茶番の続き? そんなの上から四番目の棚にしまっておいたよ。
随分間が空きましたが。
こっちはそんな感じで進めていくつもりです。
とりあえず、というか延々と茶番です。はい。
「なんだ、思ったよりけっこう簡単じゃない」
それが、彼女の口癖、決まり文句だった。誰かが提示した無理難題を、幾度となくこの言葉で突っぱねてきた。そのおかげで、救われることだってある。実際俺もそうだった。
でも、彼女はどうだったのだろう。その言葉で自分は救えていたのだろうか。
俺はそうじゃないと思ってる。そんなに強い人じゃないって。ほんとはもっと弱くて、生きていくのが精いっぱいなんだって。あの一本松のように、誰かの助けを待つように自分の行く道を照らしているだけなんだって。
だから、俺は彼女を支えるって決めたんだ。
たとえどんなに大きく突き放されても。たとえどんなに嫌なことを言われても。それは彼女の見栄、強がり、建前だと分かっているから。彼女が照らす道を続いて行けば、必ず彼女のもとへ着くのだから。あの笑顔の場所へ、たどり着けるのだから。
だから俺は、彼女を好きになった。
「あのー、気障にきめてもらってるところ悪いんだけどさ」
「はい?」
「全部聞こえてる。私に全部聞かれてる」
「そっかー。んじゃ、少しは俺の良い所も分かってぐぃたっ!」
「わざとらしいのよ、やり口が。そんな言葉、既に聞き飽きて何もかもが薄っぺらく聞こえるの」
「だからってグーは無いと思うな! せめてここは女の子なんだから平手でびたっ!」
「ご要望にお答えして、平手打ちしましたけど?」
「おかげで両頬が真っ赤だよ、まったくありがとうございません! 保健室行ってこよっかな!」
「日本語合ってないわよ。保健室じゃなくて病院行きなさい。特に精神科」
「違うよ! これは日本語を”誤る”と君に”謝る”を掛けてるんだってば!」
「謝るって、何を?」
「……君の本心を打ち明けてしまったことさ!」
「……」
「あれ、何も来ない、だと……!?」
「……顎? それじゃ普通すぎるわね……。じゃあ、額? 地味に痛そうだわ」
「次に殴る場所の確認してた!?」
「ま、いっか。私は手を汚さずに片を付けるタイプだし」
「何か残酷なこと言い残していったんだけど!?」
彼女の名は雅まほろ。名前が示してくれているように、雅な雰囲気を醸し出しながらも、常に俺にとっての癒しを与えてくれる、とってもいい人だ。
……え? 前述を見ても分からない? いやいや、俺は決してアレな性質なんかじゃない。俺はそういう「癒し」を求めてるんじゃない。例えが悪かったようだ。
何か、もっとフレンドリーな感じのやつ、あったはずだ。確か、あれは五月くらいの……そうそうカミナリ男なるものが襲来したころだ、たぶん。俺は詳しくは知らないけど。
それとは全く関係のない所で、ある意味衝撃を受けたことがあった。
「えーびーしゃらららーえびうぉうぉー」
「なにその歌、エビの讃美歌か何か?」
「え、雅さん知らないの!?」
「知らないわよエビの讃美歌なんて。エビは称えるほど好きじゃないし」
「エビの讃美歌じゃないから! 俺の歌唱力の問題だったら謝るけど!」
「輝人くんの言うとおりだよ。歌唱力は否定できないけど、それは決してエビの讃美歌なんかじゃないよ。もっとすばらしい曲なんだから」
「あ、茉子さん。俺の心にさくっと刺さる言葉を流れるように言ってくれるね! でも俺が泣くだけだから構わないでいいよ!」
「”えーびー”っていうところは、魚介の”エビ”のことじゃなくて、アルファベットの語源ともなっている”A”と”B”、つまり”AB”のことで」
「”AB”って? ゲームのボタン? それとも血液型? ……どっちにしたって、偏屈な讃美歌ね」
「二人とも”えーびー”と”讃美歌”から離れろよ!」
まあ、こんな感じだ。俺は毎日フレンドリー。
……え? これを見ても分からない? いやいや、俺は別に言葉責めがフレンドリーとか思ってないから。一方的に俺が言葉巧みに傷つけられてるなんてこと……、あれ、急に涙が。あの曲が頭に流れっぱなしだからかな? 心のラジカセに、かーぺんたーのCD入れっぱなしだからかな?
ちなみに、途中話に混ざってきたのは、
「俺のことを好きなはずなのに、素直になれずに、クールを装って俺に照れ隠しをするクーデレ(予定)の人」
である、桜城茉子さん。
この(予定)を茉子さんに話したら、無表情のまま、
「まあ、そんなたいそうなキャラクター、私にはつとまらないから、とりあえず輝人くん、海に身投げして?」
と返してくれた。もう役になりきってるよ! 演技派だね!
まあ、そういうことで、俺は彼女のことが好きなんだ。いろいろグダグダなことを挟んだけれど、俺は何が何でも……あ、こういう台詞は乱用しないほうがいいんだよね? 言葉は数より重みだ! わっしょい!
こんな感じでいきます。