ソフィアの疑問
1週間ぶりです。
テストも近いためと新作の書き出しのため1週間に1回の投稿を目安としています。
それではどうぞ。
ソフィアは疑問に思ってきたことがある。それはアルクス、ガルシア、第2皇女であるリサが幼馴染みであることは聞いたことがあった。だが、5年前に今の領土に来てからアルクスが王都に向かったことは1度もない。会えなくて寂しくないのか?それとも、そこまで仲の良い関係ではないのか?全然分からない。この前、ガルシアとは再会を果たしているが、皇女とは5年も会っていない。もっと言えば、5年前の最後の別れも慌ただしくて、ちゃんと別れを告げていない。その前は戦争開始前だという。それを考えると相当な時間離れていたのだ。少しは思うところはあると思うのだがとソフィアは考えている。
結論として言えば、アルクスはリサのことをどう思っているのかを知りたいのだ。あの国一の絶世の美女と例えられる第2皇女だ。大陸を見ても、5本の指に入るほどの美貌の持ち主だ。そんな存在を幼い頃から見てきて好意を懐かなかったのかを知りたいのだ。あれでも、アルクスは男だ。国の英雄で、国一の騎士と言われ、大陸でも5本の指に入るほどの強者と評され、騎士団の脳と例えられ、軍師騎士と呼ばれる名まで貰っているのだ。決して、鈍感でも気付くであろうことである。2人が繋がる可能性は十分にあり得る。皇女と平民から取り立てられた英雄、可能性はある。だが、本人にその意思が無ければ意味はないのだが。これはソフィアの乙女心が感じたただの疑問だ。まぁ…聞きたくなるのも分からなくはないが。
そして、ソフィアは聞いたのだ。その答えになるかもしれないことを。今は丁度、戦地に移動する真っ只中。言ってしまえば、暇である。馬に乗り、黙々と戦地へ向かう。戦争参加が初めてなソフィアたちはこの何もない時間が暇でしょうがないのだろう。ソフィアは今が聞くチャンスだと思った。そして、聞いた。
「団長、聞きたいのですが。」
「何だ?」
「団長は第2皇女をどう思っているのですか?お二人は幼馴染みであったと聞いています。こ、好意とか懐いていたりするのですか?」
ソフィアの一言に騎士団の若い男女は反応する。それもその筈、正直皆が気になっていたことだ。これに反応してしまうのが、まだ若いことの証拠だろう。年齢を重ねた者たちは名に食わぬ顔で馬を進めている。
「姫か?姫ねぇ~まぁ大切な親友とは思っているけど。好意か~考えたこともないな。まぁ…俺と姫は身分の差もあるし、現実味はないんじゃないか?」
「なら、もし告白されたら、付き合うのですか?それとも、身分が同じであれば付き合っていたんですか?」
「告白されても俺は付き合う気はないぞ。てか、告白されることすらないと思うが。」
それを聞いた5年前から部下たちは唖然としてしまった。この騎士団は5年前の戦争後に出来た騎士団ではあるから若い者が多い。その殆んどが戦争というものを体験したことがない未経験者だ。その中でも、騎士団創設当時から所属している者もいる。その者たちはアルクスが王都のアリア国の象徴と呼ばれる城での生活も見ている。5年前までは至って真面目な性格だったこと。暇な時間は全て読書に費やしていたことなどアルクスの護衛をやっていた者でもそうじゃなくても、アルクスのことを5年前から又はそれ以前から良く知っている。そんな彼らが知っていることは他にもある。それが当時、城のメイドや執事から順に騎士に最後は城全体に伝わった噂。噂の内容は第2皇女は騎士団長の養子であるアルクス殿に好意を懐いているというものだった。でも、そう思わせる仕草や行動をリサが行っていた為、それは本当ではないのかと聞いた者たちの大半は思った。その証拠にアルクスとリサは良く一緒にいたからだ。ガルシアが居た時もあったが、2人で居る時もあった為、もう付き合っているのではという噂まで流れた。これは城に居た者しか知らない為、知っている者は少ない。ソフィアは偶々その噂を聞いた為、この疑問を懐いたというのも1つの理由だ。
「その理由を聞いても良いですか?」
「ああ。だって、あり得る分けないことをいちいち考えたって仕方ないだろ。それに、そんな状況だとしても俺は姫と付き合うことはまずない。それだけは決まっている。」
「そ、そうですか。」
ソフィアは落胆した。他の騎士団員もソフィアと同じように落胆している。だが、アルクスの真面目な顔で何も言えなかった。嘘を言っているとは思えなかったのだ。それぐらいの空気になってしまった。まるで何か決めていることでもあるかのようなアルクスの発言に少し疑問を懐いたが、それ以外は納得した。アルクスという男はそういう人間なのだとなんとなく分かっていたからだ。だからこそ、あの言葉に信憑性があったのだろう。ソフィアはアルクスは生涯独身ではないかと思ったのは別の話だ。
「お前今、変なこと考えていただろ。」
「いえ、そんなことはありませんよ。」
「嘘が下手すぎなんだよ、お前は。まぁ…良いけどよ。」
この話を聞いていた騎士団でも古参な騎士は姫も頑張ってくださいと思ったのである。
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先程、付き合えるわけがないと答えた本人であるアルクスは思っていた。
{こんな身体になって、姫の気持ちに答えることなんて出来ない。出来るわけないじゃないか。龍殺しである俺は化物と同じなのだから。人間であって人間じゃない。それが今の俺なのだ。そんなことに姫を巻き込みたくもない。この事を言えば、姫は何でもするだろう。自分を犠牲にしてまで、俺を助けるかもしれない。でも、それじゃ駄目なんだ。姫には生きてほしい。そんな戦乱の世ではなく、もっと平和な時代で。だから、俺は作るのだ。民が安心してのんびりと暮らせる戦争の無い世界を。それは姫の望みでもあるのだ。それを叶えるために俺はいる。}
力を持った者の宿命となる呪いや運命。それに抗うことは普通の人間では出来ない。だが、アルクスにはそれが出来てしまうのだ。運命の歯車を破壊し、ねじ曲げることが出来る力が。決められた未来を変えることが出来るのだ。それは人間という枠組みを越えたからこそ出来ることである。直接的な攻撃でも、間接的な攻撃でも関係ない。龍を殺したことで得られた膨大な摩訶不思議な力、不老不死という呪い、肉体成長などなど様々だ。これを得られたと捉えるよりは植え付けられた力と解釈した方が良いのかもしれない。呪いのようなものが彼を絶望感に浸らしていく。彼には恐怖という感情がない。だから、恐れない。何にも屈しない。そういう感情になってしまったのだ。それでも感情はある為、絶望したり、苦しんだり、悲しんだり、悩んだりする。人間であるのに人間ではない。これは彼の苦しみの大きな1つだ。まるで、自分だけが他とかけ離れているような感覚に陥る。アルクスの苦しみ。誰にも見せないこの感情を彼は何時も隠している。それが皆のため、そして自分のためになると思って。
如何でしたでしょうか?
それではまた。