夜を奪われた天使
さぁ、また夜の時間が始まったのだ。
天使はその白い翼を広げ、闇に包まれた都市を滑空する。
その様は水を得た魚のように、得意げで、喜ばしそうで、慣れたものだった。
誇らしそうに大きく翼を広げ、羽ばたく。
口元には笑みが乗り、心底おかしそうに眼下を見つめている。
月明かりで逆行になり、シルエットのまま宙を一回転
と思ったら逆走、急降下、などと楽しそうに容易く空を舞う。
残滓は羽ばたきの音と宙を舞う軌跡としての羽
美しく、それでいてどこか不気味。
長く、長い夜はそうやっているうちに時間が経ち、終焉を迎える。
だが、本当の終わりではない。
本当の終わりは、次、だから。
また今夜も空舞うことを確信している。
そして夜明け前に天使は落ちる。
だが、再び夜が来ても天使が闇に舞うことなく、空に上ることない。
天使は戒めが強くなり、朝昼を奪われただけではなく、夜までも奪われてしまったから。
夜は天使には来ないのか。
月日が流れ、鎖が解き放たれる。
光を浴びた天使は凶悪で、腐り、錆びた繋ぎでは役目を果たさない。
解き放たれた天使はいつかのように宙を舞う。
自由に、楽しげに滑空し、
誇らしげに、その血に濡れた翼を広げ、
眼下の赤を見つめる。
心底おかしそうに、心底おもしろそうに、爽快な笑顔で嗤う。
最後の夜、赤く染まる景色、闇に包まれる穢れた天使