表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/54

第十二話『面白い事は“起こす”もの!?』

第十二話『面白い事は“起こす”もの!?』



 いつものように暇を持て余している魔王は、寂しさに耐えかねて、中ボスの部屋に出向いていた。


 魔王に代わって、政務に追われる中ボスは、魔王に構っている余裕は無かった。


 結局、何もする事が無いのか、魔王は呟くように言った。




「面白い事“起こそう”かな~」


「…………。――あっ? すみません何か言いましたか?」



 今まさに部下である中ボスに、軽い無視を受けた魔王。

 魔王が涙目になってから初めて反応する所を見ると、無視と言うより、眼中に無かった、と言った方が正しいかもしれない。


「そうか聞いて無かった。まああれだ。面白い事“起こそう”かと思ってね」


「面白い事“起こそう”?  面白い事“起きない”かな、とかではなく?」


 書類から目を放す事無く、中ボスが訊く。


 その反応に気を良くしたのか、(せき)を切ったよう話し出した魔王。


「俺はな。

 平平凡凡な主人公が、ある日、ハプニングに巻き込まれる。

 という、テンプレのようなストーリには飽き飽きしているのだ!!」


「殆どの二次元作品を否定しましたね。魔王様の好きなギャルゲーとかもそんな感じではないですか」


 魔王は、座っていた席から勢いよく立ち上がり「だからだよ!!」と言い、中ボスに詰め寄った。


「だからそこ、俺は主人公からアクティブに動くストーリーが好きなんだ!!

 貴様ら!! 

 どんなに願っても異世界に飛ばされるとか、美少女が突如現れるとか……そんなものは無いんだよ……」


「……唇を噛み締め、目からは悔し涙を流して言う事ですか、魔王様」


 中ボスの言う通り、魔王は下唇を噛み、硬い握りこぶしを作り。

 目からは、今にも血の涙を流すのではないか? と思うほどの悔しさと悲しみの色に染まっていた。


「俺だって昔は憧れたさ……『朝起きたら、隣に謎の美少女が寝ている!?』という演出に……

 今だって時々、ベットの端で寝て。いつでも美少女が寝て居ても良いように対策していたくらいだッ!!」


「そんな事していたのですか。

 ですが、そのような事をしていたのであれば、(なお)の事、受動的な主人公が嫌い。

 と言うのには(いささ)か矛盾を感じますけど」


「だがな!! 待っていても美少女は『朝起きたら隣に!?』的な事は起きないんだよッ!!」


「実際に起きたら、普通に住居侵入罪ですよね」


「そう!! だから、俺は自らそれを“起こす”!!」



「起こすと言っても。具体的に、何をするのですか?」



 手で、少しだけ下がっていた眼鏡を元に位置に戻しながら中ボスが問う。


「美少女を何処から連れて来て、隣に置く!!」


「普通に誘拐罪ですね」


「…………」



「黙るのも結構ですけど。態々、リスクを冒して何処から連れて来なくても、姫様でも隣に置けばいいのでは?」


「例えば、クマのプーさ○が好きだったとしても、実際のクマを隣に置いて寝たいと思うのかお前は?」


「仮にも姫様を猛獣扱いですか。あっ、姫様、おはようございます」




 中ボスの言葉に、魔王は素早く態勢を変える。


「どうかお許しください!!!」


「……――すいません、魔王様、今の言葉は嘘です。

 まさか『姫様』と言った瞬間に素早く扉の方を向き、光の速さで土下座態勢に移行するとは思いませんでした。

 目を見張るほどのゴミクズ精神ですね」



 魔王は安心しきった顔で、土下座の態勢を崩し、中ボスに再び向き直った。

 と、その時。


「中ボス、おにい見かけなかった?」

 

 突如、妹が中ボスの部屋に“ノック無し”で入って来た。

 魔王は妹の方を向き、そして再び中ボスの方へ視線を移したが、そこには誰も居ないように“見えた”


「あれ、おにいだけ? 中ボスは?」


「お前の位置からは机しか見えないだろうが、机の下に“避難訓練”見たく、隠れているぞ」




 その言葉に妹は机の方に向かい、回り込んだ。


「何してんの中ボス??」


「…………“避難訓練”です」


「そのまま、BL(快楽)の世界に“避難”させてあげようか?」


 不敵に笑う妹の顔に、中ボスは顔を青くした。


「それで、お前は何をしに来たのだ?」



 魔王の言葉に、妹は中ボスの下を一旦離れ、魔王の方に近付いた。


「なんかね、今日クック佐藤が急病で休むそうよ」


 中ボスは忍び足で、妹からなるべく距離を取るように移動し。

 魔王のやや後方の位置に付くと、妹の眼を気にしながらも、口を開いた。


「……、随分急ですね。私はそんな話は聞いていませんが?」


「さっき連絡が来たところよ、困るだろうからすぐに伝えようと思ってね」


 中ボスは妹に「ありがとうございます」と短くお礼を述べた。


「それと、クック佐藤からの電話を取ったのは姫よ。そして悪い事に今、姫は厨房よ」




「妹よ、なぜ姫を一人にした!? いやいやそれよりも。

 何故か、面白い事“起こす”前に、あっちから面白い事が“起きた”ぞ!?

 明らかにこれは『ヒロインの飯は不味い』フラグだろう!!!」


 あれほど自分で面白い事を“起こす”と言っておきながら。

 不運と言う名のハプニングが勝手によって来た魔王。


「とにかく、様子を見に行くぞ」


 魔王の言葉に全員が同意した。



--------------------------------------------------------------



 ところ変わって厨房。

 そこでは忙しく夕食を作る姫の姿があった。


「えーと、どれどれ……何これ? 目玉? 栄養価は高そうね」

 

 そう言い、姫はその目玉? を鍋の中へ放り込んだ。

 先ほどから、幾重にも渡り、手当たり次第、用途不明の謎の食材が鍋に放り込まれていた。

 既に鍋の中には五人分はどころか、二十人分にもなるのではないかと思うほどの大量のスープが出来上がっていた。

 

「メインが無いわね、やっぱりメインは肉よね! ……うーん、特に無いみたいね……そうだ!」


 姫はその言葉を最後に厨房を去り、小ボスの部屋へ向かった。




「あったあった。良かったはちゃんとあって」


 厨房に戻ると、先ほど手に入れた、生きの良い食材を捌き始めた。

 その手慣れようは、この食材に手慣れた者だけが出来るスピードだった。


「でもこの量だとみんなで分け合うにしては少ないわね。仕方ない、スープにブチ込むか」


 女の子らしからぬ言葉を呟きながら、姫はスープに肉を入れた。


 と、その時。


「姫! フリーズ!! そこを動くな! 何も触るな! 何も作るな!」


 魔王が勢い良く厨房に入ると、開口一番にそう言い放った。


「ああ……もう遅かったようです」


 散らかった調理道具を見つめながら中ボスが呟いた。

 特に、血だらけになったまな板の方に視線が集中していた。


「一体……何を捌いたのだ!?」


「ヒ・ミ・ツ♪」


 全然可愛くも無くともねえよ、と言いそうだったが、その言葉を魔王は呑み込んだ。


---------------------------------------------------------------------------------------------





 後日、原因不明の謎の集団食中毒を起こした魔王城に我々は来ていた。

 彼らは、我々のインタビューに渋々(しぶしぶ)ながら引きうけてくれた。

 



匿名希望。『中ボス鬼畜攻めの小ボス健気受け』さん。


Q、

《原因は一人コックが作った料理だと聞きましたが、どの様な料理だったのですか?》




 彼女はその時に情景を思い出して居るのか、顔を土気色にしながらも、言葉を紡いでくれた。


A、

《口の中に入れた瞬間にまず感じたのは、『汚泥』? と言った口触りだったわ。

 口いっぱいに広がる酸味と何とも言えない泥臭さ。それにあの見た目……紫よ! 紫!!

 それも、何故か食べている途中で、それはもう鮮やかな蛍光色の緑に変化したのよ!!

 あれは最早、兵器よ! 兵器!! マジックウェポンじゃなくて、バイオウェポン!!》


 彼女はその言葉を最後に、ハンカチで口を覆い隠し、トイレへ駆け込んだ。





 匿名希望。『何故、現・魔王はこんなにも馬鹿なのか? 一回死んでくださらないかな~』さん。

Q、

《先ほど、アナタより先にインタビューに答えてくれた方は、見た目がおそろい物だった。

 と仰っていましたが、どうして食べようと思ったのですか?》


 彼は病的なほどにやせ細った顔、(しか)め。答えた。


A、

《確かに、見た目は“あれ”でしたが。

 如何せん姫様が相手なので、一か八かで食べました。まあ、結果はこれです》

 

 そう言いながら彼は手首に刺さっていた点滴を見せた。

 彼は、その言葉を言った後、ベット脇に置いてあった錠剤が入ったボトルを手に取った。

 そして、三十個ほど口の中へ放り込み、ボリボリと噛み砕いた。


Q、

《それはなんですか?》


A、

《――胃腸薬と言っておきますよ》


 彼の言葉には少し含みがあったが、我々は深くは追求しなかった。



 



 匿名希望。『最近、俺の扱いが酷い。特に、俺の前にインタビュー受けたやつ。お前だ! お前!』さん。


Q、

《ロリコンと聞きましたが?》


A、

《どちらかと言えばお姉さまタイプの大人の女性がタイプだ》



Q、

《テンプレのような、王道設定には飽き飽きと言っておられましたが、

“義理”の妹が居る時点で十分、王道設定だと思うますけど》


A、

《だからと言ってBL(ボーイズラブ)好きの妹は欲しくは無かった》




Q、

《王道展開である、『ヒロインの飯は不味い』の展開になった訳ですが、ねえねえ、今どんな気持ち?》


A、

《心の中で必死に『もしかすると、ヒロインの飯は意外や意外、美味しい』

 という、希少展開も期待したが、駄目だった》


Q、

《『最近、勇者来ない』と言う声が多数寄せられていますが、どうお考えですか?》


A、

《勇者が来るか来ないかは、俺がどうこうする事ではないだろう。

 あと、何故、俺の質問だけこんな個人的なんだよッ!!?》


 我々はこれ以上の質問は危険と思い、急ぎ撤退した。





 匿名希望。『ピョン太行方不明』さん。


 彼は城内の中庭などの草むらを探りながら、私達のインタビューに答えてくれた。


Q、

《料理を食べた中で、唯一、病院に担ぎ込まれなかったのがアナタだと(うかが)いましたけど。

 食べても異常は無かったのですか?》


A、

《ん? ああ、姫ちゃんの料理の話ね。

 うん美味しかったよ。色々な色に変化するスープでね!! 凄いの七色に光るんだよ!!

 トイレで規制音(ピー)した後も、その規制音(ピー)がね! 光ってたの!!》


 彼はそう言いながら、嬉しそうに排泄物の話しをしたくれた。


 料理を食べたあとも平然としていたと言われている彼に、あまり有力な言葉はでないだろうと思い我々は引きあげた。


《ねえねえ、ピョン太見つけたら教えてくれない? 何処かに行っちゃってね》


 彼の言う、『ピョン太』とやらが何かは知らないが、我々はピョン太を捜索に来た訳では無いので適当にごまかし去った。



匿名希望。『私の飯が食えないって言うの?』


 今回、私達は、この集団食中毒事件を起こした、コックに直接話しを訊く事に成功した。


Q、

《魔王城で住み込みで働いている給仕やその他、七名を病院送りにした訳ですけど、それに対して何か弁解はありますか?》


 我々の質問に彼女はまったく悪びれる様子は無く、淡々と語った。


A、

《世界がそう望んだから、私の料理は不味くなった、それだけよ。全ては作者()の意思よ》


 彼女は、諦めたかの様な顔でそう答えた。

 まるで、彼女の料理はどんな事をしても不味くなる事が決定しているかのような口ぶりだった。

 

《それで、アンタ達も私の料理を食べに来たの?》


 その後、インタビューを行った、記者達の断末魔だけがボイスレコーダーには残っていた。

 我々の下には、差出人不明の宅配が届き。

 その中には、記者達が残したと思われる、メモとボイスレコーダーが入っていた。

 

 今は行方不明になっている記者達が、命がけで手に入れたのであろう、この情報。

 週刊誌のトップで出せた事を嬉しく思う、並びに、記者達が逸早く、見つかる事を切に願うばかりだ。




「…………」


 魔王は今読み終えたばかりの、週刊誌、そっと焼却炉に投げ込んだ。


「エロゲの続きやるか!!」


 そう言い、魔王は王室へと帰って行った。



読者「ふむふむ、作者、落ちは、落ちは何だ?」

作者「あ?ねぇよそんなもん 」

ギアーズ・オブ・ウォー好きにしか分からないネタを言ってしまった……

気になる方は≪プランB≫とかで調べるといいです。たぶんすぐ出ます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ