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捨てられおっさんと邪神様の異世界開拓生活~スローライフと村造り、時々ぎっくり腰~  作者: 天野ハザマ


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続アラサークエスト7

「ふう、今日はこのくらいまで……か?」


 辺りがすっかり暗くなった事を確認して、雄太がそう宣言する。

 テイルウェイが発光しているので視界については問題ないのだが、それでも見通しが非常に悪いのは事実だ。


「あ、そうかい?」

「ああ。けど便利だな、それ……」

「ハハッ、これでも一応光神の仲間だからね。このくらいは出来るよ」


 そんな事を言うテイルウェイだが、暗い夜道ではこれ程安心できるものもないだろう。


「明かり、か。村でも何かそういうの作ろうかな……」


 ミスリウム村では夜に出歩くという習慣が無いので夜は基本的に真っ暗だし、家の中では必要とあればロウソクに火が灯る。

 しかし、魔具でそういう灯りがあってもいいはずだ。


「魔法の明かりか。必要なのかい?」

「うーん。あったら便利かなって程度かな」


 座った雄太に倣ってテイルウェイも腰をおろし……ジョニーも雄太の近くに座り込む。

 そしてセージュはジョニーの上にポフンと寝転がる。


「私としては、明かりの魔具なんてあまり推奨しないのですよ。暗い時にはそれを見通す目を持たない者は動かない。生き物の自然な姿なのです」

「精霊はそう言うだろうね。けどまあ、人間はそういうのを制したがる生き物だからなあ」

「分かった風な事言ってんじゃねーです」


 シャー、とセージュがテイルウェイを威嚇するが、テイルウェイは軽く肩をすくめただけだ。


「でも事実だろ? 人間は本当は、夜を消してしまいたいのさ。見通せない事があるのが我慢ならないんだろうね」

「ユータはそんな不遜な人間じゃないのです」


 言われて雄太は、思わず頬を掻く。地球で科学の恩恵に授かっていた人間としては、ちょっと色々思うところがあったのだ。

 眠らない町とか、そういう言葉があったくらいに都会は夜でも明るかった。

 昼も夜も関係はない。そんな風に叫んでいるかのような生き方を雄太自身もしていたが……。


「まあ、でもあれだよな。今後村も人が増えたら防犯の問題もあるし……そういう時に暗い場所っていう死角を無くす手段は必要になってくると思うぞ」


 一日も居なかったが、あの王都だって昼も夜も関係なく兵士が巡回しているはずだ。

 ミスリウム村でもそこまでいかずとも、何かあった時に暗いから何もできないというのではどうしようもない。

 何かしらの明かりを確保する手段は必要になってくる。


「むう……それを言われると弱いのです。光の精霊か闇の精霊がいれば、そんな心配も無くなるですが」

「そうなのか?」

「そうなのです。連中は光と闇を司るですから、ユータが精霊術を使えるようになればユータの望むようになると思うのですよ?」

「精霊術ねえ……」


 言いながら、雄太は荷物からパンと水袋を取り出す。

 流石に森の中で火は使えないが、このくらいなら何もせずとも食べられる。


「ほい、ジョニー」

「コケッ」


 ジョニーにパンを向ければジョニーは一口でそれを咀嚼して呑み込み、満足そうな声をあげる。


「テイルウェイもどうだ?」

「遠慮しとくよ。僕はそういうの食べなくても平気だしね」

「そっか、神だもんな」


 バーンシェルも食事はいらないと鍛冶場に籠っている事は多いしベルフラットも気の向いた時にしか食事はしないが、フェルフェトゥは毎回律儀に雄太やコロナと一緒に食事を摂っている。

 その辺りは神ごとの違いなのかもしれない……などと思いながら雄太はパンを齧る。


「神、か……」

「ん?」

「ああ、いや。俺の居た場所ではさ、八百万の神とかいって「あらゆるものに神は宿る」みたいな話があったんだけど……こっちでもやっぱりそうなのかなってさ」

「間違ってはいないと思うよ? あらゆるものに宿ってるかはともかくね」


 テイルウェイはそう言うと、指を一本立ててみせる。


「たとえば、僕達はこうして今話をしているけど。こういう会話とか、あるいは噂とか。そういうのを司ってる神も何人かいるしね」

「そういや前に不信を司ってる神ってのに会ったな……」

「アルシェントか。そうか、近くに来てるなと感じたこともあったけど……ユータと会ってたんだね」

「バーンシェルにぶっ飛ばされたけどな。生きてんのかアレ?」

「そのくらいじゃ死なないさ」


 姿無き風のアルシェント。

 悪神だという彼の事を思い出しながら、雄太は苦笑する。

 生きているというのであればまたいつか来るのかもしれないが……。


「それに光神だってたくさん居る。さっきユータは光る僕を便利って言ってたけど、そういう感じのものを司る光神だって居るからね」

「へえ、そうなのか?」

「ああ。僕が知ってるだけでも、そうだね……「導きの光のレヴィア」とか「惑わしの光のベヴィルド」とか、かな?」


 惑わしの光って方はなんか悪神っぽいな……と思いながら雄太は頷く。

 ひょっとすると両方邪神なのかもしれないが、まあ今のところ関りの無い神ではある。


「勿論「闇の神」みたいな有名どころでなくても、夜や闇を司る神もたくさんいる。そういう神に出会ったなら、協力を要請するのも手かもしれないね?」

「これ以上邪神共が増えたらたまらねーのです」

「ていうか、やっぱりいるんだな。そのまま闇の神みたいなの……」

「善神だよ、一応ね」


 とすると他にも光の神とかそういう「如何にも」なのがいるんだろうなあ……と思いながらも雄太は食事を終える。

 確かフェルフェトゥは善神や悪神は分かりやすい権能だと言っていたから、なるほど確かに分かりやすいと。

 そんなどうでもいい事を、雄太は考えるのだった。

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