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捨てられおっさんと邪神様の異世界開拓生活~スローライフと村造り、時々ぎっくり腰~  作者: 天野ハザマ


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自宅の改造3

「そ、そういえばなんだがな」

「ん?」

 

 スープを飲む手を止めて、話題を変えようとコロナは雄太に話しかける。


「二階を作ると聞いたが」

「あと物置もだな」

「随分と拡張するようだが……何かあったのか?」

「そういうわけでもないんだけどな」


 雄太はそう言うと、スープの人参をもぐもぐと咀嚼する。


「まあ、一番大きい理由は……運動と練習だな」

「練習……?」

「ああ。ほら、集会場作る時は妥協して外階段にしたしな。ここらで内階段作る練習もしようかと」

「ふむ」


 確かに、その経験は無駄になるものではないだろうとコロナは思う。

 

「とすると、特に必要に迫られて……というわけではないんだな」

「まあな。技術が上がって嬉しいのは俺だし、そういう意味では自宅を改造するのが一番いいかなって」

「ふむ……」


 雄太は村長でもある。その雄太の家が立派になるのはコロナとしても歓迎だ。

 なんだかんだで家というものは権威の象徴でもあるし、村で一番立派な建物であったところで誰も文句など言わない。


「そういうことであれば、他の家を造るのもいいかもしれんな」

「他の家? っていうと……ベルフラットの」

「やめなさい。引きずり込まれたいの?」

「ひどいわ……」

「……えーと。誰の家を造るんだ?」


 ひどいわ、と言いつつも黙っていたベルフラットの目が怪しくギラリと輝いたのが雄太にも見えたのだろう。

 冷や汗を流した雄太がそう問いかけると、コロナは「誰の家でもないさ」と答える。


「この村も、いずれ私のように誰かが流れ着くかもしれん。その時に家が必要だろう?」

「ああ、空き家ってことか。でもいいのか? なんか空き家問題って聞いた事あるぞ」


 地球に居た頃のニュースを思い出しながら雄太は言うが、コロナは首を傾げてしまう。


「その問題については私は知らないが……言葉の響きから判断するに、誰も住まない家の劣化とか、そういう話か?」

「ああ、そうそう。それだよ。それで景観とか防犯上とかの問題が」

「発生しないだろう。この村に限ってはな」

「へ?」


 このミスリウム村の全ての建物には、神の力が満ちている。

 人が住まない程度で劣化などするはずもない。

 この村に神々が……フェルフェトゥ達がいる限り、1000年先であろうと新築同様の輝きが約束されているのは間違いない。


「……この村は特別だからな。建物の劣化については考えなくていいと私は思う」

「そうね。それは確約するわ」

「ふーん? なるほどなあ」


 雄太は頷くと、もう1度「なるほどなあ……」と呟く。


「なら自宅の改装が終わったら、もう一軒作ってみるか」

「それ……私の神殿にしましょ?」

「あ、いやほら。他に来るだろう人の家だしさ?」


 近寄ってくるベルフラットから逃れるように雄太はジリジリとスープ皿を持ったまま後退しようとし、フェルフェトゥがぐいとベルフラットを押しのける。


「やめなさい」

「ずるいわ……」

「するくないわよ。そういえばユータ? 今日はセージュはどうしたの?」

「ん? んー……朝方は鋏丸に乗って遊んでたけどな」


 今は居ない。ガンダインが居ないのはいつもの事だが、最近はセージュもよく何処かに出かけている事が多い。


「ひょっとしてアレかもな。ほら、さっきのエレメンタルアーマー。アレの為の精霊探してるとか」

「ああ……アレは傑作だったわね」


 風の精霊に世界中を探させて2日で武具精霊を見つけるとか言っていたセージュだが、実際にはそうはならなかったのだ。

 それは何故かというと。


「風の精霊に脅えられて逃げられるとか。ふふっ……」

「ちょっと親近感がわく……わ」


 セージュが居れば「ふざけんじゃねえです」とでも言っただろうが、そういうことらしい。

 どういうわけか雄太には分からないのだが、セージュが近づこうとすると気配を察して風の精霊が逃げてしまうらしい。

 まさかその原因が「セージュが先代のシルフィドを始末したから」だとは雄太もコロナも想像できるはずがない。


 先代シルフィドの消滅後、リーンセルトに居た風の精霊達が独自のネットワークで同じ風の精霊に伝えて回ったのだ。

 故に、脅えられたセージュは風の精霊から逃げられてしまっているのだ。

 ……まあ、それに気付いたセージュが風の精霊を追い始めた為、再度脅されて「セージュの役に立つ」だろうことは……まあ、雄太が知らなくてもいいことではある。


「ま、セージュも「もう少しなのです」とか言ってたし……武具精霊とかいうのも見つかるんじゃないのか?」

「かもしれないわね」


 クスクスと笑うフェルフェトゥに雄太もなんとなく笑みで答え、スープを飲む。


「あー、美味い……」

「そう? ありがと」


 言いながら、フェルフェトゥも同じようにスープを飲む。

 こうして食事の場に来ているベルフラットも食事をとることは少ないが、フェルフェトゥは毎回雄太と同じように食事をとる。

 神に食事が必要ない事を考えれば、食事自体に意味があるものではないのだが……フェルフェトゥ自身は、それに意味を感じているようにコロナには見えた。

 そして、恐らくその「意味」は。

 なんとなくそれを悟りつつも、コロナはそれを言葉にはせず……スープと共に飲み込んだ。

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