第十九話『支持率を維持せよ!! 魔王様(ラジオ)演説!?』
第十九話『支持率を維持せよ!! 魔王様演説!?』
中ボスが何やら重要な報告があるとの事で、昼食後、魔王含めたいつものメンバーは王室へと集合していた。
そして、中ボスが口にした言葉に、全員が驚いたような顔をした。
「は? ラジオ収録?」
「アホ面丸出しのリアクションどうもありがとうございます。
ええ、今言いました通りラジオの収録をやります」
ラジオ収録? やっぱりラジオって言えばあれか?
みんなで話したりするのを公共の電波に乗せて配信するアレの事か?
皆、内容はある程度分かる物の、いざ『ラジオ収録』と言われても何が何やらと言った表情を浮かべていた。
「何で私たちがラジオ収録なんてやらなきゃいけないの?」
「姫様、それはですね」
中ボスは矢継ぎ早に説明を開始する。
話は至って簡潔に伝えられた。簡単に言ってしまえばこうだ。
「ほう、つまりは民衆へのご機嫌取りみたいなもんなんだな?」
「理解力の乏しい魔王様にはそのくらいに思っていただければ十分です。
とにかく、今は魔王様が人間界に遠征し、魔界に“魔王”が居なくなって丁度一年。とても微妙な時期なのです。
ですから、国民の支持を得るためにも、ここは魔王様自ら《ラジオ演説》と言うわけです」
「ねえねえ中ボス。演説ってどれくらい影響があるもんなの?」
「小ボスが聞きたい事と言うのが、≪収益≫と言う意味でしたら、演説によって発生する収益はそうですね……。
今まで魔王城に常在させていた軍事力を、三か月ほど維持出来るくらいのお金を集める事が可能です。
現在の魔王城が一か月に使っている金額で考えますと五年は遊んで暮らしていても大丈夫なほどですかね」
『五年!?!?』
なぜか“五年”遊んで暮らせるという言葉に全員の目の色が変わる。
エロゲ買い放題の生活ができると、魔王は嬉しそうに叫び。
魔王以外の皆も、各々の欲望を口々に言い。その光景を見て中ボスもやや呆れていた。
「はあ……まあ兎にも角にも、まずは皆様のご協力があって初めて実現することです。
魔界全土に私たちにラジオが流れるのです。それを肝に銘じて、収録に臨んでください」
最後にそう言い釘を刺した中ボスであったが、その言葉を真面目に聞いていたものは誰一人いなかった。
ため息を一つ吐き、ラジオの段取りを考える中ボスであった。
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魔王城、仮設録音室。
妹 「皆のアイドル≪魔王≫がお送りする。≪魔王様ラジオ≫略して≪まおらじ≫。はい拍手」
疎らな拍手+オープニングBGM
妹 「映画、スターウォー○のオープニングテーマ曲でした~」
魔王 「壮大過ぎだろッ!! “帝国軍”や“ジェダイ”も出演するのかこのラジオは!?」
妹 「ちょっとおにい、私が呼ぶまで喋らないでよ! ……えーゴホン。進行役は、魔王様の妹である私。そして、“今回のゲスト”。私のお兄様、魔王様でーす」
魔王 「え!? 今『“今回のゲスト”』って言ったよな!? タイトルに≪まおらじ≫ってついてるのに俺様はゲスト扱いなのか?!」
ドンドン!
妹 「ちょっと机叩かないでよ。なんか二回に分けて放送するから、毎回メンバーは変えるって中ボスからのお達なのよ」
魔王 「納得できねぇ……」
妹 「さっ、おにい……もとい、魔王様の登場で大分盛り上がった所で、次のゲストの登場です!」
魔王 「あっ? 今までのトーク内容のどこに『盛り上がる』要素があったのだ?! いやいや、それよりも、まだゲストが登場するのか!? もはや、俺様主体のラジオじゃ無いよな!!?」
ネコ 「どーもー“吾輩は猫である”で、一躍有名になった、≪ネコ≫でーす」
魔王 「のっけから物凄い大ぼらを吹くな!!」
妹 「飼い主をずっと待ち続けた事で、渋谷駅前の銅像にもなったほど有名なネコさんをゲストにお迎えして――」
魔王 「それはハチ公ぉぉぉお!! あれは“犬”!! 俺様が前々回、お前の名前を決める時にボケたのが全ての元凶か!?」
妹 「ネコさんの登場でおに……魔王様のテンションも上がりっぱなしね」
ネコ 「主は本当に猫好きだな~」
魔王 「はっ!? いつの間にやら俺様が“ツッコミ役”に!?!? 誰の陰謀だこれは!!?」
妹 「では、今回のメンバーが全て集まった所で、次に移らせて貰います」
ネコ 「わーい」
魔王 「…………」
妹 「えーまずは≪お願い♪ 助けて♪ 魔王様♪≫のコーナーです」
ドラクエのレベルアップ音
魔王 「誰かレベル上がった!?」
妹 「このコーナーでは聴取者より頂いた、『こんな時、魔王様ならどう行動するの?』と言った、ご意見に、魔王様自ら答えるコーナーです。ちなみに今回は第一回目なので、ハガキの方は御座いません」
魔王 「なら、このコーナーは中止――」
妹 「ですが!! 今回は特別に魔界の方で国民の皆様に直接!! スタッフが意見を聞いてきました~」
ネコ 「俺の主である魔王様なら、どんな窮地でも脱する事ができるはずだ、難なく答えを出してくれるだろう」
妹 「では早速一通目。≪鬼畜眼鏡大好きっ子≫さんからの質問です」
魔王 「いきなり濃厚なBLの匂いがするぞ……」
妹 「『魔王様聞いて下さい。先月、私の父が不況の煽りを受け。リストラにあってしまいました。そしてそれがショックだったのか、父は次の仕事は探す訳ではなく、毎日家で酒に酔う日々。そんな父を見兼ねた母は、私と弟を連れて、家を出よう、と言っていますが。ですが、弟は父に付いて行こうとしています。一体私はどうすればいいんですか? 教えてください魔王様』。以上です、では魔王様。ささっと解決しちゃってください!!」
魔王 「重いッッ!! そんなに重い案件が舞い込んでくるとは考えも見なかったよ!!」
ネコ 「猫を飼えば万事解決!!」
魔王 「そんなもんで解決するか!! だがそれにしたって、重すぎるわ!! 俺様がおいそれと手を出して良いもんじゃないだろう!!」
妹 「父×弟の禁断の愛。萌えるわね」
魔王 「いやもう多くは望まないから、頼むからお前ら黙れ」
妹 「それで、結局どうするのよ、おに……もう面倒だからやっぱりおにいでいっか。っでどうするのおにい」
魔王 「ええい!! そのお前のお父さんに、俺様に連絡を寄越すように言え! 俺様が直接、再就職先を見つけるのを手伝う!」
妹 「解決~♪」
ドラクエ、セーブデータ消滅時BGM
魔王 「割と正解ぽい打開策出したのに、然も選択を誤ったような気持ちにさせる曲流すな!!」
妹 「では、次のお便りです」
ネコ 「おう、どんと来い」
魔王 「…………」
妹 「≪銃を向けられるたび5セント貰ってたら今ごろ大金モチだぜ!!≫さんからの質問です」
魔王 「すごい聞き覚えのある言葉だな……」
妹 「『魔王様こんにちわ。僕はとある紛争地域に行っています。本当は“君”と話したかったけど、今はこの魔王様の関係者しか、僕の近くにはいないから仕方がない。彼らが居ただけでも奇跡だと思うよ』」
魔王 「既に嫌な予感しかしない!? というか、お前らは一体どこまで質問を貰いに行ったのだ!?」
妹 「『では、魔王様、僕からの質問ですが。味方からの補給も途絶え、連絡もこの三日途絶したままです。ですが上からのは、ここで待機するように言われています。しかし、私たちの隊はもう限界です。上層部の指示なしに撤退しても許されま――ダニエルが撃たれた!! 畜生、ここまで敵が侵入して来ていたのか!? ――グハッ』」
魔王 「えっなに!? 今ので終了!?!? 今、撃たれなかった彼!? というかこれは手紙なのか!? それともボイスレコーダーで録音したのか!?」
妹 「もちろん手書きのメッセージよ。スタッフは便せんに入った手紙を本人から受け取っただけよ。だから『グハッ』込みで書き込んであるわよ」
ネコ 「……血染めの手紙、やつはもう……」
魔王 「ネコよ、不吉なこと言うもんじゃないぞ」
ネコ 「了解だ主、心得たぞ」
妹 「それで、おにい。この人は撤退してもいいの? いけないの?」
魔王 「……いや、正直な意見としては、俺様がどんな答えを出しても、彼に届く頃には、既に時間が答えを出してるんじゃないか?」
妹 「…………。解決~♪」
ドラクエのレベルアップ音
魔王 「リスナー、レベルアップしたのか!?」
ネコ 「おめでとう、リスナーの≪銃を向けられるたび5セント貰ってたら今ごろ大金モチだぜ!!≫さんは“ギガスラッシュ”を覚えた!!」
魔王 「強ッ!! リスナーさん強ッ!!!」
妹 「あっ、もうこんな時間!? 今回はここまで、次回は中ボスと小ボスのBLコンビと、現在の魔王城を占拠している“姫”の三人でお送りするわ」
魔王 「国民に魔王城が人間に占領されてるのばれるぅう! というかまで十分程度しか録音してねぇ!? 短すぎだろ!」
ネコ 「あとはあれだ。エンディング曲を二十分くらい流すから、きっかり三十分番組だ」
魔王 「露骨な嵩増しだな……」
妹 「エンディング曲は、この曲≪大き目の虫の羽音≫」
魔王 「不愉快過ぎだろう!! 誰が好き好んで二十分も虫の羽音を聴くんだよ! 誰とくだよ!?」
妹 「では、次回の放送で会いましょう。せーの」
ネコ&妹「ばいばーい」
虫の羽音♪ 二十分バージョン
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自室で一人、今回のラジオに関する書類に中ボスは細部に至るまで目を通す。
しばらくして、ようやく机の上に山積みになっていた書類を読む終わり、一息つく。
関係書類は一通り見たものの。今で部屋の片隅を占領している段ボールの山に対して手を裂ける余裕はなかった。
「ふむ予想より、大分多いですね」
「何がだ?」
中ボスが段ボールから目線を外し、声の主が居る方を見た。
ドアの半分ほど開け、そこから体を滑られるように魔王が部屋へと入る。
背中でドアを閉め、先ほど中ボスが見つめていた段ボールへと視線を移す。
「ハガキですよ。次回放送分に備えて、番組の最後に告知しておいたんです。
次回のコーナーで使う為の回答などが詰まったハガキの山です」
「段ボール六つ。これ全部がハガキだと?」
「魔界全土に魔王様の声を届けたのです。ある程度の予測はしていましたが、予想より十箱も多いです」
「は? 『十箱多い』? まだあるのか」
「来るときに気がつかなかったのですか? 廊下にまだ十四箱置いてありますよ」
中ボスの言葉に魔王は再びドアを開け、顔だけ廊下にだし、辺りを見た。
あった。確かに十四箱。
「はあ……流石にこれを次の放送に備えて振り分けるのは骨が折れます……」
「ファンレターとかもあるのか?」
「ほとんどが魔王様宛のファンレターですよ。力がすべての魔界で、魔王様は最強の力の持ち主なんですから。
いつもはこのような手紙は私どもに届く前にすべて返却しているのですが、今回はリスナーからの質問や回答が混じっているだけに、どうも判別が難しいらしく。一応全てこちらに送ってもらいました」
「ほう、どれどれ」
魔王はそう呟くと、一番手前の段ボールを近寄り、ガムテープをはがし、手紙を手に取った。
「『魔王様、私と結婚してください』普通だな。おっこれも可愛らしい字だな、なになに。…………『私の物にならない魔王様なんて要らない!! 魔王様を殺して私も死ぬ!』 ……うわっリアクションに困る」
「ヤンデレも沢山いますよ……」
「リアルでいると正直引くな……」
山のような手紙を見つめ、これから訪れる作業に対して、途方に暮れる魔王と中ボス。
その時、廊下の方で叫び声と誰かが何かが倒れた音が聞こえ、魔王達は廊下に出る。
「いたたた……あっ魔王様と中ボス!!」
転んだ拍子に鼻を打ったのか、鼻が少しだけ赤くなっている小ボス。
その傍らには、小ボスが躓いた――というより、激突した段ボール。
小ボスの激突をもろに受けてか、段ボールの中身は至る所に散らばり。彩り鮮やかな手紙が廊下に敷かれた赤い絨毯を染めあげる。
手紙を読むだけではなく、まずは十四箱分の手紙を集めなければならなくなってしまった。
再び魔王と中ボスは途方に暮れた……。
セリフの前に『名前』とか書けないかな~などと考えていたが、ラジオ回とか作れば行けるんじゃないかグヘヘヘっと考え作った回。
手紙の仕分けが終わればラジオ回第二回目を書きますw