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私たち5人の“商品”は、今度は舞台の上に並べられた。仮面が座席にずらっと並ぶ。無表情が私たちを見つめていた。
“商品”は飾られていた。上質なドレスに着替えさせられ、壁に拘束されていた。動くことはできない。エルフの少女がすごい形相でもがいていたが、それは無駄だった。カチャカチャと煩わしい音が静寂の中に広がる。
「離せ! 離せったら!」
全員、口枷は外されていた。だから、喋ることはできた。だが、エルフの少女以外、誰も言葉を発しない。
「レディースアンドジェントルマン」
司会らしき男が大きな声で呼びかける。仮面たちに少しの緊張が走るのが見えた。
「今宵のショーにようこそおいでくださいました」
男が喋るのに被せるようにエルフは叫び続ける。しかし、男はそれを気にせずに進行していく。男は私5人を雑に説明した。
「さて、皆さん、お待ちかね。ショータイムの始まりです!」
司会の男がそう言うと、4人がかりで大きな椅子を持ってこられた。しかし、それを椅子というには、あまりにも恐ろしい形状だった。
背もたれ、ひじ掛け、台座、全てに鋭利な突起が取り付けられている。それは隙間なく並び、赤茶色のシミがこびり付いていた。
「さて、最初の犠牲者はこちら!」
陽気な司会の男の指先がエルフの少女を指す。エルフの少女が照らされた。少女の顔から血の気が引いていく。男たちがその少女の拘束を解いた。一瞬の隙をついて逃げようとする少女。捕らえられる少女。
「やめろ! 何でもするから!」
男たちは少女の必死の懇願を意に介さない。慣れた手つきで、針付きの椅子の前に少女を立たせた。
「座らせろ」
無慈悲な言葉が少女を貫く。暴れる少女を押さえつけ、男は少女を椅子に座らせる。針が少女の肉体を貫く。血が滴り落ちる。
「うあああぁぁぁぁぁぁ!!!」
絶叫が空間を包む。悲痛な叫びが響く。少女の足元に血の海が広がった。
それとは裏腹に、男たちは着々とエルフの少女を椅子に固定する。
再びの絶叫。
仮面たちが笑っていた。座席から拍手が溢れ出す。
少女の絶叫と仮面たちの拍手。それが繰り返される異様な舞台。それが私の目の前にある。
私は目をそらした。
それと同時に隣から別の絶叫が聞こえた。
隣で拘束されている黒髪の少女が叫んでいた。その叫びはあの日に聞いたものに似ていた。目の前の絶望から逃げるための声。全てから逃げるための声。
拍手はそれをも掻き消した。