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捨てられおっさんと邪神様の異世界開拓生活~スローライフと村造り、時々ぎっくり腰~  作者: 天野ハザマ


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魔具に必要なものとは

 そして、夜。

 夕飯の魚をつついていた雄太が今日の魔具作成の事を報告すると、バーンシェルは「あー」と頷く。


「ま、最低でもミスリルだな」

「ミスリル……って、希少な金属だったよな?」

「おう。お前の言ってるエアコン、だったか? そいつの機能はつまり「暖かい風と冷たい風を好きな時に切り替え、また自由に停止できる」っていう機能なわけだろう?」

「んー、まあな」

「意外と多機能だぞ、そりゃ」


 冷たい風を出す。

 冷たい風を止める。

 暖かい風を出す。

 暖かい風を止める。

 冷たい風と暖かい風を切り替える。


「風の切り替えについては、一端止めてから別の風を出すってことにしてもいいが、それでも機能は4つ。つまり魔法式も4つだ」


 たとえば水差しの魔具は「水を一定量出す」「魔力を抜く」の二つで構成されているが、これでも作る為に銀を材料として使用している。


「勿論銀を使ってもいいけどよ。結構デカくなるし、何より目的に沿うとは思えねえ」

「目的……」

「冷やしたり暖めたりするんだろう? それ相応のパワーが出ないとダメだろうよ。銀っつーのは意外に溜め込める魔力総量が低いぞ」

「そうなのか」

「ああ」


 なるほど、つまり雄太の思う魔具を作るにはミスリルで作らなければいけないということだろうが……。


「でも、総ミスリル製なんて、物凄い額になるんじゃないか?」

「なるだろうな」

「なるだろうなって」


 それでは売り物にならない。何か考えなければならないと思う雄太だったが……。


「あら、別に総ミスリル製にする必要もないでしょう? 要は魔法式を書き込む部分だけがミスリルであればいいんだわ。形に拘るなら、外装を別のもので作ればいいでしょう?」

「別のものってな、お前……魔具ってのはそんな単純なものじゃねえだろ」


 アッサリとそれを解決するかに思えたフェルフェトゥの意見。

 しかしバーンシェルはそれを即座に否定する。


「いいか、たとえば水差しの魔具でコアを銀で作って水差し部分を陶器で作ったとするぞ? そのコアは内部に配置しねえと水が妙なところから出るようになる。コアを調整すれば外装部分の設置でも上手くいくだろうが、その分めんどくせえ……」


 そこまで言いかけてバーンシェルは「あ、いや」と呟く。


「めんどくさくても、作るのはアタシじゃねえし関係ねえか。好きにすりゃいいんじゃねえか?」

「おいおい……」


 雄太は苦笑しながらも、エアコンの場合で考えてみる。

 エアコンの場合は風が出ればいいのであって、外装で調整しても然程問題は発生しない……というよりも。


「そっか。外装部分で風の向きを調整できるような機能をつけられれば、更にいい感じになるんじゃないか?」


 元々エアコンとはそういうものだったように思う。

 風を出し、更には羽根とか呼ばれる部分が動き送風方向を調整する。

 そういう機械がエアコンであったはずだ。


「よく分かんねえけど、何思いついたんだ?」

「ああ、つまり「風向き調整の箱」と「風を出すコア」の組み合わせで作ればいいんじゃないかなってさ」

「風向き調整ねえ……」


 言いながらバーンシェルは頭の中でソレについて考える。

 雄太は簡単に風向き調整などというが、つまり風が出ている時にだけ動くということであるし、そもそも内部と外部の両方に魔力が満たされていないと片方だけが動くということになってしまう。

 つまり、機能面でも魔力面でも連動していなければ意味がない。


 正直に言って面倒臭い。

 自分がやるのであれば絶対にやりたくないが……どうせ魔法式を作るのは雄太だ。

 好きにやらせてみてもいいだろうと考え、バーンシェルは笑う。


「いいんじゃねえか? やってみろよ」

「そうか? じゃあ外装のデザインはいつ伝えればいいかな。これからか!?」

「は? おいおい、今からやる気かよ」

「そりゃそうだろ。鉄は熱いうちに打てって言葉があってだな!」


 夕飯の残りを掻き込むと「ごちそうさま! 今夜も美味かった!」と手を合わせ雄太はバーンシェルの手を引き立ち上がる。


「いやいや、別に明日でもいいだろ」

「悪い。俺、明日の俺に頼るのはやめたんだ!」

「ワケわかんね……おい、転ぶ転ぶ!」


 バーンシェルの手を引き鍛冶場へと走っていく雄太を呆気にとられた顔で眺め、コロナはフェルフェトゥ達へと振り向く。


「その、なんだ。物凄いやる気だな?」

「……元気、よね」

「男の子だから。何か作るのが好きなのよ」


 ベルフラットとフェルフェトゥはそんな事を言うが、セージュは不満げだ。


「もう、ユータってば! そもそも魔具作成の師匠は私なのです!」

「ああ、そういえばユータが魔力見えるようになってたわね? 礼を言うわ」

「え」


 いつの間にそんな事に、とコロナはセージュを見るが、セージュはガン無視である。


「別にてめーの為じゃねーのです。ユータはそのうち、立派な精霊術士にしてあげるのです」

「それでも構わないわよ。ユータの財産になるもの」

「ケッ、本妻気取りも今のうちなのです」


 シュッ、シュッと拳を突き出すセージュと相手にしていない風のフェルフェトゥを見ながら、コロナは遠い目をする。

 よく分らんが大変そうだ。頑張れユータ殿、と。

 そんな事を考えながら。

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