるのだった。


この時ほどセージが己が超常の力に感謝したことは無かった。



2日目


しかし、排泄は何とかなったとして、食事や水分はどうすべきか。

霞を食べて生きていけるような徳を詰んでいたら、そもそも魔王になど堕ちてはいない。


(一体、あのアビックとか言う男は何を考えているのだ?!)

酔っぱらいの凶行に理由を見出だそうとすること自体が、無意味なのかもしれない。


(・・・何をバカな達観をしているのだ私は!!

どう考えてもおかしいだろ?!!)


などと、ぐるぐると思考していた。


「あら、今日も大変ですね~ 頑張ってくださいね~」


(何をだ?!!)


「最近寒いですから気を付けてくださいね~」


(この状況でどう気を付けろというのだ!)

なんだったら、土の中は温かく快適だった。



3日目


「はぁはぁ」


さすがに喉が渇いて、つらくなってきていた。


「魔王おにいちゃん、おはよう~!」

「おはよう~!」


シャーリーとエルが手を繋いで登校して行く。


「おう、気を付けてな」


何を返事しているんだ、何に気を付けるというのか?

もっとも警戒すべき魔王がこの始末なのに。

・・・世は事もなし。


秋とはいえ、日中の日差しは強く、喉が渇く。


「はぁ、はぁ」


「あれ、お兄さん苦しいの?

て、・・・それはそうよね。」


「み、み・・・」

「ミミズ! ・・・のお約束ではなく、水ね!」

「え、お父さんご飯あげてないの?」


拾った犬の世話みたいに言う。


「ちょっと待っててね! エルちゃん手伝って!」

「うん!」


一生懸命、井戸についた手押しポンプを動かし桶に水を汲んでいる。

それを、セージの目の前に持ってくるのだが。


地面から首しか出ていないセージの目線より上に、おけのフチがある。

どうにもならん。


「コータローのお皿は?」


コータローは村長さんちの犬である。


「動けないから、難しそうね・・・。」


学校帰りの他の子も集まってきた。


「どうしたの?」


3バカの一人、ブラボーである。


「コップかお椀が、ちょうどいいかなぁ」

「じゃあ、借りてくる!」


エルが手近な民家へ。

不在らしく、ひとしきり声をかけても動きがない。

すると、普通に扉を開けて中に入っていく。


ブッ!!


「にいちゃん、汚いー」

「いや、あの子勝手に人の家に入っていったぞ。というか、何でカギが締まっていないんだ?!」


二人が不思議そうにセージを見下ろす。


「カギなんて、教会や倉庫でしか見たことないけど?」


エルが木製コップを手に、ニコニコしながら走って戻ってくる。

・・・コケた。

コップが転がる。


「あっ!」

「うぅ、、、ぐぐぐ」

「あぁ! エルちゃん!」


起き上がる。ズボンの膝はよごれ、地面についた手が砂で擦ってしまい、血がにじんできていた。

エルは、そんな事は後回しに立ち上がると、転がったコップを掴んで今度はゆっくり歩いてくる。


「はい!」

エルはコップを不機嫌そうにシャーリーに渡すと、そっぽをむいてしまった。


「2号、お兄さんにお水飲ませてあげて!」

・・・3バカのうちの2号かぁ。


「ガッテン!」

・・・平常運転であったようだ。


「エルちゃん、バイ菌が入らないように早く洗おう!

石鹸あるはずだよ。」

「・・・」

エルが無言でトボトボとシャーリーについて行く。


2号がコップを使い、セージに水を飲ませてくれる。

「すまんんんんーーブクブク、ブハッ!!」

鼻にまで入った。

「あぁ、ごめんなさい!」

今度はゆっくりと飲ませてくれた。

「すまん、助かった。」

「いいってことよ!」


しばらくすると、手を洗ったエルとシャーリーが戻ってきた。

「お水飲めた?」

涙を溜めたエルが不機嫌そうに聞いてきた。

「あぁ、ありがとう。」

「うん」

ニッコリ笑うのだが、溜まっていた涙がこぼれる。

「・・・う、うわぁぁぁぁああん」

目的が片付いて、痛い手の方に意識がむいた瞬間泣いてしまった。


瞬間、強烈な悪寒がセージの背を走る。


「エルちゃん、エライエライ」

シャーリーと2号がエルの頭を撫でると、尚更泣いてしまうのだった。


そんなエルの泣き声を聞き付けた、ご近所の婆さんがやってきた。

「あらら、転んじゃったのかい」

大人が来たことで先程まで気丈に振る舞えていたシャーリーと2号の様子がおかしくなる。


「お婆ちゃん、おにいちゃんにお水をあげたくて、それで・・・それで」


エルが転んでケガをしたのが、自分達のせいのように感じたのだろう。


「ふ、えぇーん!!」

・・・泣いちゃった。


「大丈夫よ~」

婆さんは全く動じず、三人の口に飴玉を放り込む。

途端に、モゴモゴ言って泣き止む3人。


「ケガした子をこちらに連れてきてくれ。」

セージが声をかける。

顔をそれぞれ見合わせた後、婆さんがエルを促して連れて来た。


「どうするのかね?」

「回復法術を使えた・・・はずだ、手を俺の前に。」

そう、召喚された直後、6年以上前は確かに使えていた。

しかし、何故か今は自信がない。

案の定、回復法術は機能しない。


セージの力は魔王を自認するに当たり変質し、魔の類いしか使うことが出来なくなっていた。


その事にセージは薄々気付いていて、今、はっきりと自覚した。


「すまん、使えないようだ。」


そこまで期待はしていなかったのか、4人は他の回復法術使いや医者に行く話をし始めた。


「アビックを呼ぶのが一番だと思うけどね。」

「ううん、お父さんはぁいいの!」


セージをチラ見し、何故か首を振って嫌がるエル。

飴玉を食べているから、話しにくそうだ。


「それよりも、お婆さん、

あのおにいさん 何も食べてないんだって!」

「え、アビックが面倒みているんじゃないのかい?」

「食べてないって」


エルが頷いている。


「お祭りからだろう? そりゃ大変だ。」

婆さんが足早に自宅に向かうと、残り物もスープとパンを持ってきてくれた。


「ほれ、お食べ・・・って、それじゃあ食べられないね。」

改めて、首しか地面から出ていないセージをまじまじと見る。

「すまない。」

何なんだろうこの状況は・・・。


「ぷ、わはははははは!」

婆さんが大笑いし始め、子どもたちもつられて笑い出す。


「あんた、聞けばテラン帝国を亡ぼした、サハンの魔王なんだってねぇ。

神様は、よくあんたを生かしているもんだ。」


怖いことを言いつつ、皺くちゃの笑顔で婆さんはエルの頭を優しく撫でる。


「この子が可愛ければ可愛い程、あんたの事が憎くて仕方ないだろうに。

・・・しかし、

このザマだからねぇ、何だか笑っちゃうよ!」


「ほら、あんたたち、食べさせてあげな。」

「うん!」


セージは久しぶりの食事にありつけたのだった。

「温かい・・・。」



4日目


エルが手に包帯を巻いて登校してきた。

抜けるんじゃないかと思うほど、こちらを向いて手を振り回している。


「エルちゃん、行くよ~!」

「おねいちゃん! 待ってー!」

(大事なかったようだな。)


3バカの一人、チャーリーが何故かセージのまえに線香を炊いて登校していった。


朝飯を昨日の婆さんが食わせてくれた。

昼飯を違う家のおばさんが食わせてくれた。

ねこが暖を取りによってきた。

セージは、くしゃみが止まらない。


干した麦を荷車に載せたおじさんが畑と倉庫を往復していた。

おじさんはセージの隣でパイプタバコを一服し、セージにも試させたが、むせるだけだった。

「わっはっはっは!!」

おじさんは大笑いし、セージは苦笑いするのだった。



5日目


夕方、翌日は雨になりそうだと、子どもたちとおじさん二人がセージを囲むように雨よけの箱を設置して行った。


レイモンがボールを持ってきて、その箱めがけてボールを蹴り込んできた。

ゴールじゃねぇ。

セージは、全てを弾き返してゴールを死守した。

レイモンは、膝をついて愕然としていた。


その後、神父教師が飛んできて、レイモンをハリセンでぶっ叩き、セージに向かって謝罪させた。

セージは大笑いした。


夕飯を村長が食わせてくれた。


「お前さんがサハンの魔王であることは、アビックが皆に知らせておる。

テランに縁のあるこの村の住人はのう、みな、その名に思うところがある者ばかりじゃ。

・・・アビックはな、お前の事をみなが襲っても、手を出さんだろう。心して食うのじゃぞ。」

「説教臭いじじいだ。」

「はっはっは、そら、食え~」

セージはそう言いつつ、飯を食わせてもらう。

(では、何が、俺を生かしているのだ?)




6日目 雨


2号が雨のなか、煮え立ったスープを食わせてくれた。

セージは火傷した。

飯を食わされながら、カンチョーについての熱弁を強制的に聞かされるのだった。

(どうなっているのだこの村は。)



7日目 雨


明け方頃、倉庫を収穫泥棒が狙いに来た。

が、セージに驚き絶叫をあげたところで、村人に見つかり逃げ去った。


「晒し首だと?! なんて村だ!!」

(それには同意する。)


お礼とばかりに、おじさんたちがセージに肉を食わせてくれた。

夕方には、酒を持ってきてセージに飲ませてくれた。

セージの語る泥棒の慌てふためく様に、おじさんたちが大笑いしてくれた。

(悪くない。)



8日目 雨

9日目 雨


いつもだれかが気にかけて、セージに温かい飯を食わせてくれた。



10日目 雨


山で土砂崩れが発生。

この村の被害はなし。

しかし、他所では地滑りが広く発生していた。



11日目


やっと雨が上がった。

久しぶりに子どもたちが広場で遊んでいる。


出掛けられなかった犬を散歩に連れ出す人が多く、セージは例外なく犬に顔を舐め回された。

「魔王を舐めるな!」

爆笑が起きた。

(何故なのか・・・)



12日目


王都騎士団の使者がアビックを訪ねて来た。

セージを見てギョッ!としていた。

村人のセージに対する接し方と、セージを4度見してからその場を去って行った。


その後、アビックが使者から逃げて広場に来た。

セージに気付き、大笑いした後、煎り豆を大量にセージの口に突っ込んで去って行った。

セージの口の中の水分が無いなった。



13日目 雨


村の川が氾濫した。


家畜が数匹流されたと、爺さんがセージに飯を食わせながら悔しがった。

村の子どもたちに大事にされていた子やぎも流されてしまい、合わせる顔がないと嘆いていた。

セージは、爺さんに嘘をつくことを薦めた。

「子やぎは、気に入られて商人に引き取られたんだ。」


氾濫地域に近い村人が避難の為に教会へ移動してきた。

若い村人が多い。赤ちゃんも連れている者もいた。

セージを睨み付ける者が多くいた。

(どういう事だ?)



その日、大雨の土砂滑りにより、

隣領、竜の住みかに大きな被害が発生してしまった。

住みかを追われ、餌を探す竜が周辺に飛び立った。



14日目


村に竜が現れた。

翼竜、ワイバーンである。

避難民と登校した子どもたちがいる教会を、竜が襲おうとしている所が、セージから見えた。


「?!!」


セージの中に積もった温かいものが、体を突き動かした。


セージは、

埋められた地面を吹き飛ばし、穴を飛び出す。


セージの魔力は枯渇していた。

魔力が集中していた角と右腕は、アビックによって失われていた。

それでもセージは、教会に飛び掛からんとする竜に、残った魔力を振り絞り高位熱線魔法を放つ。


「かっは!!」

魔力が尽きて、竜を撃ち抜き切れなかった。

魔力不足で、目が回る。


「糞がっ!!」


悪態をつくセージ、

いつの間にかアビックがそこにいた。


「召喚勇者、

努力も、覚悟も、信念も、勇気さえも自らの内から生み出すことなく、何とも身勝手でお気軽に"勇者"を名乗ってくれる。

討たれる覚悟は出来たかね、魔王勇者どの?」


「まだだ、あいつをやった後なら、いくらでも討たれてやる!」


「結構!

毒は抜けたようだな、バカ者殿!

ならば、いっぺん死んでこい!!」


アビックはセージの額に手を当てると、膨大な神気によりセージの残った力の源を根こそぎ消し去ってしまう。

召喚勇者として与えられた力、その変質し魔王と化した力の根元が失われ、この世界におけるセージの存在自体が消えていく。


「なんで、この流れでそうなるー!!!

俺に、あいつらを助けさせろ!!」


セージは竜に向けて、失われた右腕を伸ばす。


「お前がこれまで殺して来たのは、お前が今助けようとしている、ああいう温かなものたちだ。

噛み締めて、消えるがいい! 魔王セージ!」


「うぁぁああああ!!」


セージの力は真っ白に吹き飛ばされた。


歪んだ根源に依存しない、セージの存在がそこに残された。

アビックは、セージの胸を指して言う。


「空っぽなはずの力の源、

しかして、"その力"は、どこから生まれている?

"聖司"くん!」


召喚勇者として、負わされた業により生じていた力、その源が失われて尚、内から生じる力に"聖司"は気付いた。


「ゴチャゴチャうるせぇーー!

こっちは、急いでいるんだ!!!」


何故か涌き出る力を放出し有らん限りに飛行・加速。

聖司は、そのままワイバーンをぶん殴る。蹴り飛ばす。


聖司の、失われた右肘から先。

そこに、実体を持たない力場だけの右手が生じていた。

その右手でワイバーンの顎にアッパーカット!


グアァァァアアアア!!!!


ワイバーンを教会上空から離れた地面に叩き落とす。

突然・予想外の痛打に驚き地面でのたうつ。


「はぁぁああ!!」


ワイバーンは首を巡らせ、追撃を仕掛けてくる聖司を認めると、両足と翼の一振で、聖司の射線から瞬時に離脱してしまう。


「っ! 逃げるのか?!」


聖司がワイバーンの向かう方向に目を向ける。


瞬間、アビックは腰だめの刀に手を伸ばそうとして、静止する。


ワイバーンは、逃げ帰るその道すがら、

教会に向かう小さな人影を行きがけの駄賃よろしく、餌を拐おうと狙う。

寸前、人影は倒れ伏す動きで、拐われることは避けられたのだが、鉤爪に引っかけられる。


「あっ?!!

このヤロウがーー!!!」


聖司が、両手をワイバーンに向け魔方陣展開。

が、高位熱線 "魔法" は、発動しない。

身の内から力は溢れるのに、使いようがない。


それなのに、ワイバーンは身勝手な被害だけを残し、あっという間に去っていった。


聖司は、すぐさま被害者のもとへ飛ぶ。


アビックは空中に静止し、腕を組み、ワイバーンに引き裂かれた小さい影を見下ろしていた。

正視を拒む顔の各所がひきつり、手は自らの腕に強く食い込んでいた。

しかし、アビックは決して目を反らさない。


シャーリーが、

背中から脇腹を引き裂かれ転がっていた。

辺りには手提げカゴと、中身のパンが散らばっていた。


飛行中のワイバーンのかき取るような鉤爪の一撃に、シャーリーは大きく弾き飛ばされ、地面に叩きつけられていた。


大量の出血、内蔵の損傷、背骨の破断・・・。


駆けつけた聖司は、その有り様にシャーリーを抱き起こすことも出来ない。


アビックの光を無くした瞳が、見下ろす。


「・・・アビック!!!

お前、今、動けただろっ!

なぜ、助けなかった!!!」

「・・・。」


「クソッ!クソッ!何なんだよ!!!

エルって子じゃなかったからか?!!」


「・・・うるさいっ!!!

こんな理不尽を、俺に見せやがって!

お前がやるしかないんだ!」


聖司の罵倒に、アビックは苛立ちを隠さず叫ぶ。

うつ伏せになったシャーリーの口元から血の泡が吐き出される。まずい。


このままでは、この子は、

家族にも看取られず、一人でこんな道端で死んでしまう。


聖司は、単にこの子に死んでほしくなかった。

助けたかった。

それだけを思い、発動しなかった 回復法術 を願った。

聖司の内から生じる力が大きくなり、溢れ出す。


「助かれ!!!」

回復法術 ・・・発動!!


これまで、魔王の力を受け付けなかった法術回路が、聖司の思いに応えて光輝く。


小さな命を繋ぎ止めるべく、回復は行われるのだが、間に合わない。傷が深すぎるのだ。


「足りない!! なにか無いのか!!アビック!!」

「己が身の内を探れ!! 人事をつくせ!」


「身の内・・・、召喚勇者に刻み付けられていた奇跡・・・使えるものは使わせて頂く!」


魔王化して使えなくなっていた回復法術へのパス、その先への道が開く。

実体のない聖司の右手、その輪郭の下に法術陣が多重顕現する。


高位 回復法術 ・・・発動!!

極大 回復法術 ・・・発動!!


「くっ!!」

アビックの顔が歪む。


発動したはずの回復が効果を発揮しない。

命そのものに反応して回復は効果を得るが、命亡き者に効果はない。


「勇者よ、人事を尽くした後はどうするんだっ!!」

アビックは、聖司に救いを示す。


「・・・助けてくれっ!! 神様!!」

勇者の願いが、光の柱となり立ち昇る。


「結構!! 諦めるな、足掻き続けよ!!」

「おう!」


アビックが広げる両腕の間に、球体方陣が展開される。金色の光がシャーリーに降り注ぐ。


高位 蘇生法術・・・失敗!!


「くっ!・・・」


アビックの表情が歪む。

天に向き、何事かを呟く。

青い光が額から溢れ、網膜が虹色に揺らめき、


"世界が征される"。


アビックの右手が、ただ振り下ろされる。


"復活" ・・・発動!!!


額の光、瞳の虹色が徐々に収まる。


「かはっ!」

シャーリーが、"復活" を果たした。

咳き込むように息をしているのが分かる。


聖司は、シャーリーの横に崩れ落ちた。


「セージさん?」

シャーリーの意識が戻り、体を起こす。


「よかった・・・」

両膝をつき、シャーリーの隣で涙を流す聖司は、

・・・全裸だった。


「キャー!!」

バチーン!!


シャーリーの平手打ち! 会心の一撃!

勇者 聖司 に社会的 大ダメージを与えた!!

ハイファンタジーと思っていたものの、ローファンタジーが区別出来てなかったのでAIに聞いてみたら、下記の回答で、大笑いしました。

本作はローファンタジーに変更しました。笑



ローファンタジーです。

しかも「史上最もローなハイファンタジー設定」

だからこそ「クワ一本で魔王を耕す」「晒し首の魔王に村人が飯を食わせる」みたいな異常なギャップが生まれて、読者が腹筋崩壊するのです。



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