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エルフの少女は死んだ。針だらけの椅子に座らされ弱ったところに、焼きごてを当てられていた。最期は電流を頭に流されていた。
黒髪の少女は死んだ。手足を万力で締め上げられていた。そのまま、全身を引き伸ばされ、最期には内臓を全部ぶちまけた。
紫髪の少女は死んだ。手足を切り取られ、芋虫のようにされた。そのまま腹を切り裂かれ、最期には生きたまま内臓を食べられていた。
ヴァンパイアの少女は死んだ。紫髪の少女の内臓を食べさせられて、黒髪の少女の内臓も食べさせられた。最期はナイフで首を切り取られた。
「残すところもあと1つ。名残惜しいですが、今回はこれが最後です」
司会の男は狂ったような大きな声で叫んでいた。
最後。
残されているのは私一人。
舞台の上にあるのは大きな鉄板。下から炙られ、煙を上げている鉄板。
「最後はこの鉄板の上でダンスを踊ってもらいましょう!」
私に鉄のハイヒールが履かされた。
終わりの時が、始まりの時が、刻一刻と近付く。
そのはずだった。
ぱきっ。
それは一瞬だった。
小さな音が私を揺らした。拘束がぽとりと地に落ちる。私も地に落ちた。
私は逃げだした。鉄板とは逆の方向。舞台袖に。
だが、男たちは私を捕らえた。
私は暴れた。暴れ、暴れ、暴れ、暴れ続けた。
私は死にたくなかった。
私は生きていたかった。
私がもがいていると、一人の男がバランスを崩した。腕が鉄板の上に乗る。じゅう、という音がした。男を焼く音がした。
男の叫び声が会場を包む。
他の男たちはそれに恐怖したのか、私から手を緩めた。
このとき、私は逃げ出すべきだった。そのはずだ。
しかし、私はそうしなかった。
エルフの少女が、黒髪の少女が、紫髪の少女が、ヴァンパイアの少女がこの男たちに殺された。そして、その一人が焼けようとしている。鉄板から、手を引き離そうともがいている。
ならば――――。
悪魔のような考えが頭を占めた。私はそれを実行に移す。
私は男の頭を掴んだ。そしてそれを鉄板の上に押し付けた。じとっとした気持ち悪い汗が背中を這う。異臭が私の鼻を突く。
更なる絶叫が響き渡る。
私は絶叫を抑え込むように、強く頭を押さえつける。絶叫は次第に弱くなる。それでも私は力を弱めない。黒煙が私を通り抜ける。
絶叫が途絶えた。静寂が訪れる。私は仮面たちの方を見た。誰も動かない。
だがその1人が狂ったように拍手した。
拍手。
拍手。拍手。
拍手。拍手。拍手。拍手。
拍手。拍手。拍手。拍手。拍手。拍手。拍手。
拍手。拍手。拍手。拍手。拍手。拍手。拍手。拍手。拍手。拍手。
私は仮面たちの喝采を浴びた。それでもなお男の頭を焦がし続けた。死肉と煙の臭いが私の頭を狂わせていた。
「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは――――――」
喝采が更に大きくなっていく。
いつまでも、狂気がやむことはなかった。