意外な来訪者
どうぞ。
アリア皇国、今では13の騎士団を持つ大国。現皇帝も国民から高く評価されている。5年前のバライム戦役から戦争は無く平和な日々を国民は送っている。神将が動くほどの大きな出来事はない。その為か、平和なれしている所が見受けられる。今は戦争の時代だ。何時何処で起こるか分からないような状況だ。この5年間他国は幾つもの戦争を行っている。それが偶々此方に火種が飛ばなかっただけだ。それが何時飛んでくるかなんて誰にも分からない。余地能力を持った者は誰も居ないのだから。精々、予想するぐらいだ。当たる確率は決して高くはない。5年間で鈍った精神を回復させるには良い薬なのかもしれない。ザイリ帝国との戦争は避けられない。彼方から勝手に攻めてくるのだから。だが、これで国民や騎士たちがもう一度この大陸の状況を知るには良い機会なのかもしれない。神将たちが負けるとは決して思えない。なにせ、放浪の軍師ゾロンに師事し、彼の知恵を全て吸収した12神将軍師騎士 アルクス。彼が今回の戦争に赴くのだ。負けて貰っては困る。父上が何のために神将に領土を与えたと思うのかここでもう一度理解して欲しい。彼等の役目は戦争を出来る限り自分達で終わらせるかに掛かっている。私はアルクスを信じているし、神将も信じている。必ず勝つと。勝って、この国を守ってくれると。
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俺たち、神将を他国はこう呼ぶ。守護将と。国を守護する将軍という意味があるみたいだ。この名前の通り俺たちは他国から要注意人物として名前を挙げられることが多い。今回の戦争にでも多分だが、要注意人物として名前が挙がっているのだろ。有名になることは嬉しいことだが、暗殺者などを送り込まれたりすると面倒だ。それは勘弁して欲しい。だが、俺たち12人が早々殺られるとは限らないので良いのではあるが。俺達より強いのも早々いないだろうし。俺たちよりも強いとすれば、それは軍でもトップの地位にいる者たちだろう。そんな奴等が暗殺をしに来るとは到底思えない。その事を考えると安心と言えるのかもしれない。だが、他の騎士団のメンバーは違う。簡単には殺られないだろうが、死んでいく者もいるかもしれない。それはそれで大変なことだ。その時の為に俺たち神将は騎士たちにこう言っている。複数で行動をしろと。どんな状況でも関係ない。何をするときでも何処かに行くときでも。
それを言っていた俺が暗殺者を送られるのは皮肉なもんだ。暗殺者の技術は高いだろう。この戦い方は騎士ではないだろうか。だが、殺すことに全てを捧げている。殺すことが絶対の選択をしたことは見ていれば分かる。殺気だった目を持ち、優れた観察眼を持つ。この戦い方で俺が知っているのは只一人だ。
「ガルシア。お前が此処に何の用だ。姫の護衛という仕事があるだろうが。」
「バレたか。俺は護衛であり、従者だ。姫の命令なら何でも聞かなければな。姫のことなら心配するな。他の奴に任せてある。」
後ろにいるソフィアが驚いた顔で俺とガルシアの戦闘を見ている。まさか、俺がこの暗殺者と知り合いであったことに驚いているのだろう。まあ、しょうがないことだとは思うが。暗殺者に知り合いがいる時点でどうかしているのは間違いない。
「で、今回の姫からの依頼は俺の暗殺か?」
「違うな。お前の堕落した精神を元に戻せと言われた。お前の堕落した生活は姫にも情報として流れているんだぞ。お前が堕落した裏でちゃんとしていたとしても、目の前で見ていなければ心配にもなるのだろう。姫は悲しんでいたぞ。お前が5年前から1度も会いに来ないから。顔には見せないが、俺達に八つ当たりをしたりしてるし、そんなことをしているときは大体お前のことでイライラしてるんだよ。此方の身にもなれ。」
「い、いや、それは…わ、忘れていた訳では無いんだ。只、仕事は忙しいし、会いに行けなかったんだよ。ガルシア、謝っといてくれ。」
「それはお前が自分で会いに行け。ザイリ帝国に勝利したという報告と共にな。」
ガルシアは頭に被っていたフードを外し、顔を見せる。ソフィアは驚いた後に頭を下げて挨拶をする。なんたって、現第2皇女の従者で、元蒼炎騎士団の騎士の将軍補佐の地位に居た彼だ。戦闘でも散々たる活躍をした騎士だ。彼女の憧れの騎士の一人であることから驚いた顔をするのは当然だろう。ガルシアは俺と同い年だ。良い忘れていたが、ソフィアは16歳だ。飛び級で学園を卒業して14歳で騎士団に入って2年で今の地位にいる。ガルシアも11歳で騎士団に入った。だが、彼は例外で元々第2皇女の従者という地位が彼を待っていたのだが、騎士団に入り、剣を磨いてこいと言われて強制的に入ったという経歴がある。その為か、所属はしていたものの最年少入団記録には入っていない。それを入れてしまうとアルクスは5歳の頃から騎士団に混じっていた。5歳児が騎士団の中に居たことは流石に国としても言えない。そんな理由もあり、ガルシアの最年少入団記録は登録外になっている。そんなことは後にして。
「そろそろ止めようぜ。決着を着ける必要はないだろ。」
「いや、決着を着ける。丁度、5年もお前と戦闘訓練をしていないんだ。今日ぐらい良いだろ。」
「分かったよ。なら、寸止めだからな。」
「了解。」
今までとは比べ物にならないスピードで俺とガルシアの剣は触れ合う。身のこなし方が先程とは確実に違う。まるで別人の用だ。そんなことをソフィアは思っているのだろうな。だが、こんなことで驚かれては俺としては困るところだ。彼女にも神将クラスの近くにまではいって欲しいから。剣と剣がでかい音と共に触れ合う。ソフィアからすれば、俺たちは舞を踊っているように見えるのだろう。だが、それは正解に近いだけ。初めは皆、そう見える。実際は剣の扱い方が上手いだけだ。自分でいうのもなんだが。
「二刀流は使わないのか?使ってもらわないと此方としては困るのだが。」
「今、一刀流を磨いているからそれを実践する良い機会だし。だから、二刀流は使わない。」
「そんな余裕を噛ましているなら、ちゃんと俺に着いてこいよ。」
「ああ。分かってるよ。」
細剣と片手剣がぶつかり合う。俺もガルシアはどちらも譲る気は無い。俺は力とスピードを一気に高める。ガルシアの顔に俺の剣が立つ。ガルシアは手を挙げて降参の合図を送る。
「負けた。負けた。相変わらず、強いな。また、腕も上がってるし。」
「そいつはどうも。お前も腕を上げてるぞ。俺も危うかったし。」
「勝った奴が何を言っているんだよ。」
「マジで危なかったって。」
「そういうことにしとくわ。」
ガルシアは溜め息を吐きながら、剣を鞘にしまう。また、格好付けたしまい方をしやがってと俺は思ってしまう。すると、ソフィアが口を開ける。
「が、ガルシア殿が何故このような場所に?」
「ソフィアじゃないか。久し振りだな。さっきも言ったが、姫からの依頼でこの騎士団の堕落した団長を元に戻すためだよ。まあ、いらなかったみたいだが。後は俺が顔を見たかったこととそれと姫のことを伝えるため。」
「姫様とは、第2皇女様でございますか?」
「ああ。そんなこんなで良くお前もアルクスの所で頑張れるな。俺だったら、すぐにやめるぞ。」
「おい!ガルシア。」
「いえ、私の尊敬した人なので、私が少しでもお支えしないと。」
今、過去形だったよな。尊敬を抱いていたのは昔の話かよ。ショックだわ。真面目な話、ソフィアはなんだかんだ良いながら俺を尊敬していると思っていたのに。マジですか。昔の話ですか。俺の栄光は昔のものになったと。
「団長、悲しい顔をしていますが、貴方の補佐官になって分かりました。私の抱いていたものは幻想だったと。」
「いや、待て。今の戦闘見ただろ。俺、格好よかっただろ。」
「はぁ…貴方は自分で言ってしまうから質が悪い。」
「ぷ。やめてくれ。腹が痛い。」
ガルシアは腹を抱えて笑っている。だが、此方としては大問題なんだよ。部下に失望されるって結構来るんだからな。まあ、ソフィアだし良いか。
そんなこんなを話ながら、俺は会議を行う場所に向かう。
如何でしたでしょうか?
それではまた。