二話 〜白い毛玉がいっぱいいた。~
「本当に見えるの?」
目の前の彼女、小崎さんに聞かれる。
見たことはなかったけど、この反応をされるということは……普通じゃないのか。
次は、変なものが見えるようになってしまった。ということだろうか。
「これ、なに…?」
手に持った白い生き物を持ち上げてみる。
「や、やっぱり見えるんだ…!」
何で質問に答えてくれないのだろう。
「芽好ちゃん!ちょっと一緒に来てもらえないかな!!」
ずいっと顔を近ずけられる。
にしても近すぎると思うけど…
「嫌…」
ガーンと分かりやすい反応をされた。
「ど、どどどどどうして!?」
どうしてって…
「帰る…」
ポカーンとした顔をした後、ふと下の方に目線を下げて何か閃いたように
「そっか!じゃぁ一度お家へ帰ってからで!」
だから嫌だと…
「ではでは、芽好ちゃんのお家へ行きましょう!」
…彼女はテンションが高いな……
しぶしぶ立ち上がり家へ向かう。
一度も付いていくと言ってないから帰ったらそのまま外には出ないでおこう。
と、思ったはずだったけど、何故今は神社にいるのだろう。
「初めましてっす。俺は多部圭哉っていうっす。みんなケイって呼んでるっす!」
「こちらは茅野芽好ちゃん!」
「それにしてもさっきは偶然だったすね〜」
家に向かっている途中に彼と会って、目的地が同じだからと一緒にいくことになり、家に着いた時も家に入ったらもう出てこないつもりだったのに…
『そうだ!漫画ならポストに入れておけばいいじゃないっすか』
そういいながら私の手から漫画を奪いポストに入れられた。
なんと手際のいい…
『さあ!行くっすよ!!』
『え…ちょ、止まっ…』
声は届かずあっという間に連れてこられた。
「さぁ!とりあえず、家に上がってお茶でも飲みながら」
そう言って小崎さんは歩き出して多部君もついていく。
ここはついていくべきなのか?早く家に帰りたいけどそう簡単に返してくれなさそうな気がするし…
うん。話を聞いてサッサと帰ろう!
そう決心して二人の後を追った。
2人の向かい側に座る形で椅子に座った。
少し戸惑った様子で小崎さんが話し出した。
「えっと…確認なんだけど、芽好ちゃんはこの子たちが見えるんだよね?」
机に乗せられている白い毛玉の生き物。かわいい。
うなずく。
「それじゃぁ、親戚の人が神社やってる、とか?」
横に振る。
「えっ?え、じゃぁ・・・なんで見えるの?霊感とか強いの?」
「あーもーとりあえず、こいつらなんなのか知ってるか聞けばいいんじゃないっすか」
焦っていた小崎さんの言葉に横入りして多部君が言う。
「そ、そうだね!」
二人の視線がこっちを向く。
「しら、ない…」
2人とも少し驚いた顔を見せて…小崎さんは少しどころじゃなかった。
「そっすか」
小崎さんが何か言いそうだったけど多部君の方が少し早かった。
「こいつらは、神様なんすよ」
ん?なんかよくわからないことをさらっと言ったような…
神様だとか…え?
「ほ、んき?」
思わず尋ねる。
「本当っすよ。」
小崎さんもうなずいてる。
神様とかって、人の形してるのかと思ってた。てか、本当にいるんだ。
「あ、でもね。この子たちは“つくもがみ”なんだ。だから、神社にいる神様とはちょっと違うよ!」
小崎さんが補足してくれた。
“つくもがみ”か
「つくもがみは物に宿ることは知ってるよね?」
長い間大事にされたものに神様が宿る、それがつくもがみ。
うなずく。
「だけどね。物はいつか壊れてしまう。すると神様は居場所がなくなってさまよってしまう。だから私たちは、その居場所がなくなってしまった神様に居場所を作ってあげてるの」
…居場所?
「まぁ、要するに、そんな神様たちを探すのを手伝ってほしいってことっす」
「いやです」
そんな大変そうなことしたくないに決まってる。
「即答されるとは…」
「しかも、そこだけははっきりいゃべるんすね…」
あきれられたような顔をされたけど、気にはならない。
「じゃ…それ、では」
帰ることにする。
「え、まって!」
が、小崎さんに腕をつかまれ、引き止められてしまった。
「かえ…る」
こう一度言う。機嫌はさっきより悪くなってもしょうがない。
「え、あ…ごめんなさぃ」
小崎さんは怯えた顔をしていたけど、腕を離してくれたので気にせず立ち去ることにした。
多部君は笑顔で手を振っていた。
家から出て神社の入り口で立ち止まった。
振り返る。
「だ、れ…?」
そこには、おじいさん?がいた。神社の人かな。そんな服を着ていた。なんていうか忘れたけど。
「おお。お前か我が見えるのは。」
楽しそうだ。
「また来るだろう。その時にまた話そう。」
来るつもりはないけど一応軽く会釈して帰る。
部屋に白い毛玉がいっぱいいた。