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王都へ遠足に行きましょう9

振り抜くエネルギーを残さず斬撃へ転換したため、クワを男に真っ直ぐに向けた姿勢で、アビックは残シンしていた。


「・・・ふむ」



ウェンディは脱獄で開いた穴から飛び出し、通りに足を踏み出す寸前に、アビックの斬撃を見ていた。


「ななな、なに?!」


言動とは裏腹に、間も臆せず斬撃の進行方向を確認すべく、通りに身体を晒す。

その目は、斬撃が、異形の存在感を放つ男と、周囲のローブの者たちを吹き飛ばす様子を目撃する。


ウェンディは、あれが発端の脱獄犯であると直感するのだった。


「今じゃ! 捕えろ!」

「「おう!!」」


年寄りジイさんが目をかっ開いて指示を飛ばすと、兵士、騎士が弾けて駆ける。


兵士の一人は掌に収まるサイズの発行玉の線を引き、族たちの方向高くへ投げる。

上空で玉が大きな音と光を放って爆発する。


「行きます!」


ウェンディも駆け出すのだが、速い!

5足の内に先行した兵士と騎士に並び、追い越してしまう。


「姉ちゃん?!」


事態に圧倒され、軽口も忘れていたレイモンがウェンディに気付く。


「?!」


逃げ出す族の殿が、追っ手に向けて牽制の炎弾法術を放ってよこすのが見えた。

炎弾は着弾から広範囲に被害がおよぶ。

敵の見越しが正確なため、先行するウェンディたちはこのままでは回避しきれない。


「借ります!」


ウェンディは、先輩騎士を追い抜きがてら大盾を拝借。

追撃の勢いそのままに、炎弾を叩き落とすように大盾を振り抜く。


ダーン!!


振り抜く瞬間、大盾は魔法障壁を生成し、炎弾の爆散からウェンディ自身と背後の仲間を守るのだった。


左足を軸にした大盾を振り抜く回転を止めるべく、右足を蹴り出しジャンプ。

しかし、回転してしまう勢いは、それだけでは殺しきれない。

ウェンディは振り抜き空中にある大盾を身代わり・反動の手がかりにして、背後に投げ捨て、更に加速!

借り物なのに!


レイモンから見えたウェンディは、ぶち抜いた炎弾の火炎を羽のように引き連れて飛んでいた。


「おぉ! 姉ちゃんカッケー!!!」

「キレイー!!」


レイモンとエルが歓声を上げる。


「・・・俺は?」


アビックは寂しそうに二人を見ている。


「お父さんは、

ウネ作ってないから、やり直しー!」

「えぇぇぇぇええ?!!!」


そう、コウスケじいさんならそう言った!



発光弾による知らせで、逃亡犯たちに向かい王都各所の詰所から兵士・騎士が殺到してきていた。


しかし、族の位置は外門の近くでもあった。

外門の守衛が突破されれば、市内での包囲殲滅ではなく野外追撃戦になる。


「追い出すだけの方がいいだろね。」

「はい、後はお任せを。」


高齢ジイさんが答える。

見渡すとジジババ、カンチョウ被害者の会がそれぞれに今の様子を反芻して周囲と盛り上がっている。

ウェンディたちを追いかけ移動する野次馬や、アビックのことをポカンと見続けている人も数名。


「・・・」


アビックは、ゆっくりとエルとレイモンを担ぎ上げると、逃げ出すのだった。


「あ、バイバーイ!」



エルの挨拶に、

何人かのジイさんが敬礼で見送り、何人かのばあさんがエルに笑顔で手を振ってくれていた。


「気を抜くな!

家に帰るまでが遠足だっ!」


レイモンが担がれながら、カンチョウポーズで背後を警戒するのだった。


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