第一話『新・魔王誕生!?』
この小説には変態などが多少登場しますが、作品にはなんら問題は御座いません、どうぞご安心してお読みください。
尚、誤字、脱字、誤変換などかありましたら感想の方でご指摘いただけると幸いです。
それ以外にも言葉の使いまわしについて間違っている所があれば是非教えてください。
前置きが長くなってしまいましたが、このように作者は悪ふざけが過ぎる所があります。程よく叩いてあげて下さい。確実に凹みます。
第一話『新・魔王誕生!?』
「魔王様、そのモンスターには水属性は効きませんよ」
「おお、そうであったか。なら封竜剣で行くか」
「流石は魔王様、それは妙案です」
「そうであろう! 俺はセンスが良いからな~」
ガハハハハと大口を開け、携帯ゲーム機から顔を上げると、
そこには、やや呆れ顔の姫が居た。
「あんた達、何をしてるの?」
心さえも凍らすほどの冷たい目線が俺達に当てられる。
そんなごみを見るような目で見なくても……
「ああ、これか? これはな。
昔据え置きで出てたゲームの携帯ゲーム機版の、新作ゲームの……」
最後まで言おうとしたが、姫が怒声でそれを遮られた。
「そんな事は聞いてないわよ!! なんでこんな所でゲームをしてるのよ!!!」
「えー、今ってお昼休みだから、自由にしてて良いって言ったのは姫じゃん」
その言葉に姫は肩をプルプルと震わせていた。
「そんなことはどうだっていいのよ!!!
何で魔界トップとその補佐が仲良くゲームしてるのよ!!!
他にやることが有るでしょう! 魔法の練習とか、私を倒す為に策を練るとか。
てかそれより、何でそんなゲーム機があるのよ!!」
「だって、姫と戦ってもどうせボコボコにされるだけだし。
あと中ボスと小ボスとは小学校からの付き合いだし、仲良いのは当たり前で。
それに中ボスには頭脳で負けて、小ボスには力で負けてるからな………。
ああ後、このゲームは先月から、ア○ゾンで予約しておいたんだ。
最近では『発売日に届かない』とか言われていて、やや心配していたが、
ちゃんと届いたぞ!! 流石はアマ○ン」
姫は、はあ……とため息を一つ吐き、俺達の近くに腰を落とした。
「前々から思ってたんだけど、あんた達って何で人間界にいるのに悪さしないわけ? 普通するでしょ、人間より強い種族に生まれたんだから」
「魔王様はゲームが買い易いから人間界に来たみたいなものですから、
あっ、魔王様そこ、ピッケル使えますよ」
「あっ、そうかここでも採掘出来るのか……
――別に俺だって魔界にア○ゾンが配達してくれれば、人間界には来なかったぞ」
「お前だって、俺達魔族を利用して、ここにいるのだから、結果的には助かっているだろう」
「それはそうだけど、貴方達の方が力も上なのだから。
普通、人間界を手に入れてやるぜー的な事をするんじゃないの?」
「どうせ人間界を恐怖に陥れても、勇者とか現れて、俺が殺されるだけだし。
まあ平和に過ごしていてもこんな事が起きるのだから不思議だけどな。
あっ……中ボス、肉忘れたわ、くれよ」
「あれほど装備品のチェックを促したのに、また忘れ物ですか……
そうですね、確かに歴代の魔王様は、皆。
『世界を我が手に』を掲げ、人間との争いをしていましたが。
私たちの主である。
現・魔王様は、その様な事に囚われる事無い、柔軟な発想をお持ちのようですし」
「俺達の心配より、姫はどうなんだよ? 現・国王の『娘』である、お前が、身勝手な理由で城を離れていいのか?」
姫は一瞬顔を伏せ、短くため息を付くと、再び顔を上げた。
「お父様が決めた男と結婚するなんて嫌よ。
私は、私より強い男性としか結婚する気は無いわ」
……この女より強い男は何処に居るのだろうか?
それに、魔王軍を一人で壊滅させるような女が、あの肥え太った国王から生まれるなど、誰が予想したか。
「それに、魔王城に居れば、各国から、魔王を倒すべく、沢山の猛者が集まるはずよ。
それにお父様は、『娘を救い出した者にを婿に』と発表したわ」
確かに国王は、娘を助け出した者を婿にと発表しているが、この王は、その娘が魔王城を指揮しているのだと知っているのか?
「魔王城に勇者を集める為には魔王である、貴方に魔王ぽく居て貰わなくては困るのよ。
そんなゲームにかまけてもらっては困るのよ」
「ほうほう、本格的にお前が魔王に見えて来たな。おっやっと死んだか、お疲れ~」
「これで魔王様の最強火事場装備が出来ますね」
「ああ、お前のおかげだ、感謝している」
「あんた達は、私の話を真面目に聞いているの?」
低く冷たい声が聞こえる、その声に俺達が顔を上げると、姫は満面の笑みを浮かべていた。
ピリピリと空気が歪むのを肌で感じる、本能が逃げろと俺に言っているような気がする。
「……死ね」
姫がそう短く言うと、俺達の携帯ゲーム機が物凄い爆音と共に吹き飛んだ。
ああ……俺のプレイ時間五百時間………
「魔王様、私は千時間です」
中ボスが悲しそうにそう呟いて、イスから崩れ落ちた。
「ふん、私の話を真面目に聞かないからよ」
改めて、こいつが『最強』である事を実感した……
こんな奴なら世界征服も容易いかも知れない。
一週間前………
!?
凄まじい爆音と共に、また一つ、城の関門が破壊された音が耳に届く。
「今の音は何処からだ!?」
近くにいた中ボスに今の戦況を聞くと。
「はっ! 第二ゲートも突破されました! サキュバス部隊を迎撃に充てましたが、連絡は途絶。
上層部は全滅と判断し、第三ゲートを封鎖しましたが、突破されるのも時間の問題かと……」
クソッ! 人間共め! 我らをこの世界から根絶させようというのか!
明確な悪が無くなれば、次に起こるのは人間同士の争いだと言うのがまだ分からんのか!!??
「敵の規模はまだ把握できないのか!?」
「はい、敵の進行速度から竜騎士などの移動力に長けた部隊だと、皆は予想していますが。
どう考えても、突破力が異常です。
こんな部隊が人間共にあるとは聞いていません!」
「聞いていなかろうと、現に存在しているだろうが! 第三ゲートに残存部隊を全て終結させろ! 私もすぐに向かう」
「はっ! ご武運を『魔王』様」
魔王の一番の親友であり、頼れる部下である、中ボスが背中を見送る。
彼には私が倒れた後の、後任を任せてある、後の事は中ボスに任せておけばいい。
撤退も彼が指揮してくれるはずだ。
「第三ゲートまであとどれくらいだ?」
「このペースであと二分ほどです」
部下の中で一番、力に長けた小ボスが私と共に第三ゲートに待機している、部隊に合流に向かう。
と、その時。
!!!
爆音と共に第三ゲートが崩れ落ちる音が耳を劈いた。
すぐさまゲートに到着したが、そこに有ったのは。瓦礫の山と今ある魔王城の全戦力と行っていいであろう部隊の山であった。
「ふん、遂に真打ち登場ってわけね。待ちくたびれたじゃない」
黒煙に包まれた向こうから、澄んだ声が聞こえる。
「魔王様! お下がりください、ここは私が時間を稼ぎます、その内に逃げてください」
「現・魔王である、この俺に逃げろと言うのか! お前たち有っての俺だぞ、王がお前達を守らなくてどうする!?」
「魔王あっての私達です!! 王がいなければ私達は存在すら意味がありません!!」
「……分かった、だが死ぬな、これは命令だ!」
魔王はそれだけいい、小ボスを残し、全速力で中ボス達の、この事態を伝えに向かった。
「話は付いたかしら?」
「随分と余裕ですね? まさか貴方だけでこれだけの部下達を倒したというのですか?」
「そうだとしたら?」
黒煙が晴れ、そこから現れたのは赤髪の少女、まだ十五、六才と言ったところか、
幼げに見える少女の容姿には似つかわしくないほどの大きな鎌を腕に持っていた。
一人の人間、それも少女がこれだけの事をやってのけたと言うのか……
「貴方がそれだけの力を持っていたとすれば、どうやら私は生きて帰れそうにありませんねっ!」
小ボスはその言葉を最後に、単身、その少女に突撃を掛けた。
-----------------------------------------------------------------
「ぎゃあああああああああああ」
魔王の後ろから小ボスの叫び声が耳に届く。
その声に一瞬、足を止めるが、再び走り出す。
「あの小ボスがもうやられたと言うのか、予想以上の戦闘力らしいな――それにあの声、あの声は確か……、」
「魔王様!!」
その声にすぐさま足を止める。
「魔王様ご無事でしたか!!
悪いお知らせがあります。
上層部の方々が予備隊を引き連れ魔界へと撤退を開始しました。
私も止めはしましたが、彼らは、魔王様が王座から離れた時点で、『魔王様』の権限は無効になったと言い。制止を振り切り逃亡しました」
「所詮は人間界に金儲けに来た連中だ、放っておけ。それよりもだ、」
俺は先ほどの情報を中ボスに報告する。
「敵は一人と言う事ですか!?」
「ああ、おそらくそうだ。それ以外にも気になることがある。
俺の聞き違いだといいが、あの声は確か『現・国王』の……」
突如、後ろから届いた声によって話が遮られる。
「遂に追いつめたわよ、『魔王』様」
その声に俺達は振り向くと、まるで大量の返り血で染まったかのような赤色の髪に大きな鎌を持った、まるで死神のような少女が立っていた。
「貴方を倒せば、魔王はいなくなる」
「貴様! 俺を倒せば、次に起きるのは人間同士の争いだぞ!! 分かっているのか!!!?」
「ええ、分かっているわ、だから貴方には魔王を続けて貰うわ、ただし最高権力は貴方の物では無くなるわ」
その言葉に俺達は驚愕する。
俺に魔王を続けて貰う!? どういう企みだ? 何の意味がある?
「――では、その次期最高権力者とは誰だ?」
魔王の言葉に少女は不敵に笑い。
「――この私よ!!」
少女はそれだけ言うと、目にも止まらぬスピードで俺達の懐に入り、
中ボスの鳩尾に鎌の柄頭を当てた。
その攻撃で中ボスは慣性の法則に従って後方に吹き飛んだ。
「中ボス!!!」
魔王は慌てて中ボスに近寄り、状態を見た。
どうやら意識を失っているだけで、死んではいないようだった。
「殺してはいないわ、私は有能な魔族は殺さないわ、私が使えないと判断したら死んでもらうけど」
「では、他の部下達は何故殺した!!」
「貴方の部下も殺してはいないわ。殺していたら貴方が味方にならないもの」
味方!?
この城の最高権力を手に入れて、それだけでは飽き足らず、部下や俺さえも手に入れようと言うのか!?
そんな事をして一体なにをしようと言うのか!?
「貴様の目的は何だ!」
「さっきも言ったでしょ、この城を貰うわ」
「この城だったらお前にくれてやる。だから部下だけでも解放しろ」
その言葉に少女は、困った顔を浮かべながら腕を組みをし、しばし考えた。
「いいわ、貴方と、そこに転がっているの、これに先ほど戦った少し骨のある奴。
彼らとそれ以外に城を維持する為に最低限必要な人材以外は解放するわ。
それで満足?」
こんな二〇年も生きていない人間の子供に良い様に使われる、俺達が一体なにをしたと言うのだ。
だが、今はその提案に乗るしかない。
「分かった、私は今日からお前の従者だ。お前に従おう」
「あははははははははは、私の従者が『魔王』とはね!! 本当に面白いわ」
この女……悪魔だ。
膝を折り、『現・魔王』でありながら、何も抵抗できない、自分の無力さを痛感する魔王だった。
----------------------------------------------------------------------------------------