第二十二話『妹とラブラブトーク!?』
第二十二話『妹とラブラブトーク!?』
「突然だけど、私の出番が極端に少ないわ!」
「あ?」
王室で魔王は八つ橋を食べながらモンハンをプレイしていた。
「どう考えても『新・キャラ登場!?』話しの回しかまとめに出番がないわ、その回ですら、セリフが少ない!」
「そんな事……」
反論をしようと頭の中で妹の出番を検索するが、いまいち反論できる素材は見つからなかった、魔王の検索エンジンはG○○gleです。
うわっ! 全然隠せてない気がする!
「だからおにいッ!」
妹は魔王に指を指すと
「今日は私と喋る話しにしなさい、今回のタイトルは『妹とラブラブトーク!?』ね」
内心、結構前にやったタイトルに酷似してるじゃないか、と思いながらも、反論はしないでおいた。
「では早速、――ゴホン、おにい、今日は朝食は何を食べた?」
「お前と一緒に住んでいるんだ。同じに決ってるだろう」
「…………」
「…………」
間が持たない!! エマージェンシー、エマージェンシー! 我増援求む! 至急増援をッ!
――第二十二話『妹とラブラブトーク!?』開始から一分も持たなかった。
「おにいからも喋りなさいよ!」
「そんな事も言われてもな……」
妹は魔王が食べている八つ橋を見ながら何かを閃いた顔をした。
「おにいは京都弁を喋る女性はどう思う!」
「どうも思わん、――あッ!」
「えっ何? 興味あるの!?」
魔王はP○2のディスクを妹の前に出し、得意げな顔で言った。
「モン○ターハンタードスどす」
「おにい、アンタ京都人に殴られても文句言えないわよ」
……ごめんなさい、京都の民よ……調子に乗りました。
「それよりおにい」
「なんだ?」
「いつもはぐらかして教えてくれなかったけど、おにいって結局のところ、タチ? ネコ? リバ? どっちなの?」
「唐突に何を言うかと思ったら……俺様はどこから突っ込めばいいんだ?」
「『突っ込む』!? まさかのバリタチ宣言?」
「ううっ、腐女子モードの妹と話すと頭が痛くなるな……。俺は異性愛者だ、BLゲームもゲームとしてはやるが、けして行為自体に興味があるわけではない。それに俺はほのぼのしたゲームの方が好きだ」
「ほのぼのレ○プ……(ボソッ」
――我が妹ながら、そろそろ殴りたくなってきた……。
「ねえねえ、おにい。それよりBLの話ししましょうよ」
あれ? もう既にBLの話しかと思っていたけど、違うのか…………。
「まあ、内容によるが、別に構わんぞ」
「私ね、おいにノンケ攻めの中ボス襲い受がいいと思うの」
「――いやいや、どちらかと言えば、中ボス下克上攻めの魔王ノンケ受だろう。
――ッじゃなぁぁい! どうして俺が自分のCPを考えねばならんッ!!」
クソッ腐ったフィルターを通せばどんな物でも、総て腐女子の餌食になってしまう。
ちなみに妹の格言は『我が邪眼を持ってすれば、万物、それ総てBL』だ。
「えーゴッホン。まあいい。それで、お前はどんな事を話したいんだ?」
「私の可愛らしさをみんなに伝えたいのよ」
「小さい。甘党。発禁ゲームを買えないどころか、ランドセルを背負えば小学生すら通じるほど幼い。
おっ、全国のお前ら大歓喜!!」
「おにい、誰に言ってるのよ?」
冷めた目でこっちを見ている妹に魔王は一向に凹む様子はなく、淡々と話を続けた。
最近の魔王の打たれ強さと言ったら、日本の国債くらい信頼があると言われているほどだ。
「だけどなぁ……お前の最大の短所はBL好きだと俺様は思うぞ。いやBLがいけないわけじゃない。
ただ……俺様が言うのもあれだが、やはり世間の目は冷たいものだ」
「BLが貴方たちに悪さをしたと言うの……」
「中ボスには悪さをしてると思うぞ」
「でもねおにい。やっぱり短所というか……――何かしらの“コンプレックス”とかあった方が人は、共感を抱き、感情移入とやらができる気がするのよ」
「例えば?」
「姫で言えば――“貧乳”ね」
「ああ、確かに――ッ!? 殺気!! 秘儀、変わり身の術!!」
突然現れた大きな気を前に、魔王はすぐさま迎撃態勢に移る。
座っていた妹の後ろに隠れると、“気”の発信源を窺った。
「くっ、妹ちゃんを盾にするなんて卑怯ね!!」
「力を誇示し、他人を屈服させようとするお前の方がよっぽど卑怯だ!!
それにあれだ!! 『“貧乳”』って言ったの俺様ではない!!
俺様を殴ると言うなら、納得のいく説明を要求する!!」
「妹ちゃんの言葉に、アンタは『確かに』って同意したわよね?」
「“確かに”!!」
「まっ……いいわ……」
何故かため息を吐き、先ほどの阿修羅のような殺気とは裏腹に、冷めた目で魔王と妹のいる方へ歩み寄り、テレビの前に腰掛ける。
「どうせ私のコンプレックスは“貧乳”よ……――だったら!!」
静かに座ったかと思ったら、今度は勢いよく立ち上がり話す。
「だったら、胸が大きすぎる事がコンプレックスでもいいじゃない!!」
巨乳の姫……細い体にデカすぎる胸……。うーんイマイチ。
「今失礼な事考えなかった?」
「ニュータイプがお前は!?」
「やっぱり考えてたのね! ……まあ自分でも嫌になるくらい胸がデカくなるくらいなら、このままで良いけど……」
落胆しながらも「それよりも」と姫は言いながら皆の方を向いた。
「一体何の話してたの?」
「ああ、人にはやっぱり短所やコンプレックスがあった方が映えると話だ。たとえば姫はあれだ……」
「“貧乳”でしょ……もういいわよ好きなだけ“ネタ”にしなさい」
「おにい、姫が好きなだけ“ズリネタ”にしても良いって。よかったわね」
「お前のせいで姫が痴女宣言をしたみたいに聞こえるじゃないか」
魔王達の会話に付いて行けない姫だったが、特に気に留めた様子もなく、話を続けた。
「?? まあ何の話しか分からないけど、でも妹ちゃんだって貧乳じゃない?」
「まあ妹はあれだろ。もともと身長もなく正真正銘のロリっ子な訳だから、胸があるとかむしろコンプレックスになりえるだろ」
「そうよね……」
「その点、俺様は完璧だな。コンプレックスなんて何一つない!! いやコンプレックスが無い事がコンプレックスかな~」
「本気でうざい」
「おにいってコンプレックスって言うか短所だらけじゃない?
例えば『二人組み作って~』って言われると先生と組むタイプでしょ?」
「嗚呼……、幼き頃のトラウマが甦って……。そうあれは小学校のとき……俺様が外宇宙で鬼ごっこをした時の――」
「何かスイッチ入っちゃった」
「そういえば妹ちゃんって何でコイツの部屋にいるの? 何か用があったの?」
「ああ、すっかり忘れてたわ。あのね、私の出番が少ないの」
姫は腕組みをしながら、必死に妹の出番頻度を思い描く。
そして、熟考の後。結論に至ったのか、手のひらに握りこぶしでポンと叩き話した。
「絡みづらい!!」
「「納得!!」」
というわけで、『絡みづらい』と思われる部分と取り除いてみる事にした魔王達。
「よし今から自分が思う理想の≪妹≫を演じてみろ!!」
妹に指を差し。妹もやる気満々で演技を始めた。
そして妹はおもむろに魔王のタンスを漁り、そこから下着を出すと一度廊下へと出た。
ノックの音が鳴り、魔王はすかさず返事をすると、おずおずと扉を開け。
顔を真っ赤に上気させながら魔王の方へと歩み寄り。
「おにい……あのね……おにいの下着。洗っといたから!!」
そういうと脱兎の如くスピードでもと来た道を戻っていった。
「……この下着を“洗ったのも”“畳んだのも”“仕舞ったのも”全てが全て俺なんだけどな………」
結局妹は今のままが一番となってしまった。
「はあ~……。男子校に通いたいなぁ~……」
妹の話を書こうとすると何かイマイチになってしまう。
やはり絡みづらいと言うより、書きづらいようだ。