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21話 ゴールドラッシュ

 季節は冬の入口、吐く息は白く持って来た服だけでは体の底から震えが上がって来る。俺が王都へ来てから既に一月が過ぎていた。 

 よく聞く言葉で会えない時間が愛を育てると言うが、まさにその通りである。 リアが今まで以上に愛おしく感じていた。

 今日はフェリィへ帰る日だ。日が昇る前から自然と目が醒め、ドアを出た傍に設置されているベンチに座り、馬車が来るのをずっと待っている。そんな俺に突然声が掛けられた、その方向へ振り返るとハイブが立っている。


「航太郎殿、馬車が来るのはもっと後ですよ?」


 冬服に身を包んだハイブは目を細めて冷やかす様な感じだ。俺は見透かされているのを解りつつも反論してみる。


「単なる散歩だ。この王都とも今日でお別れだからな」


「そうですね。フェリィに着いたら最初に何をします?」


「そうだな。各村を廻って現状を把握したい。各村に適した支援を行い、少しでも早く皆に元気になって貰うつもりだよ…… って言うか、ハイブ酒臭いな……」


「すみません。昨夜、王が最後の晩餐だと部屋へ訪れ、朝まで飲んでいましたので……」


「それじゃ、王との仲も改善した訳だな」


「これも航太郎殿のお言葉のお陰です」


 朝日が昇り輝く光に目を細める、その光は俺達を祝福している様に温かい。


「さぁ、顔を洗って来いよ。もう直ぐ出発の時間だ」


--------------------------------


 フェリィの村は何も変わって居なかった。近づく豪華な馬車に村人が気付くと、入口付近には多くの村人達が集まって来ている。彼等は俺が帰ってくる事など知らない筈だ。一か月以上も彼等を放置していた俺はどう声を掛けたらいいか考えていた。


(何故か緊張して来くるぞ……)


 馬車が村へ入り、村人が囲む様に集まっている。 開くドアに皆の視線が集まっていた。


「ただいま……」


 ただそれだけ言葉を発しながら、降りた俺を目にした村人達は一斉に歓喜の声を上げていた。耳を覆いたくなる程に大きな歓声の中、小さな声が俺を振り向かせる。

 視線の先には、震える手を口元に当てながら涙を流すリアの姿があった。

 俺はリアに向けてもう一度言葉を告げる。


「ただいま、ずっと会いたかった」


「ぉかぇりなぁさいぃぃ 航太郎さぁまぁぁ」


 走り出し俺の胸に飛び込んで来たリアを抱き締めて、泣きやむまで頭を撫でる。村人達もその様子を温かく見守ってくれていた。そんな温かな空気に包まれていた時、俺は思い出したかの様に村人達へ報告を行った。

 

「あっ俺、領主になってこの辺り治める事になったから」


 ポカンとした表情の村人達が一斉に目を大きくする。そして俺を歓迎してくれた時以上の驚く声が辺りを埋め尽くした。



------------------------------

 

 俺達はフロアの街にあった空家を購入して領主の家として使っている。この街はどの村に行くにも距離が短く、効率的だったと言うのが理由だ。 

 今は机の上に置かれた書類に目を通しながら、ため息を付いていた。


「こう忙しくちゃ、自分の時間が全く取れないな……」


「仕方ありません。フェリィ地方は今もっとも発展している場所、それだけに問題も山積みですから」


「航太郎様、お茶が入りました。ひと休みして下さい」


 リアの笑顔に疲れが和らぐ、接客用テーブルの上にリアが紅茶と茶菓子を並べた。どうやら休憩する時間のようだ。俺はテーブルの方へ移動すると、リアが入れてくれた紅茶に口を付けながら、今日までの事を思い返していた。


-----------------------

 

 俺はフェリィで何日か疲れを癒した後、すぐに各村を訪れ現状把握に動き出した。するとどの村でも食糧不足に嘆く声が聞こえてくる。今まで税が高く、どの村も苦しんでいた。

 緊急性を感じてすぐにフェリィ・ライドの食料倉庫を解放させると、各村へ配布していった。 幾らライドの備蓄が多いからと言っても、全村の配布には到底たらず、日本の家に保管していた食料も全て吐き出した。


「これで何とか冬は越せるか?」


「はい、これでどの村もこの冬に飢える者はいないでしょう。けれど今回の配布でライドとフェリィには余分な食料が無くなってしまいました。早急に生産性がある産業を見つけるべきです」


 そう言われたが村の数は15村にのぼる。領地内に点在している全ての村が裕福になるのは、極めて難しいと言うのが俺の見解だった。

 ライドは農業に適した肥えた大地と近くを流れる川が在り、日光が一日中あたり続ける地形がある。

 しかし全ての村がそうでは無い、場所によって条件は様々だ。 村の視察を行い目にしたのは、当初のフェリィ程では無いが辛い生活を送る貧しい村の姿だった。

 だが逆に今まで気付く事が無かった産業を見つける事が出来た。それはアイル山脈の麓にある村を訪れた事である。村人の歓迎を受けて食事を振舞われていた時の事だ。

 俺の元に村の女の子が歩いて来る。少女は掌に拳大位の石を持っていた。


「この石、私の宝物なの。とっても綺麗だから、領主さまにあげるね」


 村長達はすぐに駆け寄り少女に注意しようとしていたが、俺がそれを止め石を受け取った。


「ありがとう、大切にさせて貰うよ。でもいいのかい? 宝物なのだろう?」


「大丈夫よ。 洞窟の中に一杯あるから、また取ってくるもん」


 俺は石に目を向けると、石は黒光りしていた。


(ん、何だ? この石は……)


 その後、日本の家に石を持ち帰り、鉱石・画像で調べてみると、少女の持っていた石が鉄鉱石だと解る。

 俺はハイブに頼み、製鉄の盛んな街から職人を引き抜き、ここを製鉄の村にしてみせると決意した。


-------------------------


 飲んでいた紅茶が無くなり、正面のソファーに座っているハイブに俺が考えたプランを説明した。


「ハイブ、提案なんだが15在る村を半分以下にしようと思う。廃止する村の村民は別の村へ統合させる。人口が増えればその村の生産力も高まるだろ。どうだ?」


「良い考えです。移住する村民の住居などを此方で提供すれば、彼等の不安も少なくなる事でしょう」


「よし、そうと決まれば早速詰めて行こう」


 俺達はどの村を無くし、何処へ移住させるのかを話し合う。出来るだけ交流のある村同士を付けてやりたい。俺達は何度も村へ訪れ、方針を伝えて相手の要望を聞き取っていく。 貧しい村の人達も安定した職と住む家が与えられると聞き、意外と反対意見も出ずに計画は進んで行った。


 次に俺は今までアメ玉でプールしていた金貨を全て使い、更にテイラーに何個も日本から持ち込んだ上質なアメ玉を卸して金を作り村の合併計画に投資していく。

 

 村が少しでも早く合併出来る様に、大量の職人を投入したが木造家屋の築造や農地整備に丸1年費やす事になったが、ある程度の形が出来た頃から、フェリィ地方の経済は目覚ましい発展を遂げて行く。

 

 フェリィは移住者の増加で、塩とアメ玉の生産力が高まり、以前の倍以上の納品が可能となった。

 ライドは移住者が一番多く、まだ未開拓の平地に田畑を耕し、出来高は数倍だ。

 今回、鉄鉱石を発見し製鉄の村へと生まれ変わったプラントの村は、良質な鉄鉱石が取れると話題になり、引き抜いた職人以外の者も店舗を構える為に移住している。村人達も体を土色に汚しながら、汗を流し頑張っていた。

 そしてどの村にも共通して言える事があった。それは人口増加に伴って雑貨や衣服などを売る店や食堂が出来た事だ。誰もが働いた金を自分の為に使う事が出来る。そんな噂を聞きつけた他領土の貧しい者なども自然と集まり、どの村も今では人口が2,000人を超え街に近づいていた。

 

 ただ変わって居ないのは、ディデルの村である。独自の文化を持つあの人達には別の仕事をやって貰っている。


 それは兵士として戦って貰う事だ。優秀な戦闘民族をそのまま軍事力に活用している。各村で起こる喧嘩や騒動、商人達を襲う野盗の討伐など、この景気で人が溢れている時期にやって貰う事は尽きる事が無い。フロアの街に店を構える傭兵集団とも仕事を分け合い上手くやっている様だ。


 今フェリィ地方には仕事が尽きる事は無い、村には人が溢れ、未開地を次々に開拓して行く、まさにゴールドラッシュと言えた。

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