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捨てられおっさんと邪神様の異世界開拓生活~スローライフと村造り、時々ぎっくり腰~  作者: 天野ハザマ


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続アラサークエスト11

 途中で黒姫の希望……たぶん希望したのであろう、あれは……ともかく希望により、黒姫に縄をつけて枝を引っ張り荒野を進む。

 その分身軽になった鋏丸が空を飛び始めたが、ジョニーも対抗しているのか翼を時折バサバサと動かしている。


「あの鳥は何してるですか?」

「さあ。俺も飛べるぞって言ってるんじゃないか?」


 確かニワトリも飛ぶのが下手なだけで実は飛べるみたいな話を聞いた事があるな……などと雄太は思い出しながら、黒姫の背中で頷く。

 まあジョニーでも鋏丸でも、雄太が上に乗って飛ぶというのは中々に難しそうではある。

 確かコロナがワイバーンがどうとか言っていたから、うっかり飛んできたワイバーンが契約を結んでくれるのを期待するくらいだろうか?


「ん? うおっと」


 そんな事を雄太が考えていると、黒姫が急に停止する。


「ひゃー」


 油断して投げ出されたセージュを雄太が掴み黒姫に「どうした?」と声をかける。

「ギイ」

「うん、分からん」


 なんとなく理解できるといってもやっぱり虫語を理解できるわけではない。

 どうしたものかと、そんな事を考えるより早く……雄太達の行く先の地面が僅かに動き始める。


「な、なんだあ?」

「む、なんか居るですよユータ」

「なんかって……うおっ!?」


 地面を突き破り飛び出したのは、巨大なミミズのようなモンスターだ。

 ミミズと違うのは、その頭部に巨大な牙の並んだ口がついていることだが……。

 雄太が慌てて世界樹の剣を抜くより早く、空を飛んでいた鋏丸が急降下して襲い掛かる。


「ギョッ……」

「ギイ!」


 鋏丸は巨大ミミズの胴体を挟み込むと、そのまま穴から引き抜くようにして空へと持ち上げていく。


「うひゃあ、デカいっつーか長いっつーか……」


 自分よりもずっと大きい巨大ミミズを空高く遠くへ攫うと、鋏丸はそのまま巨大ミミズをブチンと真っ二つにして地面に叩き落す。


「うげっ……」


 そんなに硬くないのかちょっとグロい事になった巨大ミミズの元へとジョニーが走っていき、魔石らしいものを嘴に挟んで雄太の元へと持って帰ってくる。

 ちょっとヌメッとしたそれを雄太は布で挟むようにして受け取ると、そのまま鞄の中に突っ込む。


「えーと……ありがとな」

「ギイ」

「コケッ」


 満足そうな二匹に黒姫も「ギイ」と一鳴きして再び進み始めるが……雄太はその背の上で「あー……今のだけど……」とセージュに切り出す。


「今のはジャイアントホードなのです」

「ワームじゃなくてホードなんだな。まあ、ミミズっぽいしな……」

「ワームだと、あれの3倍くらい大きいですけど。基本的に砂漠に出るのです」

「ふーん。じゃあちょっと安心か」

「ホードも此処に出るのは珍しいのですよ? たぶんアレ、わざわざ穴掘って潜んでたのです」


 その結果がアレだとかなり悲しいものがあるが、その辺りは弱肉強食なのだろうか。


「ホードも砂漠なのか?」

「なのです」


 だとすると頑張っていたのにやはり悲しい気もするが、雄太も食われる気はないので仕方ない。


「じゃあ、荒野なら何が出るんだ?」

「サンドマンとかマッドマンとか……ゴーレムとかなのです。ロックドラゴンとかも出るですね」

「え、ドラゴンってモンスターなのか?」

「ロックドラゴンはドラゴンの形してるだけのモンスターなのです」


 ドラゴンは一部除いて魔獣ですよ、と言うセージュに雄太は「ふーん」と頷く。

 

「ちなみに一部ってのは?」

「魔竜です。魔族なのです」

「魔竜かあ……あ、神竜とかも居たりするのか?」

「ケッ、です」


 その反応だと居そうだな……などと思いながら雄太は苦笑する。

 どうやら神と名のつくものは、セージュには禁句なようだ。


「あー……でも魔獣って確か普通の生き物が変化したやつなんだろ? ドラゴンは何から変化するんだ?」

「ドラゴンは生まれながらの魔獣なのです。ちょっと特殊なのです」

「へえ……」


 なんだか魔獣にも色々ありそうだが、いつかドラゴンと会う機会もあるのだろうか。

 ファンタジーオブファンタジーなドラゴンにも折角なら会ってみたいな……などと雄太は妄想を巡らせる。

 もしかしたら、村の一員になってくれるドラゴンもいるかもしれないし、背中にだって乗せてくれるかもしれない。


「ギイ……」

「え? あ、ごめんな」


 なんだか不機嫌な声で黒姫が鳴いて、雄太は思わず謝ってしまう。

 まさか頭の中を読まれたわけではないだろうが……。


「顔にドラゴン乗りたいって書いてあったのです」

「マジかよ」

 

 そんなに分かりやすかっただろうか、などと雄太が自分の顔にペタペタ触れていると、セージュは呆れたように肩をすくめる。


「まあ、ドラゴンは物見高い連中が多いのです。そのうち、うちの村にも来るかもなのですよ」

「へえ。そりゃいいな。会話とか出来るのか?」

「知能が高いですから、共通語くらいは操るです。その分プライドも高いですけど」

「プライドが……」


 なんかめんどくさそうな予感がするぞ、と雄太は思ってしまったが……乗り気でなさそうなセージュの顔を見る限り、あながち外れてもいないような気がした。

 そうこうしている内に、ミスリウム村が見えてくる。

 そんなに日数がたっているわけではないが、なんだか懐かしい村を見て雄太は「おっ」と声をあげて。


「むっ!?」


 セージュが警戒したような、不機嫌そうな……そんな声をあげる。


「セージュ、皆とは仲良くな……?」

「邪神じゃねーのです。この感覚は……」


 なんか宇宙時代の超能力者みたいな事を言うな……などと雄太が思っている間にも、雄太達はミスリウム村に辿り着く。


「お帰りなさい、ユータ。今度はクワガタムシ?」

「ああ。結構パワーあるぞ」

「そうみたいね?」


 迎えに来ていたフェルフェトゥは黒姫の引いていた世界樹の枝へと視線を向ける。

 黒姫から降りた雄太がフェルフェトゥとそんな話をしている間にも、セージュは警戒した風な表情のまま周囲をウロウロと飛ぶ。


「……ところでさ。なんかあったのか?」


 セージュの様子を見ながら雄太がそう問うと、フェルフェトゥは頬に手をあてて笑う。


「ええ、実はそうなのよ」


 表情は楽しそうだが、それが面白がる時の顔だと知っている雄太は嫌な予感が増すが……村の奥から走ってきた青年を見て、まさかと思う。

 緑色のふわっとした短い髪と、同色の丸みを帯びた目。

 顔に浮かべた笑顔は可愛らしく、金糸を使った服は如何にも貴族の青年といった風だ。


「フェルフェトゥ様ー! そちらの人間の男は一体……」

「死ねです!」

「ぐばあっ!?」


 魔力を帯びて回転しながら突っ込んだセージュのキックが青年の顔面に叩き込まれ、青年はバウンドしながら地面を転がっていく。

 続けて放たれた魔力波で天高く舞う青年を眺めながら、雄太は「えーと……」とフェルフェトゥに問いかける。


「アレって……もしかして、だけどさ」

「神樹エルウッドに宿った精霊よ?」


 やっぱりか、と。

 頭痛を抑えるように雄太は頭を抱えた。

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