だから僕は。それでも僕は。
「少年、キミはどうして自分が悪鬼になってしまったか分かるかい?」
暗闇の中で、自分の姿形をした"何か"に尋ねられ、首を傾げた。
「キミは日々、何かに対して落胆したり、怒りを覚えたりはしなかったかい?」
そう言えばそんなこともあったなぁと、他人事のように思う。
「それはキミが "他人に、世界に、期待していた" からだ。自我の中で物事を「こうあるべきだ」と決め付けては、その度裏切られる。はは、愚かだね。他人は、世界は、キミの玩具ではないのに。期待───つまり己の理想の見返りを求めては裏切られ、落胆させられる。永遠にこれの繰返しさ。キミは無意識だったかもしれないけどね。負のスパイラルってやつかな」
"何か"は、馬鹿にするように笑った。
「そうして次第に期待や理想は業となった……。もう分かるよね?自分が悪鬼になってしまった理由。キミは期待を、業を、罪を、積み重ね過ぎたんだ。これって何て言うか知ってる?」
そこでようやく思い出す。世界はこんなにも無情で、無慈悲なのだと。
"何か"は、蔑むように笑った。
「自業自得だよ」
初めまして、もしくはお久しぶりです。みやまです(´ `)
「だから僕は。それでも僕は。」は現在連載中の「お守り妖孤」を執筆中に、ふと思い立ったお話です。
きっかけは、今や連絡手段の一つとして主流になったLINEの一言メッセージ(現在は"ステータスメッセージ"に改名されてますね)に、友人が記した一言でした。
恐らく「世界は~」のように書かれていたはずなのですが、もうほとんど忘れてしまいました…苦笑(記憶力に自信なんてありませんから笑)
まぁそんなこんなで出来上がったお話です。短編を書くのは初めてだったのですが、少ない文字数の中で、いかに物語に深みを持たせるか。また、物語を通して感じてもらえる"何か"を生み出せるか。などなど、難しくも楽しい作業でした^^
今回のお話は、理想や期待を追い求めすぎたが為に、悪鬼となってしまった少年のお話でしたね。
このお話を読んで、何かを感じて頂けると、これ以上の喜びはありません。
何かを感じて下さった方は、きっとこの少年と同じような体験をしたことがあるのではないでしょうか?持論と致しましては、人間である限り、誰もが同じような体験をしたことがあるのではないか、と考えておりますが。
誰だって、友達や家族、恋人などの親しい人に期待や理想を求めてしまいますよね。もちろん私だってそうです。
でもその大半が、無惨な結果に終わってしまった。なんてことは嫌という程体験しています。
けれど大人になるにつれ、そういう事態に直面することは少なくなっていくのかなぁと思います。大人になれば、自分の力量や限界を理解出来るようになるのですから。
自分を理解出来れば、相手のことだってある程度は理解出来ますよね。同じ人間なのだから。
けれども中には、いつまでも理想や期待を追い求める人だっている。少年だってその中の一人にすぎません。
意識の過剰。
その結果、彼は悪鬼になってしまった。現代では、成り果ては悪鬼とは違えど、いわゆる犯罪者です。
だからといって、理想や期待を捨てろというわけではないのです^^大事なものですから。
このお話を書いていて、自分でも改めて学ばされたことが多いように感じます。
なんとなく付けたタイトルも、今では気に入っていますので、タイトルに込められた意味や感情を自己流に解釈して頂けると、より一層お話が面白く感じて頂けるかと思います!
本編よりも長くなってしまいましたが……汗 最後までお付き合いありがとうございました!