勇者登場
それではどうぞ。
運命に翻弄されるのは勘弁だ。決められた運命を辿っていく気もない。だが、運命に抗うことは出来るとか言っている奴のことを肯定するつもりもない。運命なんて誰にも分かるものではないのだから。そんなものが分かるのは何かしらの力を持つ教会の聖女とか、それともガセネタを言って儲けようとする馬鹿だけだ。運命なんてある意味抗うことも出来て、抗うことが出来ない変なものなのかもしれない。今の俺が運命に左右されながら歩いているなら、それはそれで構わない。だが、先程言ったが、運命に翻弄されるのは勘弁だ。それにより、大切な仲間が死んだりしたら困るしな。俺にそんなことを止めることが出来る力があるか分からないが。やるしかないのだろう。どんなことがあろうと、この国と国民、騎士団や仲間達を俺は守り続ける。
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俺は溜め息を吐きながら、ソフィア達と合流して後の少しのカルテナ広場に向かった。
着くと、誰も居なかった。まだ、早かったようだ。そんなことを俺が思っていると4人の少年が戦闘訓練を行っている。若いな。あれが勇者か?中々やるみたいだが。騎士団の中級クラスの騎士と同等に渡り合えるぐらいのように見えた。これが率直な感想だった。カルテナ広場に向かうまでに何かあって、それでまた吸収出来ることがあったのか?俺はめんどくさいが勇者達に声を掛ける。
「君達!もしかして、勇者かな?」
「そうだが。あんたが神将の1人か?」
「ああ。軍師騎士のアルクスだ。」
1人の黒髪の男の子が俺の問い掛けに答えてくれた。他の3人と威圧が違うな。まともでちゃんとしてる。昔の俺みたいだな。言っておくが自慢ではないぞ。あれは何かを持っていると行ったところか。まあ、別に作戦に支障はないが。
「勇者達の名前を教えてくれるか?」
「俺は金井雅文。俺の隣にいるのが楠紗耶香。次が大森秀。最後が荒木実紗。」
もう1人とは打って代わって生意気そうな餓鬼のような奴が答える。こいつが姫に嫌われた奴か。身の程を知った方が良いな。馬鹿だろとしか言いようがない。隣に居るのがもう1人の嫌われた女の方か。めんどくさ。こんな奴と話するのか…マジでめんどくせぇ…
「君達のことは知り合いから聞いているゆっくりとしてくれ。ポルトから聞いていると思うが、君達は今回の戦争に参戦してもらう。総指揮官はまだ来ていないが、俺は参謀で今回の戦争に参加する。君達も俺や総指揮官の命令をちゃんと聞いてくれよ。」
「ああ。」
「分かりました。」
「めんどくさいなぁ~」
「てか、俺たちと同い年の奴に命令されないといけないんだよ。」
出たよ。こういう奴が一番めんどくせぇ…やる気が失せる。帰って欲しいわ。姫に嫌われるのも無理無いな。こんな奴と居たら、俺は城を出ていくしな。ヤダヤダ。早く、他の奴等も来てくれないかな。ガルシアの関わりたくない理由もはっきり分かるな。ポルトがどうやってこいつらを教えたかを俺は知りたい。
「別に命令を聞かなくても良い。だが、命令を無視したら死ぬギリギリまでは放置だがら。死にそうになっても俺達を責めるなよ。自業自得なんだから。命令無視はこれが条件。分かった?」
「良いぜ。そんなの余裕だわ。その代わり、その余裕図らをへし折るほどの功績を土産にお前の前に現れるからな。」
「分かった分かった。他に命令無視する奴は誰だ?」
「はいはい。私も。」
「他の2人は良いんだな?」
「ああ。/はい。」
結局、金井と楠が独自行動をすることになった。勝手にやってくれ。俺には関係ない。死にたければ死ねば良い。だが、作戦を聞かれるのは不味い。裏切られたときに面倒だから。俺にとっては有りがたい限りだが。これで作戦に文句を言う奴が居なくなった。
「じゃあ、金井君と楠さんには一時退場して貰うから。作戦内容は聞かなくても良いよな。勝手に動くんだから。」
「良いぜ。/分かったわ。」
2人は俺たちから離れて広場の奥の方に向かって歩く。あっちにはトレーニング用の道具が揃っている。まあ、まずはひと安心だな。ここでまた、なんか言われるのは面倒だったし。運が良かったな。だが、ホントに面倒だな。止めて欲しい。
「「良いんですか?あのようなこと言ってしまって。(言って。)」」
ソフィアと荒木の言葉が重なる。息がピッタリだった。偶然にしても良くできたな。ソフィアを久しぶりに感心するわ。
「今、失礼なことを考えてましたね。」
「そんなことはどうでも良いんだよ。あ、さっきの問い掛けだが安心してくれ。第2皇女の命令だから。俺は気にくわなかった適当にやらせとけば良いってな。お前ら、さっきの2人の監視頼むぞ。」
3人の騎士団でも強い方の奴等に2人の監視頼む。そうでもしないと死なれたときに困る。めんどそうだし。でも、これで俺は解放だ。やった。万歳。感謝しよう。3人に。
「そう言えば、適当な自己紹介になったな。俺は軍師騎士のアルクス。一応、12神将の1人。灰炎騎士団の団長をしている。隣にいる女が副団長のソフィアだ。まあ、宜しく頼むよ。」
「なら、俺達も。俺は大森秀、16歳。勇者として此方に呼ばれた1人だ。」
「私は荒木実紗です。秀君と同じで16歳です。宜しくお願いします。」
「あの…勇者勇者と言ってますが、伝説の勇者召喚を行ったわけではないですよね?」
「それで合ってるぞ。ソフィアも、たまには勘が鋭いな。」
「たまに言わないでください。私は考えて行動しています。でも、今更になって勇者なんて皇帝は何を考えているんですか?」
お前にそんな問い掛けされても分かるわけないだろ。皇帝と同じ思考をしている訳じゃないんだから。こいつの適当な発言はホントに困る。もっと自分で考えれば良いものを。はぁ…めんどくさい。
「保険だよ、保険。何かあったときの。緊急事態に備えての切り札の為にとかじゃないのか?」
「そういうことですか。分かりました。」
「答えにくい質問をするな。」
「取り敢えず、君達もゆっくりして待ってると良い。」
それは一瞬だった。大森とか言う男。俺を試す気か?まあ、何でも良いが。ナイフか。ナイフを投げてから斬りかかると。卑怯な手だな。だが、一対一では使える作戦だな。
大森は高速でナイフを投げる。ここまで行くと高等技術だな。上手いな。騎士の嫌がるところに投げてきたな。俺は片方の片手剣で弾き返す。この瞬間に大森は俺に剣を持って迫ってくる。早いな。こいつは抜いていたな。中々やるぞ。俺には勝てないが。俺の胸を狙って大森は剣を着き出してくる。俺は大森の剣と自分の剣を当てながら避け、首元に剣を当てる。
「これで良いか?」
「ああ。試すようなことをして悪かった。流石、英雄だな。」
「俺は有りがたい誉め言葉だな。」
大森は全員に頭を下げる。俺を試して騎士としての俺の技術を知りたかったようだな。まあ、こういうのも良いもんだ。最初に見たときとは全然違う良い剣捌きだった。動きも悪くなかったし。これは期待できるな。大森との軽い戦闘は終わった。
如何でしたでしょうか?
それではまた。