皇帝への報告と考え
お久し振りです。
投稿が遅れてすいません。
色々考えた結果話はこうなりました。
9話のアルクスが居なくなったから戻ってくるまでの期間を一年間に変更しました。
活動報告にて遅れた理由を書きます。
一応、確認をお願いします。
投稿をしていなかったのにブックマークが増えているのはありがたいです。
これからも軍師騎士アルクスをお願いします。
それではどうぞ。
ガルシアは今、皇帝の部屋に入室の許可を頂き、部屋に入っている。目の前に座る男性が現皇帝 フラフト・アリアだ。歴代の名君と差ほど変わらない程の善政を行っている。国民からの信頼も厚く、まさに名君の鏡と呼ばれる存在だ。若い頃は皇子として先陣に立って戦争に加勢していたほどの豪傑である。その武勇伝は数多くあり、1人で数十人の兵を相手に戦い勝ったとか、一目散に敵陣地に乗り込み敵の将軍の首を得たとか。先代皇帝は若い頃のフラフトに大きく悩まされていたという。その技量は今も衰えを知らないと言われている。まさに、国民が望む皇帝だ。因みに若い頃は他国からは若き獅子と呼ばれていたらしい。その男の前に立つのだ。第2皇女である リサ・アリアとは幼い頃から親しかったため、フラフトとも良く顔を会わせていた為、今では慣れているが、初めて会った時は怖くて仕方がなかったということをガルシアは思い出す。
「ガルシア、我に用とはなんだ?お主が来るということは一大事なんだろうな。」
「はい、姫がザリアの手の者に狙われました。暗殺者が紛れ込んでいたみたいです。」
「何故、ザリアと決め付ける。証拠があるのか?」
「ナイフを投げつけて、急所を一撃で仕留めたかったみたいでしたが、私がなんとか庇い姫に怪我はありません。その投げられたナイフがザリア製の物だったので確信しました。」
「分かった。後、報告はあるか?」
娘が狙われたことに対してフラフトはなんの反応もしない。これは護衛であるガルシアを信用しているからこそである。だが、それをガルシアが気付くわけもなく。彼に不信感を抱かせる結果となった。まるで、動じないフラフトは次の質問に移っている。
「あります。アルクスに関してですが、彼は何らかの糸があって堕落した演技をしているようです。理由については分かりません。これは私の憶測ですが、ザリア帝国を油断させるためだと思いますが。」
「了解した。報告が以上なら戻っていいぞ。」
「分かりました、では。」
ガルシアは早々と皇帝の部屋から退出していく。皇帝は善人ではあるが、そこまで心配する人間ではない。だからこそ、信頼する強者を護衛に就けているのだか、ガルシアの場合は元々決まっていたため、変更の仕様がなかった。実際は変更する理由がないほどの強者となったが、やはり最初は皇帝もガルシアを護衛として育てることには反対していた。理由としては、もし護衛としての強さがなかった時にどうすることもできなくなるから。また、他の道を望むかもしれないという不安感もあった。ガルシアはそんなことを言わなかったが、実際はどうなのだろうかと皇帝はたまに考えてしまう。騎士団に入り、騎士として戦場で戦いたかったのだろうかと。それは本人に聞かないと分からないことで、全てが推測に過ぎない。それでも皇帝は思う。彼の人生を勝手に決めてしまったのではないかと。
ガルシア本人としては皇帝が憎いとか、俺も騎士になりたかったとか、そういう気持ちはない。敢えて言うなら、騎士に憧れを抱いたくらいだ。幼馴染みで親友のアルクスが騎士として活躍する姿に羨ましく思い、嫉妬していた時期もあった。だが、護衛しているのが幼馴染みで共に過ごしてきた第2皇女 リサであったことが彼に護衛という職業を今でもやることが出来る理由かもしれない。護衛をしていても楽しい。守りがいのある心優しい一途な少女。国のために色々と模索し、それでも1人の少女としての気持ちを忘れない可憐な皇女。これがリサ・アリアという少女なのだろう。その少女を守る。アルクスと交わした約束。それをガルシアは今でも忠実に守っている。
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ガルシアがリサの部屋に戻ると彼女はさっきと服装を変え、大きな窓越しで空を眺めていた。彼女は遠くにいる愛しき青年にしか目を向けてはいない。青年とはアルクスのことであるが、今頃彼は戦地に向かっているのだろう。いや、もう着いているかもしれない。リサはアルクスを信頼している。絶対生きて帰ってくると。これはアルクスが今まで多大なる功績を持って無事に帰って来たことがリサにとって、信頼と安心に繋がっている。今回も、それを実行すると思う。みたいなことを考えているのだろうとガルシアは悠々憶測することが出来る。
「姫、戻りました。」
ガルシアの声によって、リサはガルシアの存在に気付く。
「で、どうだったの?お父様の反応は。」
「姫の暗殺についても、アルクスについても、頷くこと以外はなさらなかった。」
「そう。私には信頼出来る護衛に就いて貰い、アルクスも信頼している。何も言わないということは想定内の予想だったわ。でも、娘を心配する仕草はして欲しいところだけど。」
「その辺は陛下の性格があるから何とも言えんが。」
「そうね。それが私の父親なんだものね。」
リサは何も話さなくなる。又もや、空を眺めている。一体この皇女は何なのだろうか。ガルシアはそれを幼い頃から思ってきている。一途で、純粋で、願わない恋をして、皇女として奮闘し、部屋では1人の少女として振る舞うこの皇女が本当は何を求めて、何をしたくて、何のために生きたいのか、さっぱり分からない。これをアルクスが答えられるのかと聞かれれば、ガルシア自体分かるわけがない。アルクスも不思議なところがある変わった男だからだ。そんなことを考えていると不意にリサから声が掛かる。
「ねえ、ガルシア。昔、アルクスが居なくなったことあったじゃない。」
「あったな。誰にも何も告げず居なくなったあれだろ。」
「そうそう。皆が心配する中で1年後に何食わぬ顔で戻ってきたわよね。あれ、アルクスは修行って言ってたけど、実際はどうなんだろ?」
「さぁな、それは本人に聞かないと分からない。だけど、居なくなる数日前から彼奴の表情は良くなかったな。」
そう。幼い頃、アルクスは誰にも何も告げず居なくなったのだ。騎士団の者も、官僚たちも、誰もその居場所を知らない。アルクスが居なくなったことに気付いた騎士団は王都一帯を隈無く探した。さらには、近辺の森、山など全てを見に行った。だけど、結果は見つからなかった。当時、蒼炎騎士団団長 ガイアスは大丈夫だろうと言い、それ以上探させることを止めさせた。探すのが無駄だと判断したのだ。幾ら探しても見つからない。なら、諦めようと。1年後、アルクスは久し振りに家に帰って来たかのように騎士団に戻ってきた。まるで、当然如く。そこで、騎士団の隊長クラス以上の人間たちは気付いたのだ。アルクスの変貌振りに。1年前とはまるで違う威圧、殺気、圧倒的な程の存在感。そして、なんと言っても肉体の変化だろう。体は傷痕がうっすらと見える。修羅場を乗り越えてきた男が受ける傷というレベルとは違う。人間が畏怖する世界に存在する化物。それは魔物。それらと戦ってきた傷痕がなんとなく見える。だが、消えかけている。自然治癒で治ることは難しい魔物から受けたであろう傷痕は消えかけている。人の身がなせる技を完全に越えている。まるで、超人。人を超えた者になっている。恐怖が隊長クラス以上の人間たちの体を覆った。冷や汗が体を流れている。アルクスの変貌振りに気付かない騎士たちはアルクスが戻ってきたことに笑って嬉しがっているが、隊長クラス以上の人間とっては恐怖以外の何者でもなかった。それはガルシアも例外ではなかった。
ガルシアも騎士として強さには自信があった。毎日、アルクスと競い、力を着々と着けていた。今では騎士団には修行のために行っているのに、並の騎士では叶うことが出来ない強さを持っている。それこそ、アルクスには叶わないも、数人の隊長には勝てるようになっては来ていた。それを自覚していたからこそ、今のアルクスが異常だったことに気付けたかもしれないと今では思っている。
「原因があるとすれば、キリシア神興国の使者がアルクスに来たときからでしょうね。」
「ああ。あの後から表情がおかしくなったんだからな。」
「帰って来てからも、妙に殺気だっていたじゃない。」
「確かにな。彼奴は何時も本を読んでいたが、その時も殺気が出ていたな。」
「それでさ、調べてみたのよ。アルクスが居なくなった頃から帰って来るまでの間にこの国で起きた出来事について。」
「それで、どうだったんだ?」
リサは語り始めた。アルクスが居なくなった頃に起きた出来事について。リサの話によれば、同じ時期に黒衣の少年又は黒き死神と呼ばれていた誰も名前も歳も分からない少年があちらそちらの事件に居たそうだ。例えば、田舎の村では村長が無理難題を幾つも村人に押し付けていたそうだ。皇国に出す納め金と納める米を皇国が頼んでいる量のおよそ5倍の量を摂取し、皇国に出す以外の残ったものを私物化して、私利私欲の為に使っていたり、魔物のいる森の開墾を無理矢理進めたりなどの横暴を繰り返していたという。そんなある日、村人の1人が全身黒一色に染まった服装をしていた少年を見つけ、1日泊めると、少年は恩を返したいと言って村人の言葉を聞かなかった。そこで村人は村長を倒してほしいとお願いした。だが、村長は無理だと承知でお願いしたのだ。村長には豪傑と呼ばれる程の腕前の護衛が10人以上居たのだ。少年も逃げ帰ってくるだろうと思っていた。次の日、少年が村人を訪ねたそうだ。そこには血だらけの少年が立っていた。村人が少年に訳を聞くと、前の晩に村長と護衛を殺してきたその返り血だと彼は答えた。少年の言葉を信じられなかった村人は村長の家に向かうと血塗れの部屋に血を流し倒れている村長と護衛の姿があった。それを村全体に知らせ、少年を村の英雄と呼ぶようになった。又、同じ年に魔物の中でも最強と呼ばれる龍が何者かに殺されていた。その龍は人々を殺し、恐れられていた存在で龍の中でもより強い存在だった。龍は魔森と呼ばれる森の奥の洞窟の中を住み処としていたらしい。魔森の近くにある村の村人が魔森に入っていく黒い服装をした少年を見たそうだ。次の日、何時も来るはずの龍が来ないことに驚いた村人は近くの町にある傭兵ギルドに依頼して、洞窟を調べて貰った。其処には龍の姿はなく何も残っていなかった。ギルドはこれを知り、龍は死んだと決めた。その少年を村人たちや傭兵ギルドは龍殺しの英雄と呼んだなどの様々な事件や出来事が起きていた。全てが辺境の田舎で行われていた。そして、全てに黒い服装をした少年が絡んでいる。これをアルクスと仮定するなら、あの人間離れした成長も頷けるとガルシアは思った。
「実際、正しいかどうかはアルクスに聞いてみないと分からないことだけど、喋ってくれないわよね。」
「そうだろうな。正直、使者との会談の内容も知りたいところだが、彼奴が話すとは到底思えない。」
「私たちは待つことが大切なのよね。」
「そうだな。それか、勝利報告しに来る時に問い詰めるか。」
「なら、そうしましょう。」
2人はそれを見上げる。今、まさに戦いっているであろう幼馴染みのことを思い浮かべながら。
如何でしたでしょうか?
それではまた。