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41.還るために(1)-朝日の過去と二人の現在-

【昨日午後・T県にて】


 ――夜斗、後でそっちに行くから……力を分けてほしいの。

 ――そう。どうしても……間に合わせないといけないの。

 ――わかった。ありがとう、夜斗。


「……ユウに代わってくれる?」

「あ、ユウ? 明日の夕方……ヘリを迎えに寄こすわ。それまでに……お願い」

「そう……多分、そこが限界だと思う。ごめんね。無茶……させるかもしれない、けど」

「うん。――祈ってる」


     ◆


【午前6時・ソータとユウ】


「フェリーは止まらない島だ。途中で降りるしかない。でも……さすがにあんな距離まで飛べないだろ」

「うーん、無理すれば……」

「しなくていい」

「うーん……でも……」

「そうだ。フェリーなら絶対、救命ボートを積んでいるはずだ。それを貰おう」

「……じゃ、探そうか」


     ◆


【昨日朝・T県にて】


「今日……ソータさん、こっちに来ますよ」

「……そうかね」

「はい……お茶です」

「あ、ありがとう、朝日さん。……しかし……あれだね。鞘……だったかな? それを探しに……来るんじゃなかったかな?」

「ええ」

「為すべきことをきっちりと終えてから。……そう伝えてもらえないか」

「え……でも……」

「――待てるよ」

「え?」

「颯太が帰ってくるまで……わたしは待てるから。必ず――そう伝えてほしい」


     ◆


【午前6時半・ソータとユウ】


「ボートはあったが……完全に人力だな」

「ソータさん、漕げる?」

「うーん……ジャスラの船ともちょっと違うけど……まあ、どうにかなるだろ」

「夕方までに手に入れられるかな」

「ま、それは頑張り次第で……。夕方……そうだな。今日一日で終わらせたいよな」

「……うん……」


     ◆


【四か月前・エルトラにて】


「夜斗、これ……」

「フェルポッド? しかも……結構あるな」

「ミリヤ女王にお願いしたら……これをくれたの。ディゲから回収したうち、解析が終わって空になった分」

「ふうん……」

「この二つに、隠蔽(カバー)を入れてほしいの」

「……ああ、人目を避けるためか」

「そう」

「残りはどうするんだ?」

「私がやるの。……中平さんに、使うために」


     ◆


【午後1時・ソータとユウ】


「ひぃ、ひぃ……」

「ソータさん……やっと着いたね……」

「もう……こんな時間か……ふう……」

「急がないと……ギリギリだ……」

「ギリギリ?」

「あ、ううん……」

「それでだな。……多分、あの辺……」

「あの……白い建物?」

「……の近くの、森の中……かな。とりあえず、あれを目指して登ろう」


     ◆


【五か月前・エルトラにて】


「お願いします、ミリヤ女王。どうしても……ガラスの棺が必要なんです!」

「――ならん。あれはいま、解析中だ。ミュービュリに持ち込むなど、とんでもないぞ」

「でも……中平さんは、ソータさんと話をしなければならないんです。時間が……」

「そんな個人的な理由で動くつもりか、アサヒ」

「――ソータに協力する件は、お前の判断に任せる。女王は、そう仰いました!」

「……」

「中平さんがいなければ、ソータさんは旅を続けられなかった。中平さんがいなければ、トーマくんがウルスラに行くこともなかった。そうして私達は出会って――ソータさんがいなければ、テスラの闇は抑えられなかったはずです!」

「……ミュービュリには高度な医療というものがあるのだろう? それを勉強したのではなかったか」

「もう、ミュービュリの医療では……痛みを取ることしかできません。そしてその治療は、中平さんの意識を奪います。話をしたいという中平さんの希望を叶えられません!」

「……」

「ミリヤ女王、お願いします。――ガラスの棺の許可を……」

「ならん」

「女王!」

「アサヒ……お前は思い違いをしている。エルトラがソータの手助けをするのは、あくまでテスラ――もとい、パラリュスでの話だ。ミュービュリに関与する訳にはいかん」

「でも……」

「どうしても助けたいなら、お前自身でやれ」

「それは……」

「――代わりに、フェルポッドを与える。それでどうにかしろ。お前の……判断でな」

「フェル……ポッド……」

 ――――――――

「……アサヒさま」

「エリン!」

「痛みを取る術は治癒の初歩です。アサヒさまなら……きっとできますよ」

「……あ……」

「私が……お教えします」

「……そっか……ミリヤ女王……そういう……」

「ほらほら……泣かないでください。頑張りましょう?」

「……うん」


     ◆


【午後3時・ソータとユウ】


「ソータさん、まだ?」

「もう少し……上の方だな」

「俺が担いで移動しよう。その方が早いよ」

「駄目だ。鞘の気配を追わないと……」

「でも……」

「焦るな、もう少しだから。……ただでさえ体力を失ってるんだ。無理するんじゃない」

「……うん……」



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「旅人」シリーズ

少女の前に王子様が現れる 想い紡ぐ旅人
少年の元に幼い少女が降ってくる あの夏の日に
使命のもと少年は異世界で旅に出る 漆黒の昔方
かつての旅の陰にあった真実 少女の味方
其々の物語の主人公たちは今 異国六景
いよいよ世界が動き始める 還る、トコロ
其々の状況も想いも変化していく まくあいのこと。
ついに運命の日を迎える 天上の彼方

旅人シリーズ・設定資料集 旅人達のアレコレ~digression(よもやま話)~
旅人シリーズ・外伝集 旅人達の向こう側~side-story~
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