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続アラサークエスト

「よ……っと。これで大丈夫か?」

「コケッ」


 ジョニーに確認しながら、雄太は荷物を括りつけていく。

 世界樹の森への旅はジョニーがいれば快適だが、それで荷物が要らないというわけでもない。

 食料品などを詰め込んだ荷物を用意し旅準備を整えている雄太を、コロナが見送りに来ていた。


「世界樹の森か……私も一度行ってみたいとは思うが、目的のお方が此処にいらっしゃる以上は行く意味もな……」

「心意気だけは貰ってやるのですよ」


 雄太の頭の上でセージュが胸を張る。

 他のメンバーにはスルーされるソレも、コロナには覿面だ。


「はい、感謝します。精霊様の留守は、しっかりと守らせて頂きます」

「うむうむ、その調子で励むと良いのですよ」


 セージュ曰く、こうやって交流する事で波長が合う事もあるらしく……精霊信仰の強いエルフの一員であるコロナも、僅かではあるが今までよりもセージュを感じ取れるようになってきているらしい。

 まあ、それがフェルフェトゥやベルフラットの力を受けた食事の継続的な摂取による変化が影響している可能性も捨てきれないのだが……それはさておき。


「ユータ殿も気をつけろ。道行きはともかく、世界樹の森の守護者達は荒々しい者も多いと聞く」

「まあ、そこまで深入りするつもりもないから平気だろ」

「何言ってるですか? 世界樹の根元まで行くですよ?」

「え?」


 セージュに頭をぺしっと叩かれた雄太が、セージュを見上げるように視線を上へと向ける。


「釣り竿作るとか言ってたですけど、木材として世界樹以上の素材があると思うですか?」

「え、いや。ていうか……いいのか?」


 世界樹の精霊が世界樹を木材にしろとか言っていいのだろうかと雄太は思うのだが、どうやら精霊的な常識は違うらしい。


「そりゃ枝を落とせとは言わないですけど。根本までいけば落ちてる枝は結構あるですよ? ユータは常々木材欲しいとか言ってたから丁度いいのです」

「言ったけどさ……」


 なんだかんだで石材で代用できているので、今あえて木材で作るとなると食器しか思いつかない。

 箸を作ったりしたら、流石にセージュも怒るだろうか?


「あんまり持ち帰っても腐らせちゃうかもだし……」

「私が「そうなれ」と思わない限りならないですよ?」

「それはそれで怖いな……」


 ベルフラットの作物もそうだが、防腐剤が添加されているわけでもないのに悪くならないのは魔力がその代わりだからなのだろうか。

 深く考えると怖い事になりそうなので、雄太はそれを頭から振り払う。


「まあ、中に入ってからもそうだけど……途中も気をつけなきゃ駄目よ?」


 そんな事を言うフェルフェトゥに、雄太は疑問符を浮かべる。


「気を付けるって……途中にはテイルウェイくらいしか居ないだろ?」


 確かにテイルウェイは危険な力を持つ邪神かもしれないが、気を付けるという程でもない。

 というよりも、人格的には誰よりも問題ない気がする。

 そんな事を雄太が考えているのを何となく察したか、フェルフェトゥが近寄ってきて雄太をニコリと笑顔で見上げる。


「ユータ? 今何考えてたか教えてもらえるかしら?」

「え? いや。な、何も?」

「そう? ならいいけど? ともかくね、そろそろこの辺りの状況にも変化が起こる頃よ」

「変化……?」


 それは町の方から誰かが来るということだろうかと一瞬考えるも、ミスリウム村と世界樹の森の間の道程の話だから違うだろうと雄太は思い直す。


「変化って、なんだ?」

「そうね……貴方は分かるかしら?」


 フェルフェトゥに話を振られたコロナは、少し迷うような様子を見せるが……やがて「モンスターか?」と自信なさげに呟く。


「それまでモンスターの居なかった地が、栄え始めたのと同時期にモンスターの出現報告が出始めた……という話がある。人が増える事で何らかの影響を与えたのが原因だと言われていたが……」

「そう、モンスターよ。基本的には人の住む場所にモンスターは湧き出る。この村が出来てからそれなりに日数もたってきたし、人類の住人も二人になったわ。そろそろ何かが出てきてもいい頃ね?」


 フェルフェトゥの言葉にコロナは納得したように頷くが、雄太は訳が分からない。

 人がいるとモンスターが湧き出る。

 まるでモンスターが自然現象か何かのような言い様だが……。


「……どういう意味だ? モンスターって生き物だろ?」

「そうだとも言えるけど、そうではないとも言えるわね」


 禅問答のような答えを返してくるフェルフェトゥに、雄太は「んん?」と首を傾げる。

 生き物だけど生き物ではない。そんなものがいるのだろうか?


「モンスターは「現象」に近いわ。世界の魔力の淀みから生まれ出るとか言われてはいるけど、要はその地に起因する半魔力生物ね。基本的に人類に敵対的だから、見つけたら殺して構わないわ」

「むむ……」


 そう言われても、雄太は自分に出来るだろうかと少し不安になる。

 ……が、やるしかないのだろう。


「そういえば前に魔王とか魔族がどうとか言ってたけど……アレもそうなのか?」

「基本的には同類ね。ま、アレは人のいる所に沸くことは稀だけど。また今度機会があれば説明してあげるわ?」


 行ってらっしゃい、と。フェルフェトゥはそう言ってひらひらと手を振った。

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