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第十一話『姫が魔法少女!?』

第十一話『姫が魔法少女!?』



「はあ……空を “不自由” に飛びたいな…………」

 


 王座に座る姫の隣で、パイプ椅子に座る魔王。

 そのパイプ椅子は、背もたれや、お尻の部分のスポンジは全て剥がれて、クッションとしての機能を全くと言って良いほど失っていた。

 そんな椅子に座る魔王は、既に威厳(いげん)はまったくと言っていいほど感じられない。

 ただのモブキャラ的な存在感である。更に悪く言うと背景。


「魔王? アンタまた一段とバカになったのね。のび○だって、そんな事、ドラ○もんに頼まないわよ」


 冷ややかな視線が姫から魔王へと注がれる。


「だってさ、自由に飛べても楽しくないじゃ?」


「どんな基準で楽しくないか、楽しいのかを決めてるのかは知らないけど。

 普通は自由に飛べた方が好くないの?」


 姫も疑問に魔王は「甘いな」と返し説明を開始した。


「あのな、いつでも自由に飛べたらつまらないと俺は考える。

 貴様だって好きな事をいつでも出来たらいずれ飽きるであろう?」


 姫はすぐさま「一理あるわね」と返し、魔王は再び話を続けた。


「俺が言いたいのは、どんな物でもいつでも自由に出来たらある意味では不幸だと言う事だ。

 まあ具体的に言うと、」


「空を飛ぶ為にまず。誰が、何に搭乗して、何時、何処で、どの位飛ぶのか。

 更には何故飛行する必要があるのかを(まと)めた必要書類を航空局(こうくうきょく)に提出する」


「なんか、急に不安な気分になったわ……」


「まあ、まだ序盤(じょばん)だ、黙って聞け。

 それでだな、その書類を航空局の受付に渡し、三日ほど放置される。

 そして、ミスに気がついた職員が慌てて上司に提出し、厳粛(げんしゅく)な審議の末に。

 ≪飛行許可が下りない≫くらい不自由(理不尽)だと良い感じだ」


「許可降りて無いわよね!? 降りて無いわよね!? 不自由どころか飛べもしないじゃない!」


「まあ時には許可が下りないくらいが理想形だ、安易に空を飛べても(きょう)が無いからな」


「そんないい加減な体制だったら、緊急の時、困るじゃない」



「その時は金に物を言わせる!!」

「ワイロ通じるの!?」


「金で動かない組織など無い!!」

「汚い世界ね……」

「ああ……」


 何故か二人は悲しそうに遠い眼差しで窓の外を見た。



「最近、思っているですけど、姫ちゃんも結構“変人”ですよね?」


 小ボスはお菓子を食べながらそう言い放った。その言葉に姫はひどく焦っていた。


「ち、ちちち。違うわよ!!! 魔王! アンタが変人だから、それと喋る私まで変に見えるのよ!! ねえ魔王?」


 姫はまるで威圧するかのような目で、魔王を見た。



「あっ……あああ、ああもちろんだ。俺様が変人だから、姫まで変人に見えるだけだ!!」

「尻に敷かれてますねぇ」



「「違う!!」」



「姫、同時に喋るなよ! また揃ったではないか!!」


「アンタが言えた事じゃないでしょ! ……ちょっとまって、小ボスに笑われてる……屈辱だわ……」


 項垂(うなだ)れるようにして、姫は王座に座った。



「なに? またおにいと姫の夫婦漫才?」


「頼む妹よ、これ以上姫を刺激しないでくれ……俺が困る……」




 そんな、やり取りをしていると、中ボスが、滑るようにして王室に入って来た。


 皆、特に気にする様子はなかったが、中ボスはまっすぐ姫に歩みよると、一つの紙を手渡した。


「ん、ありがと、中ボス。え~なになに……『ドラマ出演のご案内』……ナニヨコレェ?」



 何故か語尾が片言になる姫、俺達は姫の方に集まり、魔王は皆に見える位置に紙を移した。


「姫がドラマ出演? それも主演? なにこれ悪質なイタズラ?」


 妹がそう言うと、中ボスは首を横に振り、説明を開始した。


「いえ、正式な依頼です。受けるかどうかは姫様次第ですが、ギャランティーはかなりいいですね」


 姫は目を輝かせながら、出る! 絶対出る!!

 と言い、中ボスもすぐさま携帯電話を取り出し、テレビ会社に電話した。



--------------------------------------------------------------------------------------------



 台本を渡られた辺りから、雲行きが怪しくなっていたが。

 撮影スタジオに着き、衣装に着替えた姫を見た時、魔王は、やっぱり、という言葉しかでなかった。



「これは……どう言う事よ……」


 コメカミに青筋を浮かべながら、監督と思しき男を睨む姫。


「ぷっ、あははははは。何よ、『魔法少女ランページ・姫』って!! ぷっぷはははははは」


 久々に盛大に笑う妹の所為で、既に爆発寸前の姫。

 これ以上刺激すれば、撮影スタジオが吹き飛ぶほど暴れるだろう。

 まさに暴れまわる(ランページ)にふさわしいと言えよう。  


 ドが付くほどの可愛らしいフリルの着いた衣装に袖を通す姫。

 確かに……確かに、似合ってはいるのだが、正直痛かった。


「よくお似合いですよ、姫様」


 中ボスは頬がヒクヒクとしていたが、あれは笑っている訳でも、馬鹿にしている訳でも無い。

 どちらかと言えば、『この仕事を持ってきたのは私……もしや、殺される!?』という不安からくる表情だった。


「すいません、撮影の方、始めてもいいですか?」

 

 若いスタッフが姫に近付き、問う。

 まだ新人なのだろう、仕事への情熱があふれているのか、元気よく姫に聞くが、

 そんな、声に姫はゆっくりと振り向く。


「ヒィ!!」


 姫の睨みに、短い悲鳴を上げ、若いスタッフは口から泡を吹き倒れた。

 ココから立ち直れたらきっと彼は今日という日の経験を生かし、強く生きていけるだろう。

 立ち直れない確率の方が高そうだが……と考えながら、魔王は心の中でそっと合掌した。


「ふん! まあいいわ、もう契約書にサインしちゃった訳だし、やるわよ」


 そう言い、姫とスタッフ達は撮影の準備に取り掛かった。


-----------------------------------------------------------------------------------------



『がはははは、貴様が魔法少女ランページ・姫か!! 小娘と聞いていたが、こんなにも貧相だとはな!!』


 姫は大口を開けながら悪態を吐く着ぐるみの化け物? を崖の上から見据えていた。

 

 撮影がスタートしてからはマシな表情になっていたが、先ほどの化け物の台詞で再び青筋をコメカミに浮かべていた。


 


 ピキッ

 …………なんだこの音は? 破砕音? まさか~ここは魔界では最新のスタジオだし、そんな事はないか~。


『……いたいけな、子供達の夢を奪う怪獣よ! 私のランページステッキで粉みじんにしてあげるわ!!』



 最早、ドラマではなく、特撮だよな……と魔王は思いながらも、その様子を黙って見続けた。




『ぐぁははははは、掛かって来い! ランページ・姫よ!』


 姫は、とう! 、と短く言いながら、怪獣とやらの近くに下りた。


『わっ、わわ、』


 何故か若干、口ごもる姫を疑問に思い、魔王は手に持っていた台本へ、視線を落とした。


 

 

 !? なんだこの台詞は!? こんな台詞を姫に言われるというのか!!!?? 命知らずもいいところだな。


『わわ、私の、胸は小さくても、そんな私の胸の中には子供達の夢が沢山詰まっているのよ!!』


 うわ~……、と声に出てしまったのは魔王だけでは無かった。

 中ボスや妹、更には小ボスですら哀れみの眼を向けていた。


『やーい、貧乳! 貧乳!!』


 子供のように叫ぶ怪獣。

 正直、このドラマ? は、どの年層の為に作っているのか(いささ)か疑問であった。


『…………』


 顔を下げ、肩をぷるぷると震えさせる姫。

 今にも暴れまわりそうなほどだった。


『くっ、食らいなさい! ランページスティク!!』


 力任せに振り下ろされるランページスティク。

 

 そのスティクは怪獣? の血で赤く染まり、姫自身の、その血を浴びながらも笑いながら、スティクを振り下ろし続けた。



 結局≪魔法少女ランページ・姫≫の放送は叶わず。

 その映像はお蔵入りとなったが。

 現在、姫の行動にインスピレーションを受けた、あの時に若いスタッフが新しいスタジオを立ちあげ。

 ≪暴虐少女ランページ・姫≫と名前を変え、映像化していた。


 当然の事ながら、その作品には姫自身は出演していない。




 だが、その作品の事で、今、魔王城にまたしても問題が起きていた。


「私が、その≪暴虐少女ランページ・姫≫のラスボス役で出演!?」

 

 魔王城に響く、姫の声。

 当然、前の事で懲りた姫は断り、企画は頓挫したが……。

 








『暴虐少女ランページ・姫の前に現れた、最後の敵……それ名は……魔法少女ランページ・姫!?

 その暴虐さはまさに最――――』プッツ


「…………」

「……――テレビ見てる時も油断ならないわね」

「ああ……」

 

 テレビを見ている時に流れたコマーシャル……、魔王は慌ててテレビを消し、姫もため息を吐く。


 一体誰が姫の代わりに出演しているかは(さだ)かでは無いが、

 姫も魔王もあまり深く、考えない事にしたのだった。


                      END

 

 

 

 

  

魔法少女……あのフリフリ可愛いよね~♪

でも、僕の脳内では、姫も大体は可愛らしいタイプの服を着ていますよ。


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