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第二話『新・魔王城!?』

第二話『新・魔王城!?』



「あんたには『魔王』成分が足りないのよ」

 

 姫が魔王に向かって指を指し、自信満々で足りない事を指摘する。

 

 (こいつ)は、人に指を指してはいけないと教わらなかったのか? 

 でも俺は魔族だから人ではないけど……


「まず、その格好! 何でジャージ姿なのよ!!」


「貴様! いくら俺の主人だからと言ってもジャージの悪口は許さんぞ!」

 

 その言葉に姫は一瞬怯むと


「何でそんなにもジャージに熱い思いがあるのか分からないけど、この際ジャージの事はいいわ」

「だけど何でそんなにも仲間思いで心優しいのよ!」


「国民有っての王だ、下々の者を大切にしなくて何が王か」

 

 その言葉に中ボスや小ボスを含めて部下は、魔王に拍手を送り、中には涙を流す者もいた。


「うっ、それはそうだけど。魔王って冷酷なものでしょ! 何でそうまで歴代の魔王とずれがあるのよ!」


「まあ俺は俺だし、皆に優しくするのは良い事だろう」


「だけどあんたは良い人過ぎるのよ。何で趣味が『お菓子作り』なのよ! 

 魔王の癖に、趣味が可愛すぎなのよ!! 少女かアンタはっ!!!」


「いえ、姫様、魔王様にはお菓子作り以外にも、素晴らしい趣味があるのですよ」

 

 今まで魔王の隣でじっと話を聞いていただけの中ボスが、突如、口を開き、言った。


「他にって何よ」


「手芸もこの城のメイドの誰よりも得意です。

 この私のスーツのボタンも魔王様が買ってくださった後に、自らボタンが取れないようにと、再び付け直してくれたのですよ。

 最近では手作りアロマキャンドルを皆に配ったのですよ」


「だ・か・ら! それが可愛すぎるのよ!!! 

 なんで私より女らしいのよ、『お菓子作り』や『アロマキャンドル』可愛過ぎるのよ。

 そうね、いっそ『人間でキャンドル作り♪』くらいを趣味にしなさいよ!!」


 姫の言葉に魔王含め、部下全員が震えあがっていた。


「えー可愛くない」


「『えー可愛くない』じゃない! その趣味をやめろとは言わないわ。

 ただ、せめて魔王ぽい趣味を持ちなさい」


 魔王ぽい趣味か…お裁縫も駄目、お菓子も駄目、キャンドル作りも駄目。

 ――うーん。


「――あんたが何を考えてるのかしれないけど、やってみたい趣味を挙げて見なさいよ。

 私がそこから選ぶから」


 じゃあ……。


「占い」

「女ぽい、却下」  

「社交ダンス」

「Shall we ダンス?」  

「詩」

「恥ずかしいポエムは黒歴史になるわよ」

「天体観測」

「見えないものは見えないわよ?」

「乗馬」

「えっ乗れないの?」

「いや、自力で飛べるから。――もしかして許可!?」 

「……却下」

「アマチュア無線」

「無線機あるの!?」

「アフィリエイト」

「魔王の癖にお金に困ってるの!?」


「ストォォォォップ」

 姫が急に叫ぶと、俺は既に他に三十個ほど浮かんでいた趣味を言うのを一旦止めた。


「あんた、(わざ)とやってるでしょ!! そうとしか思えないわ。いいえ、そうに決っているわ!」


「姫様、先ほど魔王様が仰られた趣味は全て、既に魔王様がやっている趣味ですよ。乗馬はまだ不出来ですが」


「はあ……」

 

 姫はため息を付くと、もうどうでも良くなったのか、王座に腰掛けた。


「姫、それ俺の席」

「うるさい……」

「すいません」


 凄みある姫の目に魔王はたじろいだ。

 あの睨みなら、そこいらの不良ならすぐさま財布を差し出すほどだ。

 

「何でこうまで、魔王が多趣味なのよ。いいえ多趣味なのはこの際どうでもいいわ。

 だけど何故、何一つ、殺伐とした趣味が無いのよ!!」


「異議ありだ、株もやっているぞ。俺の力で、つい前日、貴様ら人間の会社を一つ、買占めてやったわ」


「………。で、その会社はどんな会社なのよ」


「先月、○○水産で食品衛生法に反してしまい。業務停止処分を受けてな。

 株価が下がり、大幅なリストラが図られる事になってな。

 元より、この問題は一部の経営陣が独自にやった問題であって、下の者の責任ではない。

 だから、そんな経営陣を替えるべく、俺が株を買占め、経営権を乗っ取った。ふはは怖かろう!」


「完全に慈善活動じゃない!! もうあんたが世界を仕切った方が良い気がして来たわ」


「俺は人の上に立つような、立派な人間じゃない」


「現・魔王が何を言っているの!!!??」

「あーもうイライラする」


「三十才越えてから、妙にイライラする……はっ!? 更年期障害か??」

「私はまだ十六よ!!!」

 

 姫は床を足でドンドンと叩き、イライラを全身で表現していた。


「はあ~、全く人間とは不思議だな。直ぐに気持ちが表に出して、それを他者にぶつける。

 明確な悪が無ければ、同じ種族同士で争いを始める」

 

 魔王は「まったく~」と言い、肩を竦め、首をふるふると振った。


「もう良いわ、あんたを変えるのは諦める。だけどその代り、他のを変えるわ」

 

 姫はそう言う、俺の部下たちに目線を映した。

 姫に目線を合わせないようにと部下達が各々、明後日の方向を見ていた。


「あんた達、全員モヒカンなんて良いんじゃない?」

 

 その言葉に部下達は阿鼻叫喚を上げて、王室から我先にと、出て行った。


「部下達をモヒカンにしてどうするつもりなんだ?」

「胸に七つの傷を持つ男くらい来るかと思って」

「――来ないと思う」

「あら、そう」


 以外にもあっけなく姫は引いたな、と思い、不思議そうにしていると。

 姫は残っていた部下……と言っても残っているのは中ボスと魔王だけだが。

 その二人に向かって指を指し、言った。


「まあでも、あんたの部下とあんた、それにこの城には手を加えさせて貰うわよ」


「中ボス、来なさい」

 

 続けざまに姫が言葉を放ち、そのままの勢いで姫は、中ボスを呼んだ。

 

 中ボスは名指しされた瞬間、身体がビクッと震え。目は少し泳いでいた。

 

 見るからに嫌そうな顔をしていたが、姫の呼び掛けを無視する訳にはいかず。

 おそるおそる、姫に近付いた。


「……――お呼びですか、姫様」


「耳を貸しなさい」

 

 その言葉に一抹の不安を抱えながら、渋々中ボスは姫に耳を貸した。

 

 魔王には、姫が何を言っているかは聞き取れないが、内容を聞いて行くうちに中ボスの表情が変化する。

 一瞬驚きの表情をしたと思ったら、次の瞬間にはす不敵な笑みに変わっていた。


「分かりました姫様、それなら三日ほどで可能かと」

 

 中ボスの返答が気にいったのか、それとも三日でその『何か』が可能なのかが嬉しいのかは俺には分からないが。

 姫は嬉しそうにほくそ笑んでいた。


「魔王様、しばらく自室に居てください。

 ゲームの方はRPGを用意致しますので、それでしばらくじっとしていて下さい」

 

 訳が分からないが、特には困る様な事ではないので二つ返事で答えた。



 魔王はその後、中ボスに追いやられるようにして、自室で小ボスとゲームを共に進めていた。



-------------------------



「魔王様。中ボスと姫様は一体何を企んでいるのでしょうね?」


 小ボスは魔王に質問を投げかけたが、その目は魔王の方ではなく。テレビ画面の方に向いていた。

 話し掛けている間。一瞬たりとも、小ボスは画面から目を離す事は無かった。


「俺にも分からん。ただ、あれだけやる気になった中ボスの姿も珍しい」


小ボスと同じく画面から目を離さず、コントローラーを握りながら、魔王も答えた。


「それに何ですか、このけたたましい音は? 城自体を、大改装してるって感じですけど」


 三日前から、夜も止む事無く、工事の音が響いてくる。

 腹に響くような重低音から、耳を(つんざ)くような甲高い音などの色々な音が鼓膜を叩く。

 

 魔王は工事が原因でこの三日間はまともに寝ていなかった。

 騒音で、寝れないというより、近隣の皆さんから苦情が来ないか不安な為に寝付けない魔王だった。


 そんな寝不足な魔王の耳に、ドアをノックする音が微かに届く。


「――失礼します。魔王様、大変長らくお待たせ致しました」


 中ボスが勢いよく扉を開け、俺達の前に現れた。


「こんな狭い部屋に缶詰にしてしまい、本当に申し訳ございません」

「ここ俺の部屋だけどな」


「あっ……、失礼致しました。それよりも、遂に『改装』の方が終わりましたのでどうぞこちらへ」


 寝不足で頭の回らない魔王は何も考えず席を立った。

 魔王と小ボスは、中ボスに連れられ、廊下を歩き。

 その足で城の外へ一旦出た。

 

 そして門から出て、振り返り、その目で『新・魔王城』を見た。


「……。これは何だ?」「……すごい!!」


「何と申されましても、見ての通り魔王城ですよ。

 私としてもやはり、このようなデザインに憧れて居たのですよ」


 ……俺達の前に現れた、『新・魔王城』はそれはそれは……


「うっう、怖い……」


 魔王は半分涙目になっていた。

 この城を歴代の魔王が見たら、きっとうっとりした表情をし、ため息が出るであろう……。

 絶ち込める雷雲。

 凄まじいほどに禍々しい妖気。

 門の端には不気味に佇むガーゴイルの置物。

 それに負けないほどの、いやそれどころかすば貫け恐ろしい、魔王城本体。


 皆だって嫌だろ? ある日、家に帰ってくると、自宅が『悪魔城ドラキュラ』みたいな外装になってたら。


「魔王様?、一体、誰に話掛けてるのですか?」

「――――…………」


 魔王は少し遠い目をしながら、今までの魔王城を懐かしんだ。

 だが、ふと我に返り、中ボスの方を見た。


「あの~、中ボスさん」


「何ですか? 魔王様」


「元に戻しては……」

「却下です」


 うわっ! すっげえ笑顔!

 今まで長く中ボスと過して来たが、こんなに嬉しそうな中ボスを見るのは初めてかもしれない。

 嫌な初体験だな~……


「どう気にいった?」


 魔王はその声の主の方に身体を向けた。


「どうもこうも、何故こんな城……なんだその手に持っている衣装は……?」

「衣装? ああこれの事ね、もちろんあんたのよ。

 魔王であるあんたには、それ相応の格好をして貰わなくちゃ」


 姫はそっと魔王に近付くと、手に持っていた衣装を広げて見せた。

 

 嫌だ! 俺はあんな悪趣味な衣装は着たくない!!!


「どうよ、これ! ドラキュラをイメージして(中ボスが)作ったのよ!!

 あんたの為に頭に付ける飾りも(中ボスが)作ったのよ。

 角くらい無いと格好悪いと思ってね」


 くそっ! 中ボスに余計な物を作りおってからに!! 

 それしても、“かがり縫い”が甘いではないか、これでは布端をほつれるではないかッ!!

 と、的外れなツッコミを脳内でしている魔王だった。

 

 結局、魔王はその後、姫と中ボス。更にはノリノリの小ボスによって、その衣装を(強制的に)着せられた。



----------------------------------------------------------------



「ココが魔王城か!!??」


「……ああ、たぶんそうだ、住所もあっている」


「えっ!? マジかよ!! 国王が発行した魔王の特徴の紙には、こんな事書いてないぞ!」


「私、嫌よ! お金が沢山貰えるって聞いたから貴方達について来たけど。

 こんな城に住んでいる魔王なんかに勝てるはず無いわ!!」


「俺もパス。確かに姫を助けたら、姫と結婚して、王様になれるかもしれないが。死んでちゃ意味がねぇ。

 俺は帰らせて貰うぜ。報酬分くらいは働いたぜぇ! お釣りが来るくらいだ!」


「怖気づいたか貴様ら! 特にそこの“弓に両手剣”持ちという、意味不明な男!!

 貴様は、ただ飯食らって、此処まで来ただけだろうに!」


 魔王城の門扉(もんぴ)の前で言い争い始める勇者達。

 そんな、勇者達の耳に下品なほどの大笑いが聞こえ、争いが一旦止んだ。

 


《ガハハハハ、よくぞ来た。勇者達よ》

 

 突如、聞こえて来た声に魔王城の扉の前に居た勇者達は驚いた。

 門の前に備え付けてあるガーゴイルを模したスピーカから声が発せられる。


《この城に来たからには貴様ら生きては帰れぬぞ。…………????》


《中ボス。これ何て読むの?》


《それは『ミナゴロシ』ですよ。魔王様》


《えっ俺殺すの?》


《形だけで良いから読みなさいよ!!》

 ベシッ


《いててて。えー、……――ゴボン。

 この魔王城に来たからには貴様らは生きては帰れぬぞ。(みなごろし)にしてくれるわ》



 ところ変わって魔王城、放送室。


「…………――――ふう。おし、これで満足だろう姫? ではお客様が来たわけだし。お茶の準備してくるよ。

 あっ……でもお茶受け無いな。ちょっと待ってて、クッキー焼くよ」

 

 魔王はマイクから口を離し、席から立ち上がろうとしていたら。姫は再び口を開いた。


「あんた……自分を殺しに来る相手にお茶出してどうすんのよ……」

 

 えっ……まさか勇者達って俺狙いなのか? 俺何か悪い事したっけ……??


「すっかり失念してるようだから言うけど、私はあんたの人質なのよ」

「いっ、要らない!!!!」


「要らないって何よ! 失礼ね!」

 

 俺達がそんなやり取りをしていると中ボスが少しオロオロした様子をして、こちらをチラチラと見ていた。


「どうした中ボス」

「あの~大変申し上げ難いのですが……。――マイク入ってます」

「「 !? 」」

 ガチャガチャガチャ

 ブチッ




『…………』


「……あーその。なんだ、魔王の特徴ってなんだっけ?」


「常にジャージ姿で、趣味はお菓子作り。

 毎週火曜日の十二時頃に近所の方と井戸端会議に参加してる事もあります」


「それ以外にも、地域清掃も欠かす事無く参加しています。現在は町内の会長をやっておられます」


「その『近所の方』と言うのは魔族なのか?」

「……人間です」

「「あー」」


「何だか解らないけど、もういいや。俺も帰る」

「そうですね帰りますか」

「「賛成~」」

 

 こうして、勇者御一行は、魔王城から去って行った。



 そして、一人寂しくテーブルに座る魔王。


「勇者達御一行、遅いな~。クッキー冷めちゃったよ、…………――もぐもぐっ、ぱく、んぐっ……美味しい」

……うっうっ。相変わらず行き当たりばったりな書き方。タイトルなんて毎回適当に考えてるだけに、もう少しまともなのが思いつけば変えたい!

だが今現在思っている事は「あ? タイトル? いらねぇんじゃねえ?」と心の中で悪魔が……

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