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捨てられおっさんと邪神様の異世界開拓生活~スローライフと村造り、時々ぎっくり腰~  作者: 天野ハザマ


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倉庫を作ろう

 倉庫と聞いて雄太が思い出すのは、学生時代の体育倉庫や観光で見た倉庫街とかだ。

 どちらも役割は全く違うが、人の生活場所から離れているという点だけは変わらない。

 勿論例外はあるだろうが……そういった倉庫が離されているのは何故なのだろうか?

 何かしらの理由があるはずだ。


「んー……」


 ヒヨコを風で追い払ったセージュが雄太の頭の上でポーズを真似しているが……それはさておき。

 倉庫が離されている理由としてはやはり、そこにあるのが妥当であるからなのだろう。

 ではなぜ妥当なのか。

 たとえば体育倉庫であれば、グラウンドのすぐ側にある。何かと埃がたちやすいから、校舎とは離さざるを得ないのかもしれない。


 では、倉庫街はどうだろう。

 大抵の倉庫街は、何らかの移動手段の側にあるはずだ。

 たとえば電車、たとえば川や運河など。つまり、運びやすいからそういう場所にあるわけだが……。

 しかしそれは、この村で倉庫を村の端に置く理由にはならない。

 何故なら今のところ農作物などを他に輸出する予定もないからだ。

 むしろ防犯を考えれば村の中心に置いてもいいと思うのだが……。


「今度は何悩んでるです、ユータ?」

「んー? 倉庫を何処に作ろうかと思ってな」

「畑の側じゃダメなんです?」

「それでもいいんだけど、今後の拡張を考えると邪魔かなってのもあるんだよな……」


 畑も倉庫も、村が発展すれば増えるかもしれない。

 その時に倉庫が点々と離れているというのは、如何にも不格好に思えるのだ。


「フェルフェトゥはどう思う?」

「ユータの好きにすればいいと思うわよ」

「うう、それが一番困るんだよなあ……」


 雄太が思わず頭を抱えると、存在を一瞬忘れられたセージュが巻き込まれて「きゃー」と叫び潰される。


「あ、悪い」

「ユータに蹂躙されたです……」

「人聞き悪すぎだろ……」


 降ろそうとすると髪を掴んで抵抗するセージュをそのままに、雄太は周囲を見回して唸る。


「んー……倉庫、倉庫かあ」


 村の大事な備蓄を入れておく場所だ。防犯も考えたいが、元々ドアがないのだ。

 それに関しては今更とも言える。

 言える、のだが。


「ピヨ」

「ギャー、懲りないヒヨコです! それ以上寄ると吹き飛ばすですよ!」


 セージュを狙っているのかジリジリと寄ってくるヒヨコ達を見て雄太は「あっ」と声をあげる。


「そうか、お前等が居たじゃないか」

「ピヨ?」

「へ?」

「いや、セージュじゃないから」


 言いながら雄太はヒヨコに近づいていき、セージュはその動きに連動するように雄太の首の後ろに隠れていく。


「ピヨ」

「フェルフェトゥ。こいつらの近くに倉庫置いといたら、色々便利なんじゃないか?」

「そうね。魔獣がいるってだけで充分な警備になるとは思うわよ」


 この子達にとって食事は趣味だしね、とフェルフェトゥは笑う。

 そう、魔獣化しているニワトリやヒヨコ達は食事を本来ほとんど必要としない。

 それでも朝昼晩と食べているのは、そうやって雄太達と関わる事が楽しくて嬉しいから……であるらしい。

 つまり、倉庫に首を突っ込んで中の物を食べてしまうというような事はないのだ。


「そっか。じゃあよろしく頼むぞ」

「ピヨ」


 カプッと頭を噛まれて雄太は多少不安になるが……ともかく、倉庫を作る場所は決まった。


「よし、じゃあ倉庫作るか!」

「はいです!」

「あ、手伝ってくれるのか」

「運ぶくらいですけどね」


 この「作る」行為が雄太にとって大事な儀式のようなものだと分かっているセージュはそう答えるが、それでも雄太には充分だ。

 実際、材料の運搬はフェルフェトゥの力に頼っているし……誰かと話しながら出来るというのは楽しい。


「じゃあ材料運ぶか……競争だ、セージュ!」

「はいです!」


 石を積んでいる場所に走っていく雄太と、その後を追うセージュを見て……フェルフェトゥは「元気ねえ」と笑う。

 あの一見無邪気な精霊がそのまま本当に無邪気なわけではないことくらい雄太も分かっていると思うのだが……まあ、あの姿でいる限り放っておいてもしばらくは問題ないだろうとも思う。

 精霊は良くも悪くも純粋だから、雄太の誠実な性格とは相性がいい。


「コケッ」

「あら、貴方もユータが心配?」


 やってきたニワトリ……こっちはトサカが立派だからジョニーのほうだが……ジョニーに、フェルフェトゥはそう返す。

 いかにフェルフェトゥとてニワトリの言葉が分かるわけではない。

 もっと魔獣化が進めばやがては人間の言葉を話すかもしれないが、今はその段階ではない。

 故にフェルフェトゥがやったのは「何となく空気で理解する」というだけの事なのだが、どうやらそれであっていたようでジョニーは雄太達の走っていった方向をじっと見ている。


「平気よ。何か起こらない限りはユータの好きなようにやらせるのがいいの。危険だからダメだなんて言っても可能性を狭めるだけ。やってみてダメなら、いくらでも私がフォローしてあげるもの」


 それは、雄太の居ないところで他の邪神達にも言い含めている。

 特に一番危険なベルフラットには念入りにだ。アレは放っておくと雄太をダメ人間にしかねない。


「コケ」

「あら、難しかった? 簡単よ。自分に何ができるのかなんて、やってみないと永遠に分からないってこと。賢いつもりで諦める愚か者にはなってほしくないの」


 挑戦し続ける限り、可能性は無限だ。

 それを防ぐ障害はフェルフェトゥが取り除けばいい。

 そうしていけば、雄太は今よりずっと大きく強くなれる。


「私が育ててあげる、ユータ。世界中の誰もが欲しがる貴方に。私だけの、貴方に」


 誰にも渡さない。

 雄太を捨てた人間は勿論……ベルフラットにもバーンシェルにも、だ。


「ふふっ……楽しみね」

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