嫌いな彼
面白い恋愛ものなんかを読むと、無性に恋愛ものを書きたくなります。そうして勢いで書いたのがこの作品。
うん。今の高校生がどんなことしているのか知らんから、現代を舞台にした作品は無理だなと悟ったね。そして、書いている間に何を読んだのかも忘れました(笑)
・・・・・・なんだったっけな?
まぁ、現代ものは無理だなとは悟りつつも頑張って書きましたので、楽しんでいただければ幸いです。
あたしは彼が嫌いだった。
いつも不愛想な顔をして、彼はほとんど一人でいる。誰が話しかけても、言葉少なく突き放すように答えるだけで、クラスの誰もが彼を、とっつきにくい奴だと思っていた。
文化祭や体育祭で、クラスで一丸になって良いものにしようとしている時も、彼は一切顧みることもなく、クラスの雰囲気を悪くする。
そんな彼がいじめられるようになるのも、当然だったと思う。
机には、『死ね』とか、『キモイ』とか、人を傷つける言葉が埋め尽くすように書かれ、上履きや体操着がゴミ箱に捨てられ、授業中には消しゴムのカスが投げつけられる。
男子たちが彼の横を通りながら、直接暴力を振るうところを見たことだって何度もある。
それでも彼は、常に、他人事のように平然としていた。
机に書かれた落書きを、恥じることなく消そうともしない。
上履きが無くなれば、土足で校舎へと入っていくし、体操着を隠されれば好都合だと言わんばかりにサボる。
消しゴムのカスを投げつけられても、彼は全く反応も示さないし、殴られても彼は、痛みに顔を歪めることもなく、つまらなそうな表情で、殴った相手を見るだけ。
けれど一度だけ、彼もやり返したことがあった。男子たちが彼を取り囲み、逃げられないようにしてから暴力を振るおうとしたのだ。そうなると、流石に彼も抵抗をするようだ。そして、その時はとても酷いことになった。彼は四人を相手に喧嘩をして、結局、全員を返り討ちにして、病院送りにしてしまった。
それは、彼の喧嘩の強さがわかっただけでなく、今までいじめの存在を見て見ぬふりしていた教師たちにしても、いじめを隠し通せない騒ぎとなった。
ホームルームには馬鹿の一つ覚えのようにいじめはいけないことだと聞かされた。それによって、表向きのいじめは確かになくなった。けれど、クラスに残ったのは、彼に対する気味悪さと空気の悪さ。
誰も彼に話しかけることはなくなり、彼は常に一人となった。これは一つの、シカトという、いじめに当てはまるのかもしれない。
でも、仕方がないとあたしは思う。
いじめは、いじめられた人にも原因があると言う人もいる。全てが全てそうだとは思わないけれど、彼に関しては、彼にも責任があったんじゃないかな。
彼は結局、いじめ騒動となった後も、中学時代を変わることなく過ごしていた。
あたしも、他のクラスメイトの友達と同じように、何を考えているのかわからない彼のことが、気味が悪かった。
あたしが行きたいと思っていた高校を、彼も受けようとしていると知った時は、本気で志望校を変えようかと迷ったほど。
そう、伏見鴉のことが、あたしは嫌いだった。