1部【夜会話】
この文章量にして前話からの期間の長さよ。
仕事と指揮官業が忙しいのです
お話をしましょう。
彼女はそう言ってくれた。
だから、話をしよう。
ごちゃごちゃと考えずに、思いのまま……というのは流石にすぐには厳しいけど。
「じゃあ、今日、速水さんと買い物で感じたことを教えて」
気になっていたことは他にもあるが、それでも取っ掛かりとしては無難だと思う。
「そうですね。まずは、何とか適応出来そう。そう感じました。やっぱり、私自身がまだ人間そのものではない、そう強く感じています。でも、速水さんと買い物をしている内に、どんなものが似合うのか?どんな柄がいいのか?そう悩んでいて、それが他の女性達と同じような悩みで、それが楽しくて。だから、思いの外、適応出来ると感じました」
彼女は一息で感想を述べる。
その内容はとても、とても人間ではないけど、でも安心出来る感想。
だからか、
「そっか。じゃあ、どんな柄が九花に似合うの?」
と、具体的な内容も考えずに、つい口から聞いてしまった。
「えっと……その、そうですね。やっぱり、無地の黒とか、少し花柄の入ったやつとか………見ますか?」
そう言って、こちらを少し蔑んだような、少し照れてるような、そんな反応を返してくる。
「うん、見せてくれるなら」
俺がそう返答すると、
「そうですか………」
と言って、ガサゴソと九花が着ているスカートを捲ろうとし始める。
その時点で、やっと気付いた。
気付いてしまった。
実は先程から話がズレていたのだと。
俺はお皿等の食器類や日用品、普段着などを想像していた。たけど、九花は下着の話をしていたのだ。
流石にマズい。
何がマズいかって、隣に村石や速水がいるこの状況、同棲し始めた女の子に無理矢理下着を見せさせる家主みたいな状況をあの二人が見たら、何を言われるか分からない。
「いや、いやいや、捲らなくていいから!」
「え、でも、あなたが見たいって………」
「俺が考えてたのは服とか食器類とか、そんなんだから。下着とか考えてないから」
一瞬の間。
「それなら、最初から言ってくれれば良かったのに」
少し不貞腐れてる九花。
それはそれで可愛らしいが、今は何とか危険を回避できて、ホッとしているのでそれどころじゃない。
「いや、そうかもしれないけどさ。でも、いきなり下着の話をしているとか考えないって」
いや、本当に。
そう言うと、
「冗談ですよ」
と、九花は少し微笑んでくれる。
冗談?
「えぇ、冗談です。少し焦ったでしょ?」
「少しどころか、かなり焦ったよ…………」
「それはごめんなさい。でも、少し緊張が和らいだでしょ?」
緊張?
自分が緊張していた?
「あなたは気付いてなかったのでしょうけど、この部屋に飛び込んで来て少しして、緊張していました」
九花が俺を見ている。
「こんなこと言うのもおかしい話かもしれません。ですが、少なくともあなたは私を含め、ここにいる方々全員に対して壁を作っているのは知っています。その上で、せめて私だけでも、壁を作らずに対等に接してほしい、そう思うのです」
九花が俺の奥を覗く様に、視線を合わせてくる。
言葉が出ない。
理由は判っている。
緊張していたという指摘を受け、頭が一瞬固まった上で、見事に内面を見透かされたからだ。
このタイミングで、それを直接言われるとは思っていなかった。今、俺の顔は酷いことになっているだろう。目を見開き、瞳孔が収縮しているはずだ。
その上、若干息も荒くなっている。
傍から見たら不審者のそれだ。
だが、そんな俺を九花は
「今すぐじゃなくてもいいんです」
そう言って、抱きしめてくれた。
そんな彼女に俺は何も言えず、何もできなかった。
なかなか更新しないので、ブックマークはなかなかしてもらえないと思います。
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