エピローグ
ウルスラ王宮の裏庭に……ぽっかりと穴が開く。
姿を現したソータは……ゆっくりと辺りを見回した。
「はあ……ここか。まぁ、人目につかない方がいいしな」
そして何気なくズボンのポケットに手を突っ込み
「やべっ……黙って持ってきちまった」
と呟いて何かを取り出した。
ケーゴと幼いトーマが一緒に写っている写真だった。
二人ともいい笑顔をしていたから……ついつい剥がしてきたのだ。
「ま……いいか」
元の通りに……大事そうに仕舞うと、ソータはゆっくりと歩き始めた。
四年後……水那に会うために、今を一生懸命に生きよう……と思いながら。
「あ……これ……父さんのアルバムだ」
遺品の整理を続けていたトーマは、隠すように仕舞われた古いアルバムを広げた。
一緒にいたユズルが「僕も見ていい?」と聞いて横から覗き込んだ。
「……母さん……写ってるかな」
「小5の少しの間しか一緒にいなかったって話だけど……」
めくっていくと……桜の季節に撮ったらしい、クラス写真が見つかった。
「比企水那」という名前を見つけ、探してみる。色白で少し茶色い髪の少女が俯きがちに写っていた。
「……小さすぎてよくわからん」
「そうだね。……会った時の、お楽しみだね」
さらにパラパラとめくる。学年が上がるにつれて……だんだん冷めたような目の写真が多くなる。
それは……実際に会ったソータとは全然違う印象のものばかりだった。
「やっぱり……ソータさんって、あっちの世界にいるべき人なんだね……」
「……そうだな。じいちゃんも……繰り返しそう言ってたから……」
写真は19歳の7月で終わっていた。
アルバムを閉じると、トーマは少し背伸びをして、縁側から外の景色を眺めた。
今度、会うときまでに……自分もどうするべきかを決めないとな……と考えながら。
※改稿前、連載終了時のあとがきです。
N「最初のとこ、目線固定より時系列の方がいい。ややこしい」
N「各国の女王が薄い。トップとしての立場をはっきりさせた方がいい」
……などの指摘を受け、直したのが本作です。
N「……お父さんは水那に会えないんだ」
優「うーん……まぁ、そう」
N「……」
優「今後のこと考えると仕方ないんだもん」
N「……で、次でいよいよ終わりか」
優「いや? 終わらんよ」
N「……はあ? だってやっと……」
優「四年待たないと、って話だったやん?」
N「……あー……」
優「だから、その間の……ソータ以外の人たちの話」
N「……以外?」
優「ソータは地味に東の大地を調査してるだけなんで、完全に脇役」
N「あ……そ……」
……という訳で、“ソータが調査をしながら待つ四年間の話”「まくあいのこと。」です。
※改稿後のあとがき
「目線固定より時系列」……これは、「聞くために」「話すために」の部分なんですけど、やっぱり視点が変わるとわかりづらいようなんですね。
今回の改稿で、1話辺りの分量を減らした結果、「視点固定かつ時系列」にすることができました。
内容は変わっていませんが、構成が大幅に変わった部分ですね。
後は、「還るために」の最初でしょうか。
「朝日が実は……」の部分と、鞘を捜索するソータ達の部分ですが、これもわかりづらかったので、時間を入れてみました。
少しは読みやすくなっているとよいのですが……。
読んで頂いた方、本当にありがとうございました。




