エピローグ 終戦とその後
ルイーダ王国軍と合流してから2日後、帝国軍が帝王の身柄と引き換えに戦闘行為の停止と武装解除を受け入れた。王国軍は武器を渡し引き上げて行く帝国軍に護衛と言う名目でルイーダ王国軍が帝都まで付き添う事となる。帰路で侵略を受けた他国から武器の無い帝国軍を守ると言う名目であったが、帝都に隠された武器などの捜索を行なう予定だ。
その後、帝都での捜索で新たに銃と大量の弾薬が見付かり全てを回収する事に成功する。まだ隠された銃が在るかも知れないが、今回押収した銃を使えば同等に戦う事が出来るだろう。
ルイーダ王国と帝国の戦いの真実を知らない他国は、撤退する帝国軍を見て不思議がっているに違いない。まだ帝王は俺達が身柄を預かっている。捕縛して以来騒ぐ事も無く大人しくしていた。その理由の一つとして俺が日本から持ってきた。高麗人参などが入った健康飲料水やサプリメントのを提供しているのが大きいのかもしれない。
帝王は高齢でこの異世界の医学はまだまだ遅れている。少しでも健康で長生きできる薬として彼に渡している。帝王は何故か怪しむ事も無くそれを口にしたのには驚いた。理由を聞くと、実に簡単な事であった。
今回の侵略を失敗した事で再び力を蓄え侵略するまでの時間はもう残ってないと自分でも理解しているとの事であった。野望が達成できない事を理解した今なら死んでも悔いは無いらしい。
もし毒だとして死んでも良いって事との事だ。だが俺がそんな事をしないのは喋ってみて理解している。ならば薬だと言うのならば飲んでやろうと言う事だった。帝王もそれらの飲んでから体調が良くなっていると言っていた。
王国と帝国はその後5年間の不可侵条約と今回の侵略行為による損害賠償契約が確約された。今回の戦争は王国軍の完勝と言う形で幕を閉じたといえる。
今後は銃を所持する王国へ攻め込む事は無いと思われた。防衛側が銃を所持している場合の戦力差は物凄い。何処の国が攻めて来たとしても追い返せるだけの過剰戦力を手に入れた事になる。マリア女王は此方から侵略を働く様な人では無い為に今後は内政に力を入れルイーダ王国は大いに発展していく事だろう。
俺はフェリィに帰ると、真っ先にリアが居るはずのハイブの家へと走っていく。そしてリアを見つめると力一杯に抱きしめた。リアの体温が暖かくこのまま直ぐに眠れそうな安心感が俺を包み込んでいた。
「ただいま…… リア」
「お帰りなさい。航太郎様……」
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今は帝国の侵略を跳ね除けてから2年が経過していた。大陸では以前と変わらぬ落ち着きが戻って来たところだ。ルイーダ王国も少しづつ国力が回復しており、王都は大いに賑わってきていた。定例会で王都を訪れる度にその事を実感している。
あの後直ぐにリアが妊娠している事が解った。今は生まれて1歳になっている。リアに似た元気な男の子だ。
こんな俺でも父親になれた事にびっくりしている。リアと二人で慣れない子育てに悪戦苦闘の毎日を過ごしていた。
我が子に安心して暮らせる国を作る為、俺はルイーダ王国に日本の知識やルールなどを導入しようと考えている。やはり日本は良い国だと思っているからだろう。反発も在るだろうが時間はとある。1つづつ乗り越えて行けばいい。
俺の周りだけで言えば順調であるが、そうでない所も存在する。
その場所は帝国だ。定期的に体に良いとされているサプリメントは送り続けているが、最近どうやら帝王の容態が優れない様であった。俺は帝王に長く生きて貰う必要がある。俺の身内と言う事では無く指輪の力を知っている帝王は、他の者と比べてまだ話がつけ易いと考えているからだ。もし帝王が無くなった後に新たな皇帝が再び攻め込んで来るかもしれない。
だがそんな俺の考えを大きく越える事が発生した。帝王が突然、俺を身内であると発表したのであった。行方不明であった、皇帝の兄の孫として正式文章で勝手に発表されてしまった。
事実だけに俺も戸惑い、マリア女王に呼び出されて聞かれた時は仕方なく「そうらしい……」と答える事だけしか出来なかった。
マリア女王も頭を抱えため息を付いていた。それから帝国の使者が何度も訪れ俺に皇太子になってくれと詰め寄って来ているが、全て断っている。
やはり俺はフェリィ以外に行く気は無いからだ。
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フェリィは戦後も順調であった。俺が開設した学校には多くの者が勉強や仕事を覚える為に通っている。孤児では無い一般の少年少女達も受け入れているので、多少の衝突はあるかもしれないが、ハイアット達、先生となってくれている者達が確りと目を光らせてくれている。
それにこの世界はまだ生きて行くだけでも辛い事が多くある。裕福で時間が余っており、刺激欲しさや面白半分で他人をイジめる子供達は少ない。小さいながらに自分の為、家族の為に皆必死で字を覚え、手に職を付けようと頑張っている。
この春には初めて学校を巣立ち働きに出る子供達もいる。彼等の頑張りが今後この学校に大きな影響を与えてくれる事だろう。
新しい産業も日本で調べた知識を取り入れて幾つも立ち上げている。失敗もするだろうが、その中で発展してく物が出てくれればいい。挫けず何度もチャレンジして行くつもりだ。
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指輪を手に入れてから既に8年がが経過していた。俺はまだ26歳だが、これから事を考えるとやりたい事が多すぎて時間が足りないかも知れない。
だけど今は焦らず、この幸せな時間をリアと子供と共に過ごして行ければ俺は満足だ。
子供をあやしながら、ふと寝入ってしまっていた。目を覚ますと横にはスヤスヤと眠る我が子の寝顔が目に入る。子供の頬を手で撫でていると在る事に気付いた。
「指輪が…… 指輪が無くなっている!?」
俺は右手につけていた。指輪が無い事に気付き飛び起きた。周りを見渡しても見える風景は日本では無い。子供も目の前に居るし、此処は異世界のままだ。じゃあ何故指輪が無くなっているのだろうか?
俺は突然の出来事で不安になっていたが、原因は直ぐに見つける事が出来た。
「リョウお前が犯人だったのか?」
俺の前に眠る我が子のリョウの手には銀色の指輪が握り締められていた。どうやら先に寝入ってしまった俺の指から何かの拍子に抜き取ってしまっていたのだろう。
普通ならば指輪が離れた瞬間で俺は日本に戻っている筈である。どうやら指輪が使える者が外した場合はその力が及ばないのかもしれない。
この瞬間に俺は正式にこの異世界の住人となった。今後日本へ行く時は指輪を付けて飛び、外せば異世界に戻ると言う形になってしまった訳だ。日本にもしも指輪が使える者が居れば元の状態に戻せるかも知れないが、それは無理だろう。
「まぁいいさ。今後はフェリィが俺の生きる場所だ」
その時に別の部屋からリアが声を響かせながら此方へやって来た。
「航太郎様~ リョウは起きましたか?」
「いや、まだ眠っているよ。もう少し眠らせてやろう」
「じゃあ、お食事の用意が出来ましたので、二人で先に食べちゃいましょう」
そう言って部屋を出ようとするリアの腕を掴み、動きを止めると俺はリアを抱きしめた。
リアは顔を真っ赤にして動きを止めている。リアの初心な感じは出会った頃から一向に変わる気配がない。
「リア、これからも俺について来てくれ!」
指輪の事で不安を感じたからなのか? 俺はつい弱音を吐いていた。
「私は初めて出会ったあの日からずっと航太郎様だけを信じていました。航太郎様、これからも私やリョウをお願いしますね」
「あぁ、必ずお前もリョウもそして俺の周りにいる者全てを幸せにしてやる! これは決定事項だ」
出会った時と同じ様に俺は力強くリアにそう宣言していた。
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それから何十年後にこの大陸が統一される事になる。だがそれは戦争による侵略ではなく、互いの尊厳や利益を守り、各国が共に手を取り新たに作り上げた一大帝国の誕生であった。
その最初の帝王の名前はリョウと記載されている。
END
最後まで付き合って頂きましてありがとう御座います。
稚拙な文章で色々と指摘も受けてきましたが、何とか最後まで書く事が出来たのも皆様の応援のお陰だと思っています。
次の物語もよろしくお願いします。次は最初によくプロットを練ってから書き溜めして投稿しようと思います。
この話も今後、閑話等を投稿すると思いますので、そちらも良ければ読んで下さい。ありがとう御座いました。




