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39話 グラン帝国の力

 今回の指揮官は俺が任命された。女王には出し惜しみせずに好きにやる様に言われている。

 迫り来る帝国軍に対して王国軍は、俺が用意した材料を組み立てる作業を進めていた。その進捗状況を言えば既に9割出来あがっている。

 それと共にグラン帝国に俺は密偵を何人も送り込んでいた。それは少しでも帝国の情報を手に入れる為である。多くの密偵を送る理由は連絡手段が乏しいこの世界では報告ミスで致命的な失敗を犯してしまうからだ。

 密偵が情報を得れば2名が報告に帰り、その間を別の者が監視する。また新たな事実が判明すれば2名が報告へ戻ってくる。何故2名かと言うと帰還の途中で何らかのトラブルに合い戻れなくなる場合に備えているからだ。今回、密偵は2名とも帰還している。一人は俺の下へそしてもう一人は各貴族が集る部屋へ向い報告をしていた。

 

 報告の内容はグラン帝国が進軍を開始した事であった。今回の進軍には皇帝は来ていないらしい。皇帝は高年齢だ遠征は身体に負担が掛かるのだろう。

 そして兵数は40万に達するとの事だ。俺は引き続き進軍の状況を観察する様に指示を出した。


------------------------------

 

 グラン帝国がルイーダ王国に攻め込む為には2つの国を越えなければならない。最初に対する国はダルカ国になる。ダルカは兵達の殆どが騎馬隊と言う特殊な国だ。勇猛果敢で之までに何度もグラン帝国と小さな衝突を繰り返している。俺は戦闘の様子を観察させ、帝国の情報を得るつもりだった。


 それから5日後、別の密偵が帰って来た。話を聞くと驚愕の事実が判明する。


「グラン帝国がダルカ国の主力部隊を壊滅させました。そのまま進軍を続け後5日後にはガリル帝国領に入ります。ダルカ国との戦闘はたったの2日で終わっています」


「何だって!? 早すぎる。戦闘はどの程度の規模で一体どういう戦いが行われたんだ? 説明してくれ!」


「はっ! 帝国軍40万は中央に30万の槍隊を配置し、両翼に5万づつ騎兵を配置していました。対するダルカ軍は5万の騎兵を5つに分けて迎え撃つ陣形でした。ダルカ軍は騎馬隊の機動力を利用し敵を分断させる為に中央の主力に対して3方向から突撃を開始ししました。両翼は互いに相手の動きに合わせ衝突しており、中央に手出し出来ない状態です。


 ダルカ軍の騎馬隊がグラン帝国の主力部隊に100m付近まで近づいた時、帝国軍から大きな破裂音が何度も鳴り響きました。その後、騎馬隊が次々と倒れていったのです。ダルカ軍は陣形を立て直そうとしましたが、破裂音はやむことが無く、ダルカ国の主力部隊は甚大な被害が発生しました。

 その後一時撤退したダルカ軍は翌日再度突撃を敢行しました。機動力を活かし大きく陣営を迂回する形で横から攻め入ろうとしましたが、グラン帝国から破裂音が聞えると次々ダルカ軍は倒れていきました。今回は幾らか中央に切り込んでいた様です。陣形を崩したダルカ軍はグラン帝国の主力部隊に包囲されていました。

 最終的にはダルカ軍は5万以上の損害を出し何処かへ撤退していきました。対する帝国軍も被害はありますが、軽微と言える範囲です」


 密偵の説明に嫌な物がイメージされる。離れた者に対して破裂音を出しながら敵を粉砕する物と言えば当然限られてくる。


「破裂音の後に騎馬隊が倒れたのだな!? 帝国が使っていた武器はどんな物なんだ!? 戦場には残されていなかったのか?」


「戦闘が終了し誰も居なくなった後に戦場を捜索した所、殺された兵士の下敷きになる様にこれが落ちていました」


 そういって手渡されたを見て俺の額から汗が流れた。それはイメージが現実に変わった瞬間だった。


「これは……ライフル銃? クソッ! 帝国は銃を持っているのか!?」


 ヤバイと直感的に感じ取った。幾ら俺が現在の道具を駆使し敵を欺こうとも銃と言う圧倒的兵力の前では無力だ。

 まさか帝国にこんな隠し玉があったとは考えもしなかった。だが今になって考えれば指輪の事を知っているグラン帝国ならば、指輪を所持していた可能性も十分ある。その時に銃を手に入れていたと考えるべきだ。

 

 なら何故帝国は銃を所持していながら、今まで隠していたのか? この異世界で銃を使えば大陸制圧など動作も無い事だろうと思うが…… そう考えたが、その答えはすぐに導き出された。


(そうか……弾丸に限りがあるからか!? 指輪が無い為に今持っている銃弾分しか銃は使えない? それなら説明が付く、余程の事が無い場合以外使う事は無かったと言う事か……と言う事は帝国がこの指輪の奪取を本気で狙って来ている……)


 背筋に大量の汗が流れた。


「よくやってくれた。引き続き監視を行なってくれ」


 これで相手の手の内は解ったが、それを攻略する良い方法が思いつかない。すぐさま俺は日本へ戻り、ネットで銃対策を開始する。

 表示される画像と実物を照らし合わせながら、近い銃を探して行く。そして見付かった物は第二次世界大戦時に使われた小銃と判明した。

 ネットの説明文には村田式単発銃と書いてあり、一発筒発射するタイプの銃みたいだ。戦時中の武器が今も使える事には驚いたが、手入れをしていれば銃も弾薬も時間が経過しても大丈夫と書かれていた。

 銃の知識など殆ど無い俺が最も驚愕した事実は照尺1,500mと書いてある一文であった。その攻撃範囲に俺は銃の怖さを思い知る。弓などでは当然太刀打ち出来ない。

 

「最悪だな……相手の兵力が多い上に銃まで持っている。どうすればいい?」


 俺は銃に対抗する方法を考える。射程も長い銃の前に無闇に出る事は無駄死にするような物だ。

 だが幾ら考えても良い考えは浮かんで来ない。今用意している策で銃相手にでも時間稼ぎは出来るだろう。だが40万の敵を撃破する決定力にはならないと思えた。

 手に入れた一丁の銃を見ていると気になる物を発見する。それは銃の木で出来ている部分に押されている焼印であった。


「あれ……? これは何処かで見た事があるぞ?」


 微かな疑問を必死で考える。それは何処が攻略の糸口になるか解らないからだ。するとハッと俺は一つの事を思い出した。その後部屋の外で護衛している兵士に声を掛け、街へ走らせた。そして別の兵士を呼び寄せると、いま作らせている物に追加の指示を出す。


「最後に張り付ける木材の厚さを変更したい。もっと厚い板と取り替えてくれ。その木材にはたっぷりと油を湿らせて置いてくれ」


 その後街へ走らせていた男が一人の商人を連れてくる。その男に話を聞き俺は確信を得た。


 そうなると俺も急がねば行けない。新しい道具を手に入れる為に俺は日本へと舞い戻る。


-----------------------------


 新たな情報によると、明日にはガリア帝国との戦闘に突入するとの事だ。

 ダルカ国に勝利したグラン帝国は道行く街を襲い食料を現地で調達しているとの事だ。食糧不足を狙う策は通用しないと思える。


 だがガリア帝国にも銃の事は伝わって居るはず……何らかの対策はしている筈である。少しでも時間を稼いでくれる事を祈るばかりだ。


 俺はこの後開かれる軍議に向っていた。そこには各貴族達が集っている。今回の作戦にはマイル卿の力が必須だと思われた。彼の力量でこの国の運命が決まると言えるだろう。


 (準備は整った。後は実行に移すだけだグラン帝国に目に物をみせてやる!)

次の話、用事で2日程度遅れるかもです。申し訳ありません。

出来る限り定期通り投稿出来る様に頑張ります。

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