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六章(2)

 「爆雷‼」

 「うわあっ!」

 地面に大きな穴があいた。その時起こった突風に四人は吹き飛ばされ、地面を転がった。

 「いった……。!」

 銀星が体を起こしかけたところへ、夜叉が偃月刀を振り下ろす。横へ転がってそれを避けると急いで立ち上がった。

 「お姉ちゃ……」

 「避けるな! おとなしく俺に殺されろ!」

 怒号とともに振るわれた偃月刀は、銀星の首をはねるような軌道を描いていた。銀星はとっさに腕で首を守りつつ、後ろへ下がった。

 「きゃああ!」

 結果、首は守られたが、右腕から血が吹き出した。

 「銀星さん!」

 「機銃砲!」

 機銃砲は中位の攻撃系術で、昴が持つ最大の術だった。夜叉は、無数の弾をこともなげに避けたが、弾が夜叉に向かって曲がってきたのには、さすがに驚いた顔をした。

 「追尾式か。面倒な。……爆炎!」

 夜叉の前で、派手な爆発が起こる。すると、その煙に紛れてユースが剣を打ち込んできた。

 「また貴様か。貴様も懲りん奴だな」

 「それだけが取り柄なもんでなぁ!」

 カン、カンと火花を散らして打ち合う。

 そのスキに、結芳と昴が銀星に駆け寄ってきた。

 「シーア、銀星さんの傷を治してくれ」

 「分かったわ」

 シーアの手が緑色に輝き、瞬く間に銀星の腕の傷が癒えていく。

 「ありがとう、シーアちゃん」

 「礼なんて要らないわよ。主人の命令だし」

 カールした栗色の髪を後ろへ払いながら、治癒の使役魔はぶっきらぼうに答えた。その時、苦痛に満ちた声が聞こえた。見れば、ユースの身体を雷の槍が貫いていた。

 「ユースさんっ!」

 「シーア、ユースの治療を!」

 「了解!」

 シーアは緑の光となり、一瞬でユースの隣へ行った。夜叉は、シーアなどには目もくれず、銀星たちに鎌鼬を放った。

 「風浪!」

 結芳が防御の術を唱え、鎌鼬を跳ね返す。だが、攻撃がやんだあと、目の前に夜叉はいなかった。

 「ウソ、どこに……」

 答えは背後に、だった。誰も何もできないまま、銀星の首がはねられる。——かに見えたとき、そのさらに背後から、誰かが夜叉を羽交い締めにした。

 「待て、夜叉ぁ!」

 「劉⁉」

 左半身に酷い火傷を負った劉だった。荒い息を吐いて苦しそうだったが、しっかりと夜叉を捕まえていた。

 「お前はこの銀星さんを殺したらあかんのや!」

 「なにを今更!」

 劉の腕を掴むと、背負い投げの要領で、彼を前へ投げ飛ばした。

 「きゃあ!」

 「うわっ!」

 投げ飛ばされた劉は銀星たち三人と正面からぶつかり、四人とも地面に倒れ込んだ。

 「何度、俺の邪魔をする気だ⁉ そいつら共々切り捨てられたいのか!」

 「お、お前はあの人に利用されとっただけやったんや!」

 「は?」

 夜叉の言葉をまるっきり無視して、劉はまず結論を述べた。夜叉が思いっきり顔をしかめた。絶好のチャンスを邪魔され、夜叉の機嫌はたいそう悪かった。

 「だか、ら。お前は、あの人に、利用されとったんやって、言うたんや」

 「意味が分からん」

 フンッと鼻をならして、劉の言葉をまったく信じようとしない夜叉に、劉はふらつきながら立ち上がり、続けた。

 「やろうな。オレかて最初は意味が分からんかったし、信じたくなかった。けど、真実やってことも、同時に分かった」

 「……?」

 「〈黄昏の者〉は、滅びや終わりの願いを叶える者。世界を滅ぼすことが前提にある〝楽園計画〟には、お前の力が絶対に必要だった」

 劉の口調には、不思議と、人に無視させない強さがあった。夜叉も仕方なく、耳を傾けた。

 「やから、お前にはこの世界を憎み、人を恨んでもらう必要があった。そうするのに一番手っ取り早いかったんが、まず家族から捨てられること。そして、その後の人生が悲惨なものになることやった」

 「……つまり、貴様は、俺の今までの人生が全て、師匠によってわざと仕組まれたものだったと言いたいのか」

 人ひとり、簡単に殺せそうな目で、きつく劉を睨んだ。

 「そうや」

 「ふざけるな!」

 即答した劉に向かって、偃月刀を振り上げる。それを紙一重でかわした劉は、なおも呼びかけた。

 「誰がこんなことでふざけるか! 聞いてくれ、夜叉!」

 「黙れっ!」

 振り下ろされた偃月刀を白刃取りで受け止める。その衝撃で手の平が切れ、血が流れた。痛みに顔をしかめつつ、すぐ近くにある夜叉の目を覗き込んで言った。

 「あの人はまず、お前の親父さんにある夢を見せた。お前が女子供関係なく人を殺してる夢や。夢の中でお前は成長していく。成長するにつれて、お前が殺す人の数は増えていく。しまいには自分の家族であるはずの兄弟たちまで殺すようになってしまった」

 劉が一旦言葉をきる。夜叉は不快そうに顔をしかめた。

 それは、まさしく今の夜叉の姿だったからだ。

 女子供関係なく、大勢の人間をこの手にかけてきた。自分の家族も、すぐそこにいる銀星以外、全て自分の手で葬った。

 「親父さんはそりゃあ心配するし、この夢にどういう意味があるのか知りたがった。そこである日、お前の親父さんは占い師んとこに相談に行った。そこでこう言われたんや」

 『お前の娘はこのままでは前代未聞の犯罪者になってしまうだろう。それを防ぐ為には、特別な施設に入れておかなければならない』

 「親父さんは迷いに迷った。そらそうやろな。現実のお前はまだ五歳かそこらぐらいやったはずや。前代未聞の犯罪者になるって分かっとるんやったら、んな施設に入れんでも、親が気をつけとったらええんとちゃうか、とか思っとった。けど、そんなことを考えてる間に、お前は夢でどんどん人を殺していく。ノイローゼになった親父さんは、ついにお前をその『施設』とやらに連れて行くことを決めた。あとは、お前が経験した通りや。お前は、旅行と称してその『施設』へ連れて行かれ、そのまま人買いに売られた。ほどなくしてお前は奴隷として買われ、人として扱われることなく数年を過ごした」

 しばらく無言が続く。

 すっと夜叉が偃月刀を引き、一歩離れた。

 「……それが、真実だと?」

 「せや。信じたくないかもしれんがな」

 長い髪に隠れて夜叉の顔は見えない。だが、偃月刀を握る手はわずかに震え、強く歯を食いしばっているのが分かった。

 「なあ夜叉、分かってくれ。お前はこの銀星さんを殺してもあかんし、世界を滅ぼしてもあかんのや」

 劉が一歩、歩み寄った。

 「むしろ、お前は銀星さんと協力してあの人らを倒さなあかん。お前の力を正、し」

 劉の言葉が不自然に途切れた。

 「焔成兄さん!」

 結芳が叫ぶ。劉の腹に幅広のナイフが刺さっていた。

 「ふざけるなよ、劉……」

 地を這うような低い声だった。 

 「や、夜叉…………」

 「師匠は俺に約束してくれた。楽園に連れて行くと。裏切りも、理不尽な暴力も、全ての醜く汚らしい人間を排除した楽園に!」

 「ぐはっ!」

 劉の喉から苦悶の声が、血とともに吐き出された。夜叉がナイフをさらに深く、劉の腹に突き刺したのだ。

 「楽園を築くのに世界が滅ばなくてはならないなら、俺が滅ぼす!」

 世界がかすかに鳴動を始めた。

 「楽園へ行く為に人を殺す必要があるなら、何人だって殺してやる! ……いや」

 鳴動に気づいたのは世界でただ一人。

 「侮蔑、嘲笑、苦痛、悲哀…………」

 しかし、不穏な空気を本能的に感じ取ったのは、ここにもう一人いた。

 「止めて、お姉ちゃん!」

 夜叉に向かって手を伸ばした銀星の制止も虚しく。

 「こんな世界は、今すぐ滅んでしまえぇ‼」

 その言葉と同時。大気が震え、大地が躍り、海が裂ける勢いで暴れ始めた。     


 「くっくっく……。は、はは、はーはっはっは! 礼を言うぞ、夜叉! 貴様のおかげで、この忌まわしい世界が今! 終わりを告げた! ははははっ!」

 帝呀山の山頂で、一人の男が空を仰いで高笑いした。遥か地上より吹き上がる澱んだ風に、フードが外れて男の顔があらわになった。顔の右半分に、蔓をかたどったような刺青がある、四十前後と見られる精悍な顔つきの男だった。黒い瞳に狂喜の色をたたえ、男は笑い続けた。


 またたく間に、真っ白だった月は、血に浸したかのように赤く染まった。

 「うわっ!」

 「きゃあ!」

 激しい揺れに、その場にいた全員が、バランスを崩して地面に倒れ込んだ。

 「ぐっ……!」

 腹を押さえていた劉は、受け身を取れず、したたかに身体を地面に打ちつけた。

 「焔成兄さん!」

 結芳が慌てて駆け寄り、助け起こした。

 「焔成兄さん、しっかり!」

 「焔成!」

 そのとき、ユースがシーアを連れて走ってきた。

 「え、アンタもう大丈夫なの?」

 「とりあえず動けるようにはなった。おい、シーア。こいつの怪我も治してやってくれ」

 「何でアンタに命令されなきゃいけないのよ」

 腕を組んでそっぽを向いたシーアに、突っかかろうとしたユースを抑え、昴がシーアに命令した。

 「シーア、治してやってくれ」

 「分かりました。主人の命令とあれば」

 すぐに頭を下げたシーアは、さっと劉の腹に手をかざし、治療を始めた。ひとりユースは憮然とした表情だったが、襲ってきた大きな揺れに耐えられず、地面に片膝をついた。

 「ふ、ふふ」

 場違いな笑い声に、全員が同じ人物を見た。

 「何がおかしいの、お姉ちゃん」

 今笑ったのは、口元を緩めるだけの微笑すら、滅多に見せない夜叉だった。

 だが、ゆらりと立ち上がった彼女は、銀星の問いなどまるで無視して、言葉を続けた。その顔は不安な色も混じっていたが、とても満足げだった。

 「さあ、どうする? 世界の崩壊は始まった。完全に崩壊するのも時間の問題」

 「……っ。なんて、ことを」

 「もう誰にも止められはしない。……お前にも、誰にもな。諦めて、おとなしく俺に殺されるといい」

 下げていた偃月刀を振り上げようとしたのを止めたのは、またもや劉だった。上半身を起こした劉が、夜叉に向かって小さな火の玉を投げつけたのだ。それは、夜叉の頬をかすった。

 「何で、そう決めつける?」

 「なに?」

 「止める方法はあるっつーことや」

 「なんだと?」

 「え?」

 夜叉と銀星の声が被った。

 「止める方法がある、だと? この世界の崩壊をか?」

 「ああ、そうや」

 「ふん、どうやってだ。何の力も持っていないお前が……」

 「お前なら、止められる」

 「……は?」

 夜叉は、一瞬虚をつかれたような顔をした。

 「俺なら、だと?」

 「せや。終わりの願いを叶える〈黄昏の者〉の化身なら……この世界の崩壊を終わらせることができるはずや」

 「あ、そっか」

 結芳が思わず、と言ったように声を漏らした。

 まったく、盲点としか言いようがない。『「世界の終わり」の終わり』を望むとは。

 言葉遊びのようだが、一応の理屈は通っているだろう。問題は、

 「阿呆が。この俺が、そんなことを望むと思うか」

 夜叉に、まったくその気がないということ。

 「言うてるやろ。お前の人生は、あの人に狂わされたもんや。お前があの人に義理立てして、この世界を滅ぼす必要はない!」

 「誰が信じるか、そんなこと! 師匠は俺を助けてくれた。俺に楽園を約束してくれた! だから俺は、師匠の為にこの世界を滅ぼす!」

 「アホはどっちや! だいたい、千鶴がこの世界で、あの豪邸で! 奴隷として働いとらんかったら、お前はあいつと出会えてへんねんぞ!」

 劉の言葉は、夜叉の痛いところをついた。だから、頷きたくなる前にその気持ちを断ち切った。

 「黙れっ‼ こんな世界でなければ千鶴は」

 「奴隷で傷つくこともなかったってか? けどあいつは、自分の未来に希望を持っとったやろ。笑っとったやろ⁉ お前は千鶴が生きようとしていた世界をも滅ぼそうとしとんのや!」

 「この世界よりも、楽園で生きる方が、あいつにはふさわしい!」

 「いい加減に分かれや! そもそもこの世界をこんな風にしたんはあの人やろうが‼」

 自分よりも、劉の言うことの方が正しいのではないかと、夜叉も心の中で思い始めていた。だが、それに深く突っ込んで考えるのが恐ろしく、また認めたくもなかった。

 師匠を疑い始めている自分なんて。

 「っ、師匠は利用しただけだ、この世界が溜め込んできた負の力を! 師匠がこんな世界にしたわけじゃない‼」


 「その負の力を払うのが〈黄昏の者〉の化身の役目やろうが、銀嶺っ‼」


 劉以外の、その場にいた全員が驚愕に目を見開いた。

 夜叉の中に渦巻いていた混乱と激情が一瞬にして収まった。

 「何故……貴様がその名を知っている…………?」

 彼女はノロノロと口を開いた。

 彼女の本当の名前。誰にも告げていない、両親から貰った名。

 唯一知っているとすれば銀星だろうが、一度も彼女はその名を呼んでいない。

 「記憶を見たからや」

 「そん、な、バカな……」

 「さっきから言うとるやろ。……これで信じてくれたか?」

 ギリッと歯ぎしりをして、それでも夜叉は「信じられるか」と叫ぼうとした——そのとき、奇妙な気配を察して、身を翻した。

 「っ!」

 腕から血が流れ出た。

 「へえ、さすがは夜叉だ。今のを避けるとはね」

 「ストレイア……? 何、を……?」

 夜叉が呆然と聞くと、首を傾げ、こともなげにストレイアは答えた。

 「何って、邪魔者の排除だけど」

 「は……?」

 一瞬、ストレイアの言ったことが理解できず、困惑した表情を見せた。だが、続いて聞こえた声に驚きの表情へと変わった。

 「お前はもうお払い箱だということだ。夜叉」

 「……し……しょ、う…………?」

 「何であの人がここに!」

 劉も同じく驚いた顔で声を出した。しかし、夜叉の一番の驚きは、そこではなかった。

 「い、今……今、なんとおっしゃいましたか……師匠……。今、なんと……」

 「お前は、お払い箱だと言ったのだ」

 ふらっと夜叉の身体が揺れ、倒れそうになった彼女を支えようと銀星が手を伸ばしかける。だが、夜叉は自分の足でかろうじて踏みとどまった。

 「な、ぜ…………何故ですか、師匠!」

 男の方へ一歩踏み出し、泣きそうな顔で夜叉は必死に問いかけた。

 「俺は今までずっとあなたの指示に従ってきて……今、世界をも崩壊へと導きました。けどそれは、あなたのためです! あなたが俺に約束をしてくれたから……あなたが俺に楽園を約束してくれたから! 俺は今まであなたの言うことに、忠実に従ってきたはずです! なのに何故、今! 俺を排除するなどと言うのです、師匠!」

 これほど狼狽した夜叉は、付き合いが長い劉でも見たことはなかった。

 「ああ、感謝しているよ。この世界を滅ぼしてくれたことにはな。この世界はやがて混沌へと還るだろう。そして、私が新たな世界を創造する。私が万物の創造主となり、清らかな楽園を創る」

 男は両手を広げて空を仰ぎ、ひとり悦に入っていたが、そこで一旦言葉をきると、打って変わり、夜叉を憐れんだ目で見た。

 「お前は十分に駒としての役目を果たしてくれた。しかし、所詮は駒。役目が終われば、あとは捨てるだけだ」

 「な、ならば何故」

 「ん?」

 「何故、千鶴をあそこへ置いておくことを許可して下さったのですか」

 夜叉は藁にも縋るような気持ちだった。

 師匠が自分を捨てるわけない。そんなことあるはずがない——と。

 「使い捨ての駒だと言うのなら、そんな者の望みなど、叶える必要なかったはずでしょう。まして、あの子は計画の役に立つような子ではなかった。……あ、あの子を置かせてくれたのは」

 「クックック。何を言っている? あのガキはちゃんと役に立ってくれたさ」

 男は実に、実に愉快そうに笑った。

 「は……」

 「お前があのガキを連れてきた時、私はお前の心には、まだ人の心が残っていることを知った。なら、この先お前が〈暁〉を殺せなくなることも十分にあり得る。そうなった時に、あのガキが利用できると判断したから、あのガキを置いておくことを許可したのだ」

 「りよう……?」

 「そうだ。〈暁〉にあのガキが殺されれば、お前は必ず〈暁〉を殺し、この不浄な世界を確実に破壊してくれるだろう、とな。結果として、あのガキは殺されず、お前も〈暁〉を殺せはしなかったが……まあ、世界は崩壊を始めているから、よしとしようか」

 男は失望のため息をつきつつも、どこか満足げな様子であった。何も言えず、立ち尽くしている夜叉に、ストレイアが追い討ちをかけるように言った。

 「そうそう。ついでに教えとくと、あの時、あの場所に千鶴ちゃんを連れて行ったのは僕なんだよ」

 「え……?」

 あの時——三日前。夜叉と銀星の、三度目の対峙。

 あの場所——大雨が降る砂漠。

 千鶴ちゃんを連れて行ったのは僕——つまり、千鶴が傷ついたのはストレイアのせいで、そしてそれを指示したのは師匠?

 夜叉は驚いていたが、劉はむしろ納得がいった。そもそも、千鶴が一人であんな場所へ来るはずがないのだ。


 「夜叉よ。お前はよく働いてくれた。だが、私が新たに創る清浄な世界には、ひとつの不純物もあってはならないのだよ」


 それは、夜叉にとっての死刑宣告だった。

 「そん、な……」

 偃月刀がカランと乾いた音を立てて、地面に転がった。

 「俺は……俺は今まで、何のために…………何のためにみんなを……」

 夜叉は、崩れるように地面に膝をつき、絶望の表情で呟いた。そして、地面に拳を叩き付け、悲痛な声をあげた。

 「母さんまで————‼」

 悲嘆にくれる夜叉に、憐憫と侮蔑がまざったような表情で、ストレイアが人差し指を向けた。

 「可哀想な夜叉。せめて苦しまずに逝くといい」

 「! 待てっ!」

 劉の制止の声も虚しく、一筋の赤い光が夜叉を射抜こうとする。

 ——その時、別の蒼い光がそれを砕いた。

 「……小娘が」

 何が起こったのか理解した男が憎々しげに吐き捨てた。

 「ふざけないで」

 煌々と光る腕輪をストレイアに向けて、銀星が夜叉の隣に立っていた。

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