続アラサークエスト4
テイルウェイを冒険仲間に加えた雄太達は、世界樹の森の中を進んでいく。
雄太もジョニーから降り、雄太を先頭、その頭の上にセージュ。
後ろをテイルウェイ、そして最後尾をジョニーが歩いている。
これは一応雄太がリーダーだからだが、任された雄太は筋トレマニアのシャベルを構えて辺りを注意深く見回しながら進む。
そんな風に緊張する雄太と比べ、テイルウェイは気楽そうにニコニコと笑っている。
「いやあ、しかしユータはしばらく会わない間に強くなったねえ」
「え、そうか?」
「うん。前来た時には少し頼りなさそうだったけど、別人みたいだ」
そう言われると、雄太としても悪い気はしない。
雄太自身、地球に居た頃と比べてもずっと逞しくなった自覚はあるのだ。
まあ、筋肉お化けみたいなガンダインが近くに居るので、いまいち目立たないのだが……。
「そりゃ俺も毎日頑張ってるしな。テイルウェイは最近どうだったんだ?」
「僕かい? 何も変わらないさ。ヴァルヘイムを適当に彷徨って過ごす。それだけだよ」
「……」
それは、なんと孤独だろうと雄太は思う。
テイルウェイの権能を考えれば、人里に近づきたがらないのは理解できる。
神には頼らない……などといったところで、雄太も結局はフェルフェトゥ達に頼ってしまっている部分はある。
しかしテイルウェイはその権能により、頼れば破滅に繋がる。
それは「人に崇められ頼られる神」という形に対する一つの矛盾であり、孤独の要因でもあった。
……と、そこまで考えて雄太はガンダインの事を思い出す。
あの風の邪神には助けられた事はあっても、今のところ頼った事はない。
まあ、そもそも村にもほとんど居ないのだが……。
「なあ、テイルウェイ」
「ん? なんだい?」
「神とかそういうの抜きにしてさ。住人として俺の村に来てみる気はないか?」
「ちょ、ユータ……」
セージュがギョッとした顔をするが、雄太は本気だった。
そんな雄太をテイルウェイはじっと見て……やがて、困ったような顔になる。
「その気持ちは嬉しいよ、ユータ。でも駄目だ」
「何かする必要はないんだぞ? それなら権能も」
「うん、でも駄目だ。僕は君を気に入ってるからね、きっと手を貸したくなる」
そうすれば、そこから関係が変わってしまうかもしれない。
雄太が村の発展に関しテイルウェイに何かを頼った時点で、破滅の可能性が目覚める。
それは、テイルウェイの望むところではなかった。
「時々、こうして「旅」に誘ってくれるだけで僕は満足だ」
「でも、それは……」
「ほら、ユータ。そんな事より前」
「うおっ!?」
木にぶつかりそうになった雄太は慌てて止まり、アハハとテイルウェイは笑う。
「ほらほら、気を散らしてないで頑張ってよ、リーダー。パクッと食べられても知らないぞ?」
「うぐ……」
言いながら雄太は、目の前を通り過ぎていく巨大なテントウムシを見送る。
雄太の頭ほどもあるテントウムシは雄太達を気にせず木の間を抜けるように飛んでいき、そのまま見えなくなる。
「そういえば、前はこの森でジョニー達に会ったんだよな」
「コケッ」
後ろの方でジョニーが鳴くが、ジョニー達との出会いも偶然ではあった。
「セージュ、世界樹まではこっちの方向でいいんだよな?」
「問題ないですよ。ズレたら言うから大丈夫なのです」
気を取り直した雄太は再び前を向いて歩きだし……シュー、という空気の抜けるような音を聞いて立ち止まる。
「なんだ……?」
「上です!」
セージュの叫びに雄太が上を向くと、そこには大口を開けて木の上から降りてくる大蜘蛛の姿。
明らかに敵対的なその姿に、雄太は筋トレマニアのシャベルを構え……次の瞬間、放たれた光線が大蜘蛛を丸ごと消し去ってしまう。
超威力の光線はそのまま何本かの木をも巻き込み消滅するが……それに驚いたのか、怪鳥としか呼べないような鳥が奇声をあげながら飛び立っていく。
「大丈夫かい? ユータ」
「テ、テイルウェイ……ありがとう」
「どういたしまして」
オーバーキルという言葉が可愛いくらいに超威力の光線の爪痕を雄太は眺める。
此処だけ見晴らしのよい感じになってしまったが、まあ……やがて元通りになるのだろう。
「しかし、凄いな……前に見た時も凄かったけど」
「そんなことはないさ。手品みたいなものだよ」
手品。テイルウェイの能力を考えるに今のはアトミックなパワーのレーザーだから手品というには少々ゴツすぎる気がしないでもないのだが、雄太は愛想笑いで返す。
「ま、とにかく先に進もう。今の蜘蛛みたいのがいないとも限らない、し……」
「ギチチ」
雄太の行く手を塞ぐように現れた巨大ムカデの頭が雄太を見つけ、複眼でジロリと雄太を睨む。
「あー……悪いけど、そこ通っていいか?」
一応そう話しかけてみると、巨大ムカデは凄まじい速度で身体を動かし雄太へと牙を向ける。
「ぬ、このお!」
巨大ムカデの牙をシャベルで弾き、しかしそれでも巨大ムカデは雄太に纏わりつくようにその牙を向けてくる。
「ユータ、その位置からじゃ撃てない! もう少しなんとかならないかい!?」
「んなこと言っても……!」
「ユータ、これ使うです!」
雄太の腰から引き抜いた短棒をセージュは雄太の手に素早く握らせる。
それが何かに気付いた雄太は、シャベルを片手に……そして短棒をもう一方の手に持つ。
「刃よ!」
叫ぶと同時に、緑色の刃が短棒から伸びる。
「このおおおお!」
ヤケクソ気味に振った刃はアッサリと巨大ムカデを切り裂き……巨大ムカデの巨体は、ズシンと大きな音を立てながら地面へと倒れた。




