Judah―ユダ― 番外
彼女はその日、ふと昔のことを思い出した。
自信の相棒であり、かけがえの無い友人である彼との出会い。
城の地下に不思議な剣がある。
幼い頃、両親から聞かされた昔話を思い出し、エールは地下室へ探険に行った。
不思議な剣、強き力を持つというその剣を持てばアリアを守れるかもしれない。
思えばこのころの彼女は自身の姉であるアリアのことしか考えていなかった。
いや、今もあまり進歩は無いかもしれないが……
幼きエールは、地下のある一室の前で、誰かに呼ばれたような気がして止まった。
「……だれ?」
『……!……………!』
声は聞こえない。
だが、確かに“呼ばれている”
エールは部屋の扉を開く。
部屋は狭く、大人の男一人寝転がるくらいがやっとだ。
「……だれ? 僕を呼んでいるのは、誰なの??」
『……ここです、ここ!!』
「は?」
声のするほうを見ると、子供の身長くらいの細長い箱が合った。
「……?」
気になりあけてみるとそこには細身の剣が一本。
「……まさか、剣が喋るなんてことは……」
『やっと見つけてもらえた。 呼びかけていた甲斐があったぁ』
………あった。
信じがたい現実を見て、エールは固まった。
『あれ、どうしたの? エール……で、あっているよね? エール、どうしたんだい?』
「……! 剣が喋った! いや、それはこの際どうでもいいとして、どうして僕の名前を知っているんだ!お前は何者なんだ!」
一気にまくし立てられ、剣は一瞬固まった。
『い、いくつもの質問を一緒にしないでよぅ~。 俺はこういったこと苦手なんだよ……』
「……君は何者だ?」
『俺は颯生。 この国に祀られていた宝剣だった。』
祀られていた?
だった?
なぜ過去形なのかと聞くと、颯生は苦笑混じりに言った。
『戦争で俺を祀っていた社が壊れたんだ。それ以来この城で守られていたは良いのだけれど……どうも、俺の存在を感知できる人がいなくてね。』
「お前の存在?」
『ああ。 どういう仕組みかよく分からないけれど、俺を扱う人間には俺の存在を感知できる人間が必要なんだよ。 そして、俺の存在を感知した人間が俺と契約をして、俺を初めて扱うことが出来るんだ。』
少しさびしそうに颯生はそういった。
「……お前と契約をすれば、僕はお前を使えるのか?」
『まあ、ね。 契約する?』
「それより、質問が先だ。 どうして僕の名前を知っている?」
『貴方が生まれた時に一度あったから、かな。』
「……?」
昔話をするように颯生は話し始めた。
『この城では、生まれたばかりの子供に俺の存在を感知できる人間がいるかどうか調べる儀式をするみたいなんだ。詳しいことは知らないけれど。 その時に俺は貴方に会った。 適正があると判断された貴方が成人したら、俺を貴方に授けるつもりだったみたいだけれど……』
「そう、か。 なあ、颯生。」
『はい?』
「契約をしないか?」
『え……?』
このときエールは力を欲していた。
幼きにして王位継承問題で命を狙われているアリア。エールは彼女を守りたいと思っていた。
「できるか?」
『いいですけれど……結構きついですよ?』
「かまわない。」
エールの瞳は強い光をはなっていた。
『わかりました。』
彼と契約を交わした後、エールはナッシュと名を変え、男装してアリアを守る兵士となった。
それ以来、颯生はずっと彼女とともにいた。
名を変え、性別を隠した時も、ずっとずっと……
あの日から貴方と闘うことを誓いましたから。
颯生は笑って言った。
自らに芽生えた、別の感情を隠しながら……。
「僕の相棒はお前だけだ」
その言葉を誇りに思って……
宣言通り(?)番外編を書きました。
いえ、別に書いてほしいという声はなかったのですが、勝手に書いてみました。
ユダの名前、について、書いている間苦労しました。
普通に「ユダ」と打ち込むべきか「エール」と打ち込むべきか……、と考えた結果、エールにしました。
自分で考えた設定とは言えややこしいな。名前が三つもあるなんて……
名前と言えば気付かれた方もいると思いますが、この三つの名前にはちゃんと意味があります。
エールは音楽からとりました。アリアと同様です。
ちなみにエールにはもうひとつ意味があって、ヘブライ語で神、です。
ナッシュは守護という意味で、ユダは前に書いたとおり、裏切り者のユダからとりました。
颯生はもともと皐という字でした。
が、性格を変える段階でなぜか颯生に……
この名前は昔書いた小説の登場人物から使いまわしました。
言われずともがな、意味は五月です。
ここまで読んでくださった皆様本当にありがとうございました




