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ただいま魔具開発中

 魔具。今後のミスリウム村の生活を豊かにしたり、あるいは交易品となる可能性を秘めたそれの開発。

 雄太が行っているそれは、あまり順調とは言い難かった。


「うーむ……」


 外で穴の開いた四角い石のようなものを弄っていた雄太の後ろを、麦のたっぷり詰まった袋を浮かせながら運んでいたエルウッドが通りがかる。

 彼からしてみれば雄太は注視すべき存在ではあるが、悩んでいるからと手を貸す理由もない。

 ない、のだが。麦の袋を地面に置くと、雄太へと話しかける。


「なんだ? 何を唸ってるんだユータ」

「ん? ああ、エルウッドか。コレの開発が上手くいかなくてさ」


 雄太の弄っていた石を見て、エルウッドはフンと鼻を鳴らす。


「風の魔具か。火と水の魔力も感じるな。武器か?」

「いや、武器じゃなくて。こう家の中を暖めたり冷やしたりする魔具を作ろうとしてるんだけどな」


 イメージするのは冷暖房だ。

 完成すれば便利だし、交易品として有難がられる……かもしれない。

 まあ、最大の理由としては雄太がイメージしやすいからだが。


「なるほど。それで何を悩んでる? 魔力を注入したということは、一応完成しているんだろ?」

「それなんだけど……まあ、見てくれ」


 雄太は「離れて」とエルウッドに言うと、自分も冷暖房(仮)から離れる。


「暖房、起動」


 設定したキーワードを雄太が唱えると、冷暖房(仮)の穴から火炎竜巻がゴウ、と吹き上がる。


「んなっ……」

「暖房、停止。冷房、起動」


 続けて雄太が唱えると、消えた火炎竜巻の代わりに今度は氷雪竜巻が穴から吹き上がる。


「冷房停止……まあ、こういうわけなんだよ」

「どういうわけだ。どう作ったら、こんな武器が出来上がる。お前、人間をパン種か何かと勘違いしてるんじゃないのか?」

「別にそういうデンジャラスクッキングしたいわけじゃないって。なーんでこうなるのかなあ」


 首を傾げる雄太に、エルウッドは軽く冷汗を流す。

 とんでもない。

 この村にいる邪神も強力だが、雄太もその邪神達に鍛えられているせいか相当に強い魔力を有している。

 そして、その魔力をほとんど使いこなせていない。

 魔法として使う為の加減を知らないから、こんな虐殺武器が出来上がってしまうのだろう。

 何故邪神達はこんなのを放っておくのか。エルウッドにはそれが理解できない。


「……あー、まず……なんだ。まず籠めた魔力が強すぎだ」

「だよなあ。前にセージュと特訓した時にはこのくらいの力加減で大丈夫そうだったんだけどな」

「お前の魔力は成長期にあるんだろう。きちんと集めた魔力を測定しろ。魔力の多い奴がそこを適当にやると、災害になるぞ」


 エルウッドに言われ、雄太は素直に「そうだな」と頷く。


「その測定のコツって、何かあるのか?」

「勘だ、と言いたいが。そうだな……魔力集めを補助する魔具を作ったらどうだ?」

「なるほど」


 確かに魔法使いといえば杖のようなイメージがある。

 ファンタジーの魔法使いのような長い杖、魔法学校の生徒が使ってる指揮棒みたいな杖。

 色々あるが、確かにそういうのがあれば上手く使えそうだ。


「……ん? でも補助したら、もっと強くなるんじゃないか?」

「上限値を設定すればいい。このくらいまでしか魔力を集めない、という効果だ」

「あー、なるほど。それで感覚を覚えるわけだな」

「そういうことだ」


 何度も頷いていた雄太は、その辺りに積んである世界樹の枝に目を向ける。

 一本は鋏丸達の止まり木として利用している世界樹の枝だが、まだ明確な利用法がほとんど決まっていない。

 決まっていないが……魔法の杖に使うというのは、中々いいアイデアなのではないだろうか?


「まあ、でも……まずは練習だな」


 そう呟いて石の塊を手に取ると、雄太は細工道具で石を杖の形に削り始める。

 指揮棒……つまりはタクト型の杖だが、その手慣れた作業にエルウッドはほう、と感嘆の声を漏らす。


「中々堂に入ってるじゃないか。この村の建物を手掛けたというだけはある」

「こっちに来てから磨き続けた技術だからなあ……と、出来た!」


 雄太の腕かバーンシェル謹製の細工道具のおかげか、もしくはその両方か。

 短い時間で出来たストーンタクトを軽く振ると、雄太は満足気に頷く。


「で、これに上限設定できるような機能を……と」


 魔力を籠めると、雄太は再度ストーンタクトを振ってみる。

 イメージした機能は「魔力を人を怪我させない程度まで集める」といったものだが、要は生活用の魔具を作る為のイメージだ。


「これで……まずは風を集めてっと」


 前方に吹く風をイメージし雄太がストーンタクトを振るうと、「少し強めだが不快ではない」程度の風が吹く。


「お、イイ感じなんじゃないかエルウッド?」

「そうだな。で、強さが解決したところで聞きたいんだが」

「ん?」


 先程の殺人竜巻を発生させる魔具を見ながら、エルウッドは雄太に問いかける。


「……なんで風を竜巻にする必要があったんだ?」

「あー、いや。風が部屋の中で巡るようなイメージにしたら……なんか竜巻になった」

「あんまり複雑な動きはさせない方がいいと思うぞ。難易度が跳ね上がる」

「そうだな」


 普通に風が吹く魔具にしよう。

 そんな事を考えながら雄太は「手伝ってくれてありがとう」と言って。

 エルウッドはそれに「精々感謝しろよ」と返しながら倉庫へと向かっていった。

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