第2皇女と護衛 ガルシア
それではどうぞ。
私はアルクスを幼少期から知っている。蒼炎騎士団で他の騎士達と訓練をしているところをいつも見ていた。何にも一生懸命で格好良かった。彼が五歳の時に今の神将、当時の将軍達を倒したときも私は近くで見ていた。私は彼に惚れてしまっていた。何時だろう。この気持ちに気付いたのは。気付いたときには好きになっていた。だが、彼と一緒になることは出来ない。彼は捨て子で平民。私は皇族。しかも、第2皇女だ。叶うわけがない。彼が数えきれない数の功績を残しても実現することはない。私の思いに全く気付くことのないあの男は知らない間に神将と呼ばれる騎士では最高職と新たなる騎士団の団長になっていた。国民からは軍師騎士と呼ばれ、慕われる絶対的な存在になっている。新たな騎士団の団長になった彼は先の大戦の敵国のザリア帝国と接する国境の側に領土がある。それだけ、父上からの信頼が厚いことは分かるが、王都からかなり離れている場所を領土として渡さなくても良いと思う。これじゃあ、私がアルクスに会いに行けなくなる。はぁ…アルクスに会いたいな。
乙女日記より
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私はガルシアを待っている。今回の任務をちゃんと果たしたか、報告を聞くためだ。彼に出した今回の任務内容はアルクスの現状を調べてくること。戦闘技術から彼の近くにいる女まで、どのようになっているのかを調べてくることだ。最近のアルクスは良い噂を聞かない。仕事をしずにだらけた生活を送っているらしい。騎士団の管理も副団長に任せているとか。取り合えず、悪い噂しか流れてこない。これには理由があるのでは無いかと私は思っているが、それが当たっている保証はない。ただ単にサボっているだ毛かもしれない。敵を欺くためにやっているのかもしれない。考えて行動をしていることを信じたいところだ。
ガルシアは優秀な護衛だ。昔からこの地位を貰う予定が着いていたらしいが、そんなことは関係なく彼は有能だ。アルクスに負けず劣らず才能もある。正直、私の護衛でいるのは勿体無い気もするぐらいだ。彼も私を弄ることで楽しまなければ、合格な性格でもある。
私、ガルシア、アルクスは良く遊んでいた。歳が同じこともあり、仲良くやっていた。ガルシアが私を弄り、それに激怒した私を止めるのがアルクスだった。八つ当たりを受けるのもアルクスだった。そんなアルクスも、私とガルシアが追いかけっこをしているときは笑っていた。これぐらい面白かったらしい。こんなに楽しい日々が毎日続けば良いのにと当時の私は思っていた。だが、アルクスが放浪の軍師 ゾロンに師事し始めたときから私達は中々会えなくなった。アルクスはゾロンの所に、ガルシアは騎士団に、私は家庭教師から皇族としての作法から勉強までを教えられていた為、時間を取ることが出来なかった。
私ははっと目を覚ます。どうやら、ガルシアを待っている間に寝ていたようだ。何時もの私専用の部屋。何も変わらない。変わったのは3人の関係だけ。どうか、元に戻りますように。これが私の願いだった。
そんなことを考えているとガルシアが戻ってくる。平然とした顔でマイペースに私のことはお構いなしにのんびりと部屋に入ってくる。
「姫?お休みでしたか?」
「いえ。今、起きたわ。それで、どうだったの?結果は。」
「堕落しているのはアルクスに何らかの策があるからだと思う。戦闘技術は強くなってたよ。5年前から格段に。女のことだが、副団長のソフィアとは仲が良さそうだった。信頼関係はあるんじゃないか?まあ、こんな感じだけど。どうしますかね?姫。」
「私の方がアルクスと一緒に居たのに…まずはこの戦争に勝って貰わなくちゃ。その後に、アルクスが王都に来たときに文句を言ってやるわ。」
「それだけで良いのかな?他に何かしなくても。」
「わ、私はアルクスを信じてるから。」
ガルシアはニヤリと悪どい顔で私を見てくる。何を考えているのか?また、悪巧みだろうことは察しが付くが、どんなことを考えているかまでは分からない。ガルシアという人間は怖い。アルクスと並んで敵に私が回したくない存在だ。
「違うって、恋愛の話。好きなんだろ?アルクスのことが。」
「な、何を言い出すのよ。知らないわよ。」
「良く言うぜ。好きでもなかったら、彼奴の回りにいる女の話なんて聞かないだろ。」
「うるっさいわね。良いのよ、好きなんだから。ハッ!」
「白状するのが早いっつの。」
私は顔を真っ赤にして顔を覆い隠す。仕方ないじゃない。恥ずかしいんだから。なんで、こんな男に言わなきゃいけないのよ。しかも、ガルシアなんかに言われたら余計に質が悪い。はぁ…嫌だな…ガルシア、このネタで私を弄りそうだし。私はどうすれば…
「お前も恋をしたのか…薄々気付いてはいたが。分かってるよな。現実を。アルクスと姫では恋人になることも、ましてや、結婚することなんて夢のまた夢だぞ。」
「分かってるわよ、そんなこと。だから、もどかしくて、この地位が嫌になるのよ。なんで、私が皇族だからって、アルクスと付き合えないのよ?身分なんて関係無いじゃない。アルクスは膨大な程の結果を出しているし、爵位だって貰えるかもしれないのに。」
「どれだけ、彼奴が出世しようと、お前は皇族だ。皇族は皇族と同等の地位の者では無いと結婚は許されない。これは暗黙のルールなんだよ。」
「平民とは結婚するなって、誰が決めたのよ。そんなことは憲法にも法律にも指定されていないわよ。何で?何でよ?」
「はぁ…その前に彼奴を振り向かすことが先じゃないか?お前の気持ちに全く気付くことの無いあの男を振り向かせることが。」
決定的だった。自分でも分かっている。身分の差は今のこの国では大きく反映されることは。だけど、諦めたくない。私はアルクスが好き。この気持ちは誰にも負けない。彼と一緒に居たい。一緒に過ごしたい。だけど、ガルシアの言う通り、今のアルクスは私の気持ちに気付く気配すらない。そこをどうにかしなければ、私の恋はどうしようもならない。
「分かってるわよ。アルクスを振り向かせることがまずは一番大事なことぐらい。でも、アルクスが全然会いに来てくれないから、中々チャンスが無いのよ。」
「それは大丈夫じゃね。必ず、勝利して、王都に報告をしに来るから。師匠の墓参りもしないといけないだろうし。」
「はぁ…どうやって言おうかな?好きです、付き合ってください。とか?でも、今まで良く会ってきてその口調は…でも、アルクス、私と付き合っては、上から過ぎるだろうし。ああ、分からない。」
「お前は相変わらず面白いな。何が好きです。付き合ってくださいだ。マジでウケる。」
「うるっさいわね。良いでしょ。私の勝手なんだから。何が可笑しいのよ?」
「流石のお前も告白は緊張するみたいだからな。なんか、新鮮で笑えるわ。」
はぁ…こうなるからガルシアにはバレたくなかったのよ。もう、バレちゃったから仕方がないけど。何で、こんなにも私をからかうのかしら。そんなに私が面白いかしら。ガルシアの考えることなんてさっぱりだわ。
「そんなことより、ザリア帝国はどうなの?何か対策でも打ってきてるの?」
「ああ。ザリア帝国は今、政治的にも経済的にも大変な状況にあるみたいだ。だから、バライムを手に入れて、商人達に売り付けることで利益を出し、経済回復を狙ったんじゃないか。そのためのバライムを手に入れるための強行手段みたいだな。今回は。だけど、ここまでしなくても、俺は良いと思うがな。」
「政治的不安と経済的不安。この2つが今回の戦争を引き起こす原因になったのね。だけど、他の方法はなかったの?政治的不安はともかく、経済的不安は何らかの対策がある筈だけど。」
「姫、良く気づいた。ザリア帝国建国当初から使われてきた経済的不安に対する対策が今回は効かなかったんだよ。見事としか言いようがない程に全てに失敗してそれが政治的不安にも繋がったんだよ。まず、ザリア帝国が行ったのが財政再建。これを自分達の特産物を商人に売って、財政再建を図った。だが、結果は失敗。失敗の理由は…」
「特産物の流通か。いや、違う。他国でも、ザリア帝国と同じ特産物が特産物でも無いのに、同じ品質と美味しさで作られるようになったから。」
それだったら、全ての話に辻褄が合う。悲しいことだが、仕方の無いことだ。他国もそれぞれ、成長し続けているのだ。ザリア帝国は偶々、成長に遅れた。これが原因なのだろう。特産物だけでどうにかしようとする考えは言っては悪いが、この時代には合わない。今は新しい特産物を作ることに専念した方が国としても発展する。
「そう。その通り。」
「ザリア帝国は何故、新たな特産物を作らなかったの?」
「さっき言ったぞ。財政難なんだよ。それまでにこのような事態になったときのことを考えて、動いていれば良かったが、生憎、ザリア帝国は何もしなかったんだよ。」
「そういうことだったのね。でも、他にも問題が合ってたり、その対策をしたんでしょ。」
「ああ。その中の1つが年収の違いによる貧富の格差。これが大きな原因の1つでもある。国に雇われている兵士、文官、将軍が一定の基準の年収を得ていたんだ。だが、財政の悪化により年収が減少。生活が苦しくなったんだ。また、国民が国の財政難で金を使わなくなった為、商人にも大きな打撃が来た。もっと言えば、商人に雇われていた雇用者の収入も減り、生活が苦しくなったんだ。その中で年収がそこまで変わらなかったのが、貴族。彼らは国民が払った税金で生活しているため、生活には差ほど困らなかった。それにより、金が貴族と貴族お抱えの商人しか回らず、経済が悪化した。」
国王は何故、貴族から金を得て、財政難を克服したり、違う商人の商品を買わさせたり無かったのか?そこが私にとって分からないことね。お金を違う商人に払って使わせれば、少しずつお金は回るのに。それを積み重ねていけば、経済だって回復しただろうに。
「ありがとう。何故、5年後の今年、ザリア帝国が攻めてきたか、分かったわ。だけど、負けることを考えなかったのかしら。」
「あっちも必死だからな。そんなことを考えている余裕は無いんだよ。」
「そういうことね。」
「ひ、姫危ない!」
ガルシアが口を開けた瞬間、ガルシアは私を押し倒す。隣にはナイフが刺さっている。これはザリア帝国で生産されているナイフ。暗殺者を向けてきた。私が将来的に邪魔な存在になるからかしら。それとも、アルクスに伝えた命令がザリア帝国にバレて。まあ、私にはアルクスとガルシアがいるから殺されることは無いだろうけど。
「ふう。良かった。流石に死なれると、アルクスが激怒するだろうし。」
「危なかったわ。ありがとう、ガルシア。」
「良いよ。これが仕事だから。」
「取り合えず、この事を陛下に伝えないと。じゃあ、俺の部下がお前を護衛するからゆっくりと待っとけ。」
「分かったわ。」
なんだかんだ言っても、ガルシアも私を身体を張って守ってくれる。そんな人間を私は2人も持てて、私は幸せ者なのだろう。けど、ちゃんとアルクスに思いを伝えないと。私は固く決意した。
如何でしたでしょうか?
それではまた。