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続アラサークエスト5

「ふー……」


 雄太は筋トレマニアのシャベルを地面に突き刺し、油断なく巨大ムカデを見つめる。

 短棒……いや、世界樹の剣の緑の刃は強く輝いていて、セージュはそれを見ながら満足そうに頷く。


「もう倒したのですよ。お疲れ様なのです」

「え? あ、ああ」


 言われて雄太は世界樹の剣を見つめ……「どうすりゃ戻るんだコレ」と呟く。


「戻れ、と言えばいいのですよ」

「そっか……戻れ!」


 雄太の声に反応するように世界樹の剣は元の短棒へと戻り、テイルウェイは興味深そうに雄太の手元を見つめてくる。


「面白いものを持ってるね。世界樹で作ってるのかい?」

「私があげた世界樹の剣です。なんだかんだ言って、私が一番ユータの役に立つってことですね!」

「はは、そうかもね」

「お前、邪神にしては分かってるですね!」


 えへん、と胸を張るセージュにテイルウェイは適当に頷きながら雄太の手元の世界樹の剣を見回す。


「ふむ、ふむふむふむ。これは面白いな、こういう発想は初めて見る」

「そうなのか? こういう光の剣的なのはテイルウェイも得意かと思ったけど」


 言いながら雄太が想像するのは宇宙の装甲刑事とか凄い力で戦う宇宙の戦士とかだ。

 あのブオン、という音に誰でも一度なら憧れるはずだ。


「うーん、纏わせる技なら一般的だけど。それで刃まで作っちゃうのは聞いたことないかな。僕は「放つ」方が得意だしね」

「ああ……」


 なんとなく納得してしまい雄太は頷くが、ふと気になっってセージュへと視線を向ける。


「そういえば、いいのか?」

「何がです?」

「これって「世界樹の守護者」とかいうやつなんだろう? 殺しちゃったけど」


 確かコロナがそう呼んでいたな……と思い出しながら雄太が聞けば、セージュは首を傾げてしまう。


「世界樹の? 守護者? このムカデがですか?」

「え? コロナがそんな事言ってたけど」

「別に世界樹に守護者なんていないのですよ。この虫は勝手に成長してるだけなのです」


 世界樹の守護者というのは、エルフがそう呼んでいるというだけの勝手な呼び名だ。

 世界樹の森に棲んでいる魔獣達が攻撃してくるのは「縄張りを守っている」だけであって、決して世界樹を守っているというわけではないのだとセージュは説明する。


「そうなのか……なんかこう、自分を成長させてくれた世界樹に恩義的なものがあるのかと」

「そんなもんないのです。とはいえ、世界樹のおかげくらいは認識してるでしょうから、中々離れないのです」


 まあ、あんな巨大生物にあまりウロウロされても困るだろうと雄太は思うのだが……とにかく、そういうことなら問題はないだろう。


「まあ、とにかく先に進むか。世界樹はまだ先っぽいしな」

「ですね。あまりぼーっとしてると気の荒いのが寄ってくるのですよ」

「うげっ……」


 言いながら雄太はムカデの死体を乗り越え、先に進んでいく。

 途中で幾つか普通の木の枝も見つけるが、帰りに幾つか拾おうかと思いながらも進む。

 世界樹の枝を拾う前にそういうものを拾うと、セージュに怒られそうだと思ったからだ。


「そういえばさ」


 手近にある巨木に手をつきながら、雄太はふと思ったことを口にする。


「此処の木って、セージュの……っていうか世界樹の影響で巨大化してるんだよな?」

「そですよ?」

「てことはさ……ミスリウム村の木とか作物とかも巨大化したりするのか……?」


 そう、ミスリウム村には神樹エルウッドがある。

 中々立派な木に育っているエルウッドだが、あれもこの森の木のように巨大化するというなら、もう少し家から離れた場所に移し替えないと、と考えたのだ。


「しないですよ」


 しかし、セージュはアッサリとそう答える。


「作物はベルフラットが調整してるですし、そもそもあそこに植えてる世界樹の苗木から出る力は私が抑え込んでるのです。何処にも影響は出ないのですよ?」

「あー、そうなのか……」


 そう答え、歩いて。雄太はふとした思い付きを、冗談交じりで言ってみる。


「そういえばあの神樹にも、何か精霊が宿ったりしてな?」

「ケッ、なのです」

「え……何その反応」


 てっきり「そうですねー」とか「仲間が増えるです」とかいう反応が来るだろうと期待していた雄太は、予想外の反応に顔をヒクつかせる。


「神樹みたいなのに宿る精霊なんてロクなもんじゃないのです」

「え、ええ……? 精霊仲間だろ?」

「ぷいっ、です!」


 顔を膨らませてそっぽを向くセージュに、雄太は困ったようにテイルウェイに顔を向けるが……こちらは「あちゃー」とでも言いたげな様子だ。


「ユータ。精霊が神と相性悪いのは知ってるよね?」

「え? まあ」


 実際仲が悪いのも知っているが、それが神樹と何の関係があるというのだろうか?


「神樹っていうのは、何処かの神が人間に分かりやすく自分の恩恵を示す為に作ったのが始まりでね。勿論、それは最初の一、二本の話なんだけど……そういう意味で、精霊は木を好いても神樹は好かないみたいなんだ」

「あー、そうなのか……えっと、ごめんなセージュ」

「ふんだ。ユータだから今回は特別に許してあげるのです」


 まだちょっとだけ怒っている風にセージュは雄太の頭に乗ってペシペシと叩いてくるが……しかしそうなると、その神樹より凄そうな世界樹は一体何なのか。

 そんな事を考えながら、雄太達は世界樹の森を進む。

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