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捨てられおっさんと邪神様の異世界開拓生活~スローライフと村造り、時々ぎっくり腰~  作者: 天野ハザマ


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初めての来訪者11

 村の一通りの案内が終わり、コロナは案内された集会場に座っていた。

 途中でトイレが無いという致命的な問題が発生したりもしたのだが、色々な配慮により解決している。

 具体的な事に関してはコロナは忘却する事にしている。どのみち、旅の最中にはよくあることだ。


「……いい村、だな」


 ちょっと変な人間も多いようではあるが、幸せに満ちている。

 こんな場所でこんな村に辿り着くなどとは思ってもいなかった。

 そうであるが故に、心配だった。

 この村の価値は高い。雄太が思うよりも……もしかすると、コロナが考えるよりも更に。

 そうなった場合、この村はどうなってしまうのか?


「お、何か悩み事か?」


 答えのないスパイラルに陥りそうになっているコロナに、集会場の入り口からそんな声がかけられる。

 振り向いてみれば、そこには一人の巨漢が立っている。


「貴殿は……」

「ああ、俺か? この集会場の管理人っつーやつをやってる。此処の2階が俺の家だ」

「そ、そうか。私は静謐の森の記録守の氏族、タムグレイの息子ボレノスの娘、コロナだ」

「静謐の森のタムグレイだあ……?」

「祖父と知り合いなのか?」


 なんとも懐かしそうな顔をする男にコロナはそう問いかけるが、男は「いや、気のせいだ」と首を横に振る。


「ま、俺のこたあいいんだよ。それより何悩んでんだ?」

「……この村の事だ。貴殿はこの村の価値について、どう考えている?」

「あ? そりゃ高いだろ。とんでもなく高ぇ。値段なんかつかねえ程にな」

「だろうな。だからこそ、悩んでいる。私に何か出来る事はないのか、とな」

「ほーん?」


 男は興味深そうな声をあげると、集会場の床に腰を下ろす。


「お前、別にこの村にゃ関係ねえだろ? なんでそんな事悩んでんだ」

「助けられた恩と一宿の恩。充分すぎるだろう」

「ふーん、律儀なんだな。まあ、気にする必要はねえよ」

「……それは、私がよそ者だからか?」

「いや、そうじゃなくてよ」


 男は苦笑すると、自分の顎を撫でる。


「この村に余計な手出ししようってんなら、生きちゃ帰れねえよ。それこそ話題の「勇者様」だろうとな」

「勇者……」


 そういえばそんなものが異世界から召喚されたという話を聞いたことがある。

 2人組の年若い男女のヒューマンであるらしいが……。


「まさか、あのユータ殿の魔獣か?」

「ん? それもあるな」


 それ以上言うつもりはないということなのだろう。

 曖昧に笑う男に、コロナもそれ以上の追及はやめる。

 いや、違う。追及するということは、何かに踏み込む事だと気付いてしまう。

 そんな「賢明な判断」をしたコロナに、男は満足そうに頷く。


「お前、中々分かってるな。余計な首を突っ込まないのは長生きの秘訣だぜ」

「場合によっては、私を殺す気だったか?」

「ハハハ、俺にそんな実力があるように思うか?」

「さて。少なくとも、勝てそうにもない事だけは分かるぞ」


 先程の一瞬。ほんの僅かだが、絶望的な力の差をコロナは感じ取った。

 まるで人と神程の、比べるもおこがましく思えるほどの差。

 動揺する心を抑えつけるのに、コロナは必死だった。

 目の前のコレは、見た目通りのものではない。

 もしかしなくても、コレは。コロナがそれに行きつきかけた時、現れた別の何かが背後から男の頭を拳で叩く。


「妙な殺気が漏れたと思ったら……何やってんだテメエ」


 そこにいたのは、シェルと名乗っていた赤髪の少女だった。

 男は殴られた頭をさすると、困ったように笑う。


「おいおい、いきなり殴るこたあねえだろうに」

「客を脅してんじゃねえよアホ。どう見ても善人だろうが」

「善人ってのが一番厄介なんだぞ?」

「うっせえ。どっか行け」

「へえへえ」


 巨体を揺らしながら集会場から出ていく男に向かって鼻を鳴らすと、シェルはコロナへと振り向く。


「悪ィな。あいつアホなんだよ。一番常識人ぶってるくせにな」

「い、いや。普通に話を、していただけだ」

「お前がそう言うんならいいけどよ。それより、お前の鎧の話だよ」

「鎧……あっ」


 そういえば雄太の家に置きっぱなしだったとコロナは気付くが、大事なものだったはずのソレの事を今になって気付いた事実に苦笑してしまう。

 それほどまでに、この村では驚きの連続だった。


「アレな。作った奴ブン殴っておいたほうがいいぞ」

「は?」


 いきなり何を言っているのかとコロナは疑問符を浮かべるが、次にシェルが放ったのは無視するにはあまりにも衝撃的過ぎる言葉だった。


「ありゃ呪いの鎧だぞ。お前、あんなもん着ててよく今まで生きてたな?」


 呪いの鎧。その言葉がコロナの脳内に浸透するまでしばらくの時間がかかり……その意味を理解した瞬間、コロナは勢いよく立ち上がる。


「ま、待て! 今のは冗談でも聞き逃せんぞ! アレは私がエルフの王より賜った鎧だ! ブラックエルフの鍛冶師の技術とホワイトエルフの魔法による最高の鎧なんだぞ……それを!」

「ああ、間違いなく最高の鎧だよ。作る動機によっちゃアタシ好みではあるんだが、たぶんもっとドロドロした動機の産物だな。なあ……お前、仲間に嫌われてんのか?」

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